NHKのゲーム教養番組「ゲームゲノム」の28分45秒は、少なくとも3ヵ月以上かけて作られる。『ニーア』を何十時間もかけて周回したり、『FF14』で晴れが来るのを待ち続けたり……総合演出兼ディレクター・平元慎一郎氏にその理念を聞いてみた
NHKのゲーム教養番組「ゲームゲノム」。2021年にスタートしたこの番組は『デス・ストランディング』を筆頭に『ダークソウル』や『バイオハザード』など数々の人気作を取り上げ、ゲーマーのみに留まらず、幅広い層からの注目を集めた。 『ゲームゲノム』画像・動画ギャラリー 2024年1月からは新たにシーズン2が開幕し、『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FF14』)や『ストリートファイター』、『ニーア オートマタ』などを特集。副音声に人気のゲーム実況YouTuber・2BRO.を招くなど新たな試みも取り入れ、引き続き高い人気を誇っている。 さて、昨今では地上波でもゲームをテーマにした番組というものは少なくない。だが、その多くはゲーム自体の魅力や面白さを紹介したり、eスポーツシーンの熱狂を取り上げるなどして、ゲームの魅力をダイレクトに伝えようという主旨のもの。これらは「ゲームゲノム」のアプローチとは大きく異なると言っていいだろう。 というのも「ゲームゲノム」はゲームを題材にしていながら、ゲームそのものだけでなく、“ゲームから受け取ったプレイヤーの感情・価値観”にフォーカスしているからだ。ゲーム以上に、プレイヤーたる人間を見つめる番組……とでも表現するべきだろうか。 そんな実は“異質”なゲーム番組である「ゲームゲノム」は、いったいどのようにして、どんな想いのもとで制作されているのか? 今回のインタビューでは「ゲームゲノム」のディレクター、総合演出を務める平元慎一郎氏を直撃。番組の理念や企画書段階から番組が完成するまでの制作手法、そしてプロデューサー業をも兼任する平元氏の「平元流」とでも呼ぶべき組織論まで、非常に幅広く興味深いトピックについてお話しいただいた。 NHKにおけるテレビ番組の作り方という「ゲームゲノム」に限られない貴重なエピソードも飛び出しているので、ぜひご一読いただければ幸いだ。 聞き手/豊田恵吾 撮影/増田雄介 ■「ゲームゲノム」のつくりかた。まずは“大テーマ(ゲームゲノム)”を定める ──本日はよろしくお願いいたします。 平元慎一郎氏(以下、平元氏): よろしくお願いします。 ──さっそく「ゲームゲノム」の企画書を拝見させていただいているわけですが、「ゲームゲノム」を制作するにあたっては、まずは各回のディレクターがこれらの資料を作る、という流れなのでしょうか。 平元氏: 実際にはここにあるものより前に、まずはひな形となる企画概要書を書いてもらっています。構成や演出、キャスティング案等をA4用紙1枚にまとめたものですね。 当然それ1枚では伝わらないので、そこからディレクターへ感動した部分や扱いたいテーマなどを直接ヒアリングします。そのうえで「いけそうだ」となったら、そのディレクターの上司であるプロデューサーに「この人と3ヵ月『ゲームゲノム』でご一緒してもいいですか?」と確認し、参画してもらうという流れです。 ──そうして書かれたのがこの企画書というわけですね。 平元氏: そうですね。いまお見せしている資料であれば、「『ニーア オートマタ』とはこんなゲームで、こんな注目ポイントがあって、主人公とストーリーはこんな感じで」と、ゲームの概要や重要なポイントがまとめられています。このとき、ディレクターにはゲームの説明と一緒に「大テーマ」を設定してもらいます。 ──大テーマ、ですか。 平元氏: ゲームのプレイを通じて受け取った自分が大切に思っている感情、育まれた価値観、今でも心に残っているもの、そういったものですね。これを僕らは“ゲームゲノム”と呼んでいるんです。『ファイナルファンタジーXIV』だったら「天地創造」、『ストリートファイター』だったら「ライバル」といった感じですね。 