「崩れなかったですね」京都外大西の仕掛けにも揺るがず…前年王者・山梨学院に備わった強さとは?
6回裏にも京都外大西は無死、一、二塁のピンチを向かえると、最初に様子を確かめ野手がセカンドランナーを牽制。初球はウェストして捕手がセカンドへ返球。走者のリードを牽制する。そして、2球目にピックオフプレーを敢行した。一、三塁手がチャージをかけて二塁走者を刺しにかかったのだ。 しかし、王者はここでも揺るがなかった。山梨学院の打者の針尾泰地は捕手と一塁手の間に絶妙なバントを決めて見せたのだ。 京都外大西が再三に渡って守備でプレッシャーをかけたのだったが、王者は揺るがなかった。結果、これが試合を分けたということである。 6回裏はこのあと2得点。7回裏には2つの長短打などで4得点を挙げて試合を決めたのだった。 1−7と大差は付いただが、京都外大西の戦い方は大いに理解ができた。 チームにはそれぞれストロングポイントがある。攻撃力を前面に出すチームもあれば、守備をベースに戦うチームもある。試合が目まぐるしく展開する中で重要となってくるのはどの部分で試合の流れを掴むかだ。 投手を中心にした守備力に自信のあった京都外大西はその守備の緻密な差をより高めて試合の主導権を握ろうとした。昨年の覇者に対して何もせずに戦うのではなく、さまざまな守備のサインを駆使して勝利を手繰り寄せようとしたわけである。 「僕らは挑戦者とわかっていたので、とにかく僕らがやってきたことはその場面になったらやるぞとは話していました。それがいくつか決まってくれればこっちのペースだった。それはできたところはありましたけど、経験が豊富でその分が上回っていた」 上羽監督がそう振り返っているように、京都外大西はできる限りの策をやったが、山梨学院が見事にいなしたのもさすがだった。 山梨学院の吉田監督はこう試合を振り返る。 「近畿大会のビデオを見るだけで、京都外大西は攻撃も守備もいろんな多彩なことをやってくるというイメージがありました。 ですので、相手はとにかく予想を超えたことをしてくる。その中で絶対バタバタしないようにっていうのは伝えてました。バントの基本はピッチャーとファーストの間に緩い打球を殺せばどんなシフトがあろうとセーフになるので、そういうのをちゃんと選手がやったのかなと思っています」 昨年秋以来の試合という中でそれも相手のプレッシャーにも屈せずに作戦を決めたのはやはり王者らしさともいうべきだろう。 吉田監督は続ける。 「落ち着きという面を先輩が残してくれた。優勝された先輩の監督から『優勝したら違った強さが出るよ』って教えていただいてたんですけど、こういうことなんだなと。力はなくても力を出せる集団になっているのかなと思います」 昨年のようなタレントばかりではないが、山梨学院が王者らしい戦いを見せた鮮やかな初戦だった。 取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
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