卵子凍結でがん治療 将来の妊娠を可能にする最新医療 2人目出産へ…ある夫婦の選択
若い世代のがん患者の中には、抗がん剤治療の影響などで、治療後の不妊に悩む人が多くいます。子どもをあきらめず、最新医療を選択した夫婦を取材しました。 【写真を見る】卵子凍結でがん治療 将来の妊娠を可能にする最新医療 2人目出産へ…ある夫婦の選択 ■35歳の時に悪性リンパ腫を発症 大分県由布市に住む木下佑美さん(43)は夫の昌樹さん(48)と5歳の長男との3人暮らしです。 (木下佑美さん) 「最近やっとまともに、子どもがラジコン操作をできるようになってきました。ご飯の食べる量とか、遊ぶ元気がすごいです」 佑美さんは8年前の2015年、35歳の時に血液のがんと呼ばれる悪性リンパ腫を発症し、抗がん剤治療を受けることになりました。今後の治療など将来に不安を抱く中、父親の知り合いの医師から伝えられたのが、将来を見据え、妊娠するための力を維持する「妊孕性(にんようせい)温存治療」でした。 (木下佑美さん) 「聞いたときはいまいちピンと来なかったんですけど、がんの治療をすると妊娠しにくくなるっていうのは、なんとなく頭にありました。そこまで子どものことを意識していなかったけど、保存をしておかないと多分、後悔するかなっていうのはありました」 ■“凍結卵子”で妊娠・出産「こんなにかわいいんだ、産んでよかった」 抗がん治療の影響などで生殖機能が変化してしまい、治療後、不妊に悩むケースがあります。「妊孕性温存治療」は治療に入る前に患者の精子や卵子を凍結保存します。そして、がん治療の後の妊娠へ向けた生殖医療で用いる療法です。 悪性リンパ腫の発症から2年後の2017年に治療に目途が立った佑美さん。その時、主治医から「再発しやすい病気なので、子どもが欲しいなら妊娠に向けた生殖医療に取り組んだ方がいい」と伝えられました。この言葉を受け、佑美さんは夫とともに、凍結保存していた卵子で妊娠に向けた生殖医療を開始しました。そして翌年、第一子となる長男を授かりました。 (木下佑美さん) 「先生に言われるがまま進めたので、いざ妊娠した時には実感があまりなかったです。ちゃんと母親になれるか不安だったんですけど…。いざ産まれたら『こんなにかわいいんだ。産んでよかったな』っていうのは本当に感じます。子どもがいる楽しみとか幸せを全部この子が教えくれました」