もちろんそれを視聴者に押し付けることはしませんが、番組を作るうえではこの大テーマ、すなわち“ゲームゲノム”を発見するところから出発しています。 ──『ニーア オートマタ』だと「罪と罰」としたわけですね。 平元氏: そうですね。ただ当初、担当ディレクターは「人間感情の尊さ」というテーマを挙げてたんです。ただ、それはちょっと大きすぎるテーマなんじゃないか、と話し合って。それは全てのゲームに言えることだろうと(笑)。 そこからより細かくキーワードを決めていき、人間、アンドロイド、機械生命体の違いや周回で変わるゲームプレイなどをピックアップしていった結果、「罪と罰」というテーマになりました。 ──番組の構成もこの段階で決まるのでしょうか? 平元氏: 用意したテーマをどのようにストーリーテリングするのかも、この段階で1枚にまとめてもらいます。「スタジオでこの部分を伝え、VTRで説明をする。それを受けてスタジオではこの話をする」という流れを1枚でわかるようにしてくれと。 さらに、大テーマを伝えるためにざっくりとどんなシーンでどんなナレーションで伝えて階段を上がっていくのかを資料にまとめてもらいます。これをNHKでは“ペタ構成(付箋に映像とナレーションを1枚ずつ書いてペタペタとボードに貼って構成していくことが由来)”と言うんですが、「ゲームゲノム」では大テーマが決まったのと同じタイミングで、番組の放送時間である28分45秒、全体の見立ても行っています。 ──テーマが決まっても、構成で難儀するという場合もあるのでしょうか? 平元氏: テーマやキーワードが決まっても、それが起承転結になっていないということはあります。なので「28分45秒のストーリーテリングをまずきちんと行う」ということを、ディレクターには徹底しましょうと伝えていますね。この企画書も議論を重ねて何度も書き直します。 ──なるほど。流れを組み立てるうえで特に苦労した回などはありますか? 平元氏: 『ムシキング』、『ラブベリ』回がいちばん多かったかな……。『ニーア オートマタ』も難しかったですね。テーマが定まっていても、キーワードが的を射ていないことがあるんですよ。各VTRの中身を説明する短いキーワードをパーンと出すのは、やはり簡単にはいかないですね。 ──企画確定後、メーカーにオファーを出されると思うのですが、それはどのようにアプローチされているのですか。 平元氏: 基本的には通常ルートで、メーカーさんのホームページの【コンタクト】のフォームから広報担当の方につないでもらい、そこから開発者の方に出演をお願いして……という流れです。番組の構成やどのシーンを映像で使うのかなど、企画書は動かせないぐらいギチギチに固めてから持っていきます。もちろん、取材をさせていただいて、より魅力的なものにブラッシュアップしていきますが、まずはそれぐらいの覚悟と見立てをもって扉をノックする、ということですね。 ──その交渉も平元さんが行っているんですか? 平元氏: 基本的には各ディレクターから送ってもらってます。企画書の中身はチェックしますけれども。 ──正攻法で、正面玄関のドアを叩いて打診されているのですね。シーズン2では、シーズン1が周知されたことでオファーがしやすくなったのではないですか? 平元氏: シーズン1よりスムーズかというと、そんなに変わってはいないと思います(笑)。ただ、おかげさまで「ゲームゲノム」という番組は認知されているみたいで……。ヨコオタロウさんも知ってくださっていましたし、吉田直樹さんにも「観てますよ」と言っていただきました。 何よりも僕が嬉しかったのは、『零』の柴田誠さんに直接おうかがいしたときです。ディレクターと企画の説明をしている際に、その企画書を見て柴田さんが「これは「ゲームゲノム」ですね」と言ってくれたんですよ(笑)。 ──あー、なるほど。番組が伝えようとしていることが『零』というタイトルの芯を捉えていると、作り手の柴田さんに伝わったわけですね。 