在日ネットヘイトめぐる裁判、安田菜津紀さん控訴審勝訴も「差別」認めぬ判決には不満
中野区議の「差別煽動投稿」
男性の投稿から3年、提訴からも2年以上。安田さんは「判決の積み重ねには時間がかかる。こうしている間にも救われない被害がこぼれおちていることを重く受け止めなければならない」と会見で主張。「SNSが殺傷力を持つ道具となってしまってから久しい。被害者の自助努力や我慢に負わせるのではなく、包括的差別禁止法や政府から独立した人権救済機関の設置が求められる」と話した。 この日は東京都中野区議会議員の吉田康一郎氏による安田さんへの「差別煽動投稿」に関しての記者会見も開かれた。吉田氏は22年7月24日、安倍晋三元首相の国葬について安田さんがテレビ番組で行なった発言を引用のうえ「降板させるべきだ」とツイッターに投稿。翌日には安田さんが父との思い出を書いた文章も引用し「父親は在日コリアン2世で、元韓国籍、後に日本国籍を取得」と書き込んだ。ここに3日間で92件の差別的な書き込みが入り、安田さんは23年1月、東京法務局に人権侵犯として救済を申し立てた。法務局はその時点で削除済みの5件を除く87件につき判断を示し、判断までに削除された8件を含む49件に「人権侵犯」を認めたが、認定基準は公表されていない。 この件での安田さんの代理人を務める北村聡子弁護士は認定基準開示を求め、法務局として対応できることがないかと尋ねる要望書を法務省に提出した。吉田氏は後日「国政について論評している人物の背景や経歴、経験について記述しているだけ」と投稿したが、公人による差別煽動では、杉田水脈・衆議院議員が伊藤詩織さんへの誹謗中傷投稿に繰り返し「いいね」を押した行為について最高裁で2月8日、違法性を認めた高裁判決が確定した。安田さんは「一定の影響力がある公人が引き金を引く書き込みをしたことを重く受け止めてほしい」と話した。
阿久沢悦子・生活ニュースコモンズ