国内外で人気の建築家・藤本壮介さんが影響を受けた、夏目漱石の名作とは
建築やデザイン、アートが好きな人、建築や空間デザインを学びたい人や興味をもち始めた人にぜひ読んでほしいのが、建築家本人が影響を受けた本。今回は、人と環境がつながる設計をコンセプトに国内外で数多くのプロジェクトを手掛けている建築家の藤本壮介さんが影響を受けた本、夏目漱石の名作「夢十夜」をご紹介します。 【Profile】 藤本壮介/Sou Fujimoto 1971年北海道生まれ。1994年東京大学工学部建築学科卒業。2000年藤本壮介建築設計事務所設立。JIA日本建築大賞(2008)はじめ「Wall Street Journal Architecture Innovator 2014」など受賞多数。海外のプロジェクトも多数手掛ける。
全てが溶け合っていく世界観に圧倒された本
――どんなところに影響を受けましたか? 自分と他者、人間と自然、いまここと全宇宙、瞬間と永遠の境目が揺らいで全てが溶け合っていくような世界観に圧倒され、折に触れて読み返す本の1つです。 短編ですが、その映し出す世界はとても広大で、自分の小ささを肯定的に受け入れることが許される。全ての言葉が俳句のように美しく連なり、言語で思考することの可能性とポジティブな限界、そしてその限界を超えた先の世界を感じさせてくれる。建築家としての世界観の根底を教えてくれた本です。
無限の天井高を持った感覚を覚える「House N」
――影響を受けたことが実際の住宅作品にどう表現されていますか? 「House N」という住宅は、3つの入れ子によって内外の境界を曖昧にしながら自然と空に開く住宅です。この家のなかにいると、家の天井と空が溶け合い、無限の天井高を持った部屋にいるかのような感覚を覚えます。 家と空がつながる瞬間。また家に内包された木々の葉の揺らめきや光が常に変化し、硬く固定された建築という枠組みを超えて人間のための場所という豊かな世界が開けていく。小ささと大きさ、自然と人工、内と外、プライベートとパブリック、全てが溶け合い、それらの両極を同時に体験することができます。 建築や空間デザインを学びたい人、興味を持ち始めた人、建築やデザイン、アートが好きな人にぜひ読んでほしい一冊です。ぜひチェックしてみて。