平元氏: 柴田さんが番組としての「ゲームゲノム」を見てくださっていたことももちろん嬉しいのですが、僕らが大事にしている「ゲームゲノム」というその単語の意味合いまで感じ取っていただけたのがすごく印象的でした。 「ゲームゲノム」という僕が造った謎の単語が意味するところ、何を伝えたいのかをちゃんと感じ取っていただけたということは、すごく記憶に残っています。 ──ちなみに、企画書やオファーなどの段階でつまずいて、「ゲームゲノム」で取り上げることが叶わなかったタイトルもあるのでしょうか? 平元氏: ありますね。まず、扱う作品を決めてもテーマが決まらない場合があります。もちろんその作品に魅力がないわけじゃなくて、僕らの力不足でどうしても「ゲームゲノム」を抽出できなかった、というパターンです。 もうひとつは、正面玄関からメーカーさんやパブリッシャーさんにご相談にうかがう中で、「番組で紹介するのは今の時点ではちょっと……」とお断りとなってしまったケースです。メーカーさんとしては、IPの育成やプロダクト販売の時機が最優先だと思いますので、そうした事情でタイミングが合わず、ということはあります。 ■企画書、収録、試写にnote記事まで。とにかくディレクターの勝負どころをたくさん作る ──メディアに属する身の宿命とも言えますが、テレビ番組を作るディレクターとして、放送終了まで視聴者の反響ってわからないじゃないですか。アウトプットしてから反応がわかる怖さと言いますか。そういった点をどう乗り越えていらっしゃるのですか? 平元氏: その点で言えば、番組を作るうえで一番ディレクターがドキドキするのは、内部向けに行う試写会だと思います。 VTRの試写はだいたい3~4回行うんですけど、特に緊張するのは最初の試写のタイミングです。録ってきた素材を初めて見せる機会で、「ゲームゲノム」でやりたいことが映像として本当に実現できているかが試される。これはどの番組でも言えることですね。 ──ディレクターとしての勝負どころというわけですね。 平元氏: ただ、僕が総合演出としてすごく大事にしているのは、ディレクターの勝負どころを何回も用意することなんですよ。最初はリサーチの企画書で勝負し、それを28分45秒のストーリーテリングにした構成にまとめ、僕やプロデューサーに見せるときも勝負となるわけです。 その後もVTRを試写で流して、ちゃんとストーリーテリングになっているか、スタジオトークが盛り上がるVTRになっているかどうかも勝負。その後の収録も言わずもがな勝負です。そして最後には後編集、スタジオ収録したものをVTRと合わせて28分45秒で伝えきるという勝負が待っているわけです。 ──いや……気が抜けませんね。 平元氏: あとはnoteの記事もです。入りきらなかったこぼれ話やこだわりを、「ゲームゲノム」を担当した何某ですと名乗って、読みものとしておもしろいものを書けるか……ここも勝負ですね。 ──noteも全部平元さんがチェックされてるんですか? 平元氏: はい。編集長として全部校正してます。 ──あの内容、あの分量をですか? それはすごいですね。 平元氏: 僕は勝負どころがいっぱいある番組のほうが、ディレクターにとってはいいと思っているんですよ。テレビというのはやはりどこかで、プロデューサーや僕みたいな総合演出を名乗る人が加わって、チームの作品になっていく。 そんな中にあって、ディレクター自身が「こういうことを伝えたいんです、こう思ったんです、この演出おもしろいですよね」と勝負する瞬間が、テレビマンとしてすごく大事だと思っています。 「番組がプロデューサーに奪われる」というのは業界ではよくある話です。試写になると、けっきょくプロデューサーの番組になっちゃったとか。それがいい悪いという話は置いといて、僕は純粋にディレクターが勝負する瞬間をたくさん作りたいし、そのほうがワクワクする。なので、企画から制作に至るまで、ディレクターには勝負の場をできるだけ用意するように心がけています。 ──なるほど、「ディレクターの本当にやりたいこと」が制作過程で希釈されていってしまうと。そこで「勝負の場を多く用意する」ということですが、具体的にどのような仕事を行うのでしょうか? 平元氏: 制作の段階で言うと、まずディレクターは「シノプシス」というものを作成します。これは番組全体のざっくりとして台本みたいなもので、「スタジオ部分ではこういうことを話してもらいます」という流れを、VTR部分ではナレーションの台本を、ずらっとA4紙2枚に書いてもらいます。台本が完成したらあとはロケ、編集まで任せて、次にディレクターに会うのは試写の時ですね。もちろん各フェーズで都度悩んでいることがあったら何度でも打ち合わせをします。 ──「ゲームゲノム」ではディレクターの方がナレーションや台本も書かれているんですか? 平元氏: もちろんです。 ──それは「ゲームゲノム」以外のNHKさんの番組でも同じなのでしょうか? 平元氏: ほとんどそうですよ。ナレーション原稿は自分で書いて、試写のときは自分で読むんです。 ──そう聞くと、ディレクターさんがやることってものすごく多く思えるんですが……。 平元氏: そうですね、ものすごく多いです(笑)。民放さんはそのへんをうまく分業してチームで進めてると思いますが、NHKではディレクターが全部やります。 もうちょっと規模の小さい5分~10分ぐらいの番組だと、例えばロケ車の発注から小道具の花束の用意、AD(アシスタントディレクター)の仕事まで、すべてディレクターが行います。 ──先ほど、ディレクターに参加してもらうために「この人と3ヵ月『ゲームゲノム』でご一緒してもいいですか?」と上司にうかがう……と仰っていましたよね。つまり、放送1回分を作るのに、少なくとも3ヵ月はかかるということですか? 平元氏: 「ゲームゲノム」についてはそうです。そして、実はこの「3ヵ月」という期間はそれほど長くはありません。 まず企画自体が一発で通るわけではありませんし、大テーマを決めた後も、どうストーリーテリングするのか、という勝負があります。制作に入ってもVTRを作るために何十時間もロケをしなければいけませんし、そういったことを考えると3ヵ月という時間はあっという間です。 ──プレイして、動画を録って、編集して、という一連の作業をすべてディレクター自身が担当されているのですか。 平元氏: そうです。シノプシスが完成したら、どういうシーンが必要かがわかるじゃないですか。その段階で画角や見せ方も全部計算して、そこからロケをします。その後は編集マンと合流して、シノプシスをナレーション原稿に昇華させて、1キューずつ丁寧にナレーションを入れて……と、編集マンと議論をしながら作っていき、試写を迎えます。 ──いや、ディレクターの作業量に驚きました。逆に言えば、だからこそ番組の骨子がぶれていないわけですね。 ■ゲーム内ロケで特に大変だったのは『FF14』。ゲームなのに“天気待ち”もした執念の産物 ──「ゲームゲノム」でいうロケというのは、ゲームをプレイするということですよね。 平元氏: そうですね、キャプチャーデバイスを使ってゲーム内でロケをします。『It Takes Two』や『風ノ旅ビト』といった海外産タイトルでは国外に実写ロケに行きましたし、タイトルによっては特別なロケを行うこともあります。 ──ゲームによっては、ロケにとてつもない時間がかかるものもあるのではないでしょうか? たとえば『FF14』とか……。 平元氏: そうですね。4人パーティを集め、そこにカメラ役としてもうひとり入ってもらってロケを行いました。こういうカットをもうワンテイク、テイク2って言いながら、リモートで撮ったりしましたね。ゲームによってロケの期間は結構差があるかもしれません。 ──たとえば、60時間プレイしないと欲しいシーンにたどり着かないゲームがあったとしても、そこまでプレイされているわけですよね。 平元氏: 当然です。 ──そう即答できるのが、「ゲームゲノム」という番組、平元さんのすごさだと思います(笑)。 平元氏: たとえば『ニーア オートマタ』に関しては周回が重要な要素だったので、かなりの時間を費やしました。怖くて本人には聞いていないですけど、担当ディレクターはいったい何十時間やったのか……。 ──ほかのゲーム番組では、メーカーからもらった既存の映像を使うことが多いですよね。「ゲームゲノム」ではそのような方法は考えていないということでしょうか? 平元氏: そうですね。象徴的な部分に関しては、いわゆるPV映像を使わせていただくんですが、「こんな場面が撮りたい」とか、「こんな画角で撮りたい」というのが当然テレビマンの中にはあるわけです。なので、メーカーさんも気を遣って「ご用意しましょうか?」と言ってくださるんですが、基本的には「大丈夫です」とお答えしています。全部自分たちで撮るのが当然だと思っていますから。 たとえば、番組がPV映像だけで構成できる内容だったらいいと思うんですけど、具体的なプレイ画面が欲しいとなったら、メーカーさん側も用意するのは難しいじゃないですか。たとえ、それが売り上げや宣伝につながるとしてもです。 ──確かに、特定のプレイ画面を用意するのはかなり大変でしょうね。 平元氏: 本当にそうですよ。『FF14』のときも、雨待ち、晴れ待ちのときは大変でしたからね。あのゲーム、天候がランダムで切り替わるので……(笑)。 ──ゲームなのに天気待ちが発生すると(笑)。 平元氏: ようやくいい感じの画角やアングルがわかってきたのに、日が沈んでしまって「太陽待ちです」となり……。いま話していてロケのことを思い出してきましたけど、本当に大変でしたね(笑)。 ──執念を感じます。いい意味で常軌を逸しているというか。僕がゲーム編集の仕事を始めたころ、野球ゲームの画面写真をプレイして用意する必要があったときに、「1回表、0対0」の写真を用意する編集者がいる一方、「7回裏、5対6」の写真を用意する編集者もいて。そういうところの差って、読者・視聴者・ゲーム制作者にダイレクトに伝わりますよね。 平元氏: 「すごくゲーム好きなディレクターさんとスタッフさんが作っているんだね」ということをよく言われるんです。 ただ、テレビ屋としては、「愛があるかないか」は視聴者には関係なくて、アウトプットされたものがすべてだと思うんです。究極的に言えば、愛はなくてもいい。たとえプレイしてなくても、内容それ自体が面白ければいいわけですし、いろいろな人が満足できればそれでいいと思うんです。 ──視聴者はでき上がったものしか見れませんからね。 平元氏: でもやっぱり、愛がないと乗り越えられない場面もあったと思います(笑)。これはゲームに限ったことではなく、ヒューマンドキュメンタリーでも、珍しい動物を追いかけているときでも同じです。 それを好きかどうか、多くの人に伝えたいという気持ちがあるかが、そういうときの頑張りに力をくれるのかなと思います。「ゲームゲノム」だけで言えば、“ゲーム好き”な人間の集まりなのかもしれないですね。 ──ちなみに、シーズン2で完成までにもっとも時間がかかった回はどのタイトルなんでしょうか? 平元氏: 僕の『FF14』ですね。 ──やはりそうでしたか(笑)。 平元氏: シーズン1の放送が終わった12月には「天地創造」というテーマをすでに決めていたんです。だけど、僕は総合演出もやっているので、番組全体のプロデュースもしなきゃいけなくなってきて、物理的に時間が本当に足りなかったんですね。 結局『FF14』は収録から編集までに3ヵ月も空いてしまったことになります。そういった意味で言うと『FF14』にかけた時間がいちばん長かったですね。 ──収録と言えば、番組1回にかける収録時間はだいたいどれくらいのものなんですか? 平元氏: 1回の収録でカメラを回しているのは80分ほどです。 ──……30分番組ですよね? 平元氏: しかも半分はVTRですからね。実際には使う尺は15分くらいに凝縮しています。スタジオトークがずーっと盛り上がっているので、止めるタイミングも難しいんですよ(笑)。 ■「三浦さんとゲームの話をしたら絶対に面白い話になる」と思わせるMC・三浦大知さんのすごさ ──クリエイターやゲストの方を迎えた、実際の収録の環境はどのようなものになっているんですか? 平元氏: すごくシンプルですよ。3人がそれぞれの目線から見えるモニターがあり、VTRを見てもらい、終わったらVTRを受けてトークを撮ります。十分撮れたなという判断ができたら、次のテーマのVTR見て……という流れのくり返しです。ただ、そのトークの部分がどんどん盛り上がるので、実際には演者さんがプレイする部分の尺を削っていくことになります。 ──トークの内容を細かく台本に書くようなことはしないのでしょうか? 平元氏: 一応、ゲストの方に一度だけ取材をさせていただいています。この作品を遊んでどんな感想を持ったとか、自分の仕事や生き方に通じる何かがあったかとか、「その話はぜひしてください」とお伝えするぐらいですね。台本にも一応記載しているのですが、ゲストやクリエイターの方は台本をお持ちにならないようにしているので。 ──「台本通りに喋ってください」というわけではないと。 平元氏: 自然な流れでお願いしています。あとはMCの三浦大知さんに、回収されてない話題をカンペで出したりするぐらいですね。「これ、取材で言ってたやつだから!」と。 スタジオトークは、基本的には絶対に止めないんです。止めてしまうと、どうしてもスタジオの空気が「スタッフに止められた」という雰囲気に包まれてしまうので……。 止めることがあるとしたらいちばん最後ですね。どうしても聞きたい、取材でうかがったことをお話されてなかったときに三浦さんに振ってもらう場合はあります。 とはいえ、やはり基本的にトークは止めないです。カンペも基本的には三浦さんにしか出しません。ゲストへの取材内容は事前に三浦さんにもお伝えしているし、三浦さんもそのことに気づいてくれるので。 ──シーズン2を拝聴したときに驚いたのが、三浦さんのMC力の高さだったんですよね。 平元氏: すごいですよね? 何というか、三浦さんのMC力は言葉では表現できないです。僕もテレビ番組を10年以上作って、いろいろな芸人さんやタレントさんにMCをお願いしてお仕事をさせてもらいましたが、ちょっと「MCという概念のイメージを覆された」と感じるくらいにすごいと思います。 実は三浦さんは、別に「場を回している」わけではないんですよ。もちろんゲストさんへの質問は振っているんですけど。 ──というと? 平元氏: 三浦大知さん自身がすごいアーティストであるにもかかわらず、リスペクトの精神をすごく大事にしている方なんです。それは僕らスタッフに対してもそうだし、番組に対してもそうだし、クリエイターの皆さん、ゲストの皆さん、そしてゲームというカルチャーや、エンターテインメントというものすべてに対してリスペクトがあるんです。 そんな三浦さんが場の真ん中にいるとすごく安心するというか、「三浦さんとゲームの話をしたら絶対に面白い話になる」と、みんなが思える収録になるんです。 これまでの人生やアーティストとして表現されてきたこと、いろいろな苦労や努力もされてきた過去が、いまの三浦大知さんを形作っているんですよね。「幼少期からゲームが大好きだった」といろいろなインタビューで答えていますが、そこで「ゲームは究極のエンターテインメントで総合芸術だ」と、ことあるごとに言ってるんですね。 それが「ゲームゲノム」という形で邂逅を果たしたときに、こんなにも存在感として大きいものなんだと感じました。こういう結果で三浦さんとエンカウントできたことは我々としてもエポックメイキングなことですし、シーズン2を通してやっていただくうえで、すごく助けられました。 三浦さんだったら、どんなゲームでも、どんなゲストでも、どんなクリエイターさんが来ても、そして僕らがどんな演出をして、どんなに重いテーマやネタバレに踏み込んでも絶対大丈夫だという安心感がある。「僕らの想像を上回ってください」と言うと、「えー(笑)」と言いながらやっちゃうというか(笑)。本当にすごい方と一緒にお仕事をさせてもらっているなと感じますね。 ■必要だと思ったシーンはネタバレを気にせず、必ず構成に入れ込む ──いま、ちょうどネタバレという言葉が出ましたが、ゲームを扱ううえでネタバレは避けては通れないと思っていて。どちらかというと「ゲームゲノム」ではネタバレを意識せず自由に制作されていると感じたのですが、そのあたりの線引きはどう考えていらっしゃるのですか? 平元氏: これに関してはシーズン1から基本的にスタンスはまったく変えていません。必要だと思ったシーンに関して、テーマ、メッセージ、作品の魅力、そこから紐解ける「ゲームゲノム」のために必要だと思ったシーンは、必ず構成に入れ込む前提で考えています。 ──伝えたいことの前ではネタバレは気にしない、と。 平元氏: 「ネタバレがすぎるから、このシーンはやめよう」という議論は番組側で一切しません。ただ、メーカーさんやクリエイターさんの「ここはプレイ体験として残しておいてほしい」というものについては、当然それを尊重したいとは思っています。 また、ネタバレの塩梅や表現の仕方は丁寧に相談させてもらっています。たとえば『ニーア オートマタ』に関しては、「「ネタバレにご注意ください」という注意書きを番組の冒頭で入れていただければかまわない」ということを丁寧に協議しました。 ──ネタバレは難しいですよね。どこまでがネタバレに該当するのかの線引きもそうですし、ネタバレ込みだからこそ伝わるものがあるわけですし。 平元氏: 僕は番組上で「ネタバレがあります」と注意喚起するのは野暮だと思っているんですね。番組制作でも、ゲームという文化を語るうえでテレビやメディアがどこまで踏み込んで伝えるのかについて、すごく考えさせられます。 これがたとえば宮崎駿監督のドキュメンタリーだった場合、絵コンテが写っていても、誰も何も言わないじゃないですか。それは「ジブリ作品を皆が見てるから」というのももちろんありますが、それよりも、ネタバレを気にする以上に「宮崎駿さんの思想信条や哲学を知りたい」と思う気持ちが先にあるからだと思うんです。 ──ネタバレを気にする以上の価値を視聴者は見出していると。 平元氏: きっと、作品を見てからそのキモを知りたいという人は、録画して後で見られるように取っておくと思うんですよ。これがゲームの文脈においてはまだ通用してないんだ、というのは改めて思い知らされますね。つまり、宮崎駿さんの番組とは違って「「ゲームゲノム」が『ニーア オートマタ』の展開をネタバレしてるらしいぞ」という話になる。だとしたら「録画して、プレイしてから見る」でいいんじゃないかなと思いますし、それをわざわざアナウンスする必要もないと思ってます。 いちテレビ屋のスタンスとして、ネタバレを過度に忌避することこそ野暮なことなんじゃないかなと。だって、有名な映画作品のあらすじをテレビで紹介しても誰も「ネタバレだ!」とは言わないでしょう。僕を含め、ゲームというエンターテインメントを紹介するときの踏み込みかたはみんなまだ探っている状態なんだと思いますね。 ──SNSの発達で、ネタバレに対するメーカーの風当たりはだいぶ柔らかくなっているのは感じます。むしろメーカーより、ユーザーのほうがネタバレを気にする時代になってきたのかなと。 平元氏: リテラシーが問われる時代になったな、と実感します。スポーツの結果なんかはSNSですぐに入ってきちゃったりするじゃないですか。だけどそれを楽しみにしている人にとってはすごくセンシティブな情報であり、そういう人はスマホを見ないようにする必要があるわけで……。 そういう時代のなかで、僕らはちょっと踏み込んでいるし、そういう自覚がもちろんあります。それをどう評価するかは視聴者の皆さんの判断だと思うので、どんな意見が集まったとしても、いったん真摯に受け止めたいなとは思います。 ■こだわり抜いた『ニーア オートマタ』回のシューティング風エンドロール。でもNHKロゴは壊せない ──ところで、『ニーア オートマタ』回ではエンディングにすごく力を入れていましたよね。ゲームのラストをオマージュした演出になっていて。 平元氏: スタッフロールを撃っていくというものですね。ただ、NHKのロゴはバリアで守られていて壊せないんですよね(笑)。 ──遊び心があるなと思いました。エンドロールにひと工夫を加えるのは、視聴者からすると「作り手が楽しんでいるな」と感じられる部分ですので、番組制作者のゲームへの愛が伝わるというか……。 平元氏: シーズン1での経験を踏まえて、「シーズン2でもっとできることがあるんじゃないか」というのを、各ディレクターや僕で一生懸命考えたんですね。 「ゲームゲノム」だけではなくて、テレビに関わるすべての人が同じように考えていると思うのですが、番組というものは1秒も無駄にできないんですよ。28分45秒で伝えたいことがたくさんあり、もちろんエンドロールもその中のひとつであるわけです。 ──シーズン2のエンドロールでは、どのようなことを意識されたのですか? 平元氏: ふたつあります。まず、責任者の名前を出すこと。この番組で僕はそれをすごく大事にしています。ちゃんと視認できる形で誰が責任者かをしっかり明示しました。 そして、これは個人的なテレビ屋としてのスタンスですが、絶対に単純な「ロール」にしたくないんですよ。縦横にスクロールするだけのロールってよくあるじゃないですか。あれって「読ませる気がないな」と思っちゃうんですよね。 ──確かに、あまりテレビ番組のエンドロールを意識して観ることはないですね。どれも「ふつう」と言いますか。 平元氏: テレビのエンドロールは映画のエンドロールとはニュアンスが異なります。エンドロールがあると視聴者はそれに目がいくと思うのですが、背景の16:9の絵にもちゃんと意味があるし、最後の1秒まで僕は見てほしい。 エンドロールでは最後に「制作・著作 NHK」と絶対に載せなければいけないので、責任者をしっかり表示することも含めればエンドロールのカットが20秒は必要なんです。そうなったときに、「その20秒をどうやって見てもらうか」と一生懸命考えなきゃいけないんですよ。 ──最後の1秒にまでこだわりたいというわけですね。『FF14』の回もエンディングが凝っていたのが印象的でした。 平元氏: 『FF14』回のエンディングでは、何パターンかのアイデアを考えました。冒険に集まったスタッフ4人パーティが、クリスタルタワーに向かって行く。その画をパーンアップしてクリスタルタワーがキラン、みたいなカットを、すごく時間をかけて撮ったんですよ。 だけど、編集の段階で「なんか違うな」となりまして。『FF14』回のテーマからしても、吉田直樹さんが作ったのは、どちらかと言うともっと公園的なものだったんじゃないかと。じゃあ、最後は「公園=エーテライト(冒険の拠点になるワープ地点のようなもの)に集まって思い思いに遊んでいるプレイヤーの皆さんをたくさん見せて終わるのが一番だ」となり、あの形になりました。やっぱり、凝れる回はできるだけ凝りたいですね。 ──そういったところも他の番組と異なるところだなと。エンディングは、言ってしまえばそこまで凝らなくてもいいものじゃないですか。 平元氏: だから、その画はプロデューサーにも見せなかったんですよね。編集マンと僕で、「4人パーティだけの話じゃなくて、世界の豊かさの話をいままでしてきたんだから、そのまま最後の1秒まで見せようよ」と言って。 ──ちなみに『ニーア オートマタ』回ではNHKのロゴを撃つ演出があったわけですが、あれはNHKという組織としてはOKだったんでしょうか? 壊すのは絶対にNGだと思いますが……。 平元氏: おっしゃるとおりで、放送表示委員会の規定の中に「NHKのロゴには何も被せてはいけない」というルールがちゃんとあります(笑)。だから今回はバリアで守らせてもらいました。でも、あの回ではなんとしても『ニーア オートマタ』制作陣が持つ精神を自分たちも発揮したかったんですよね。 「自分たちの名前やスクウェア・エニックスという社名をマトにして壊す」という体験をプレイヤーに選んでもらうことで、「罪と罰」というテーマをゲームプレイそのものに落とし込んでいる。そういう気概を我々も持たないわけにはいかないな、と思ったんです。 ──まさに作品へのリスペクトですよね。 平元氏: じゃあ、どこを撃とうとなったときに、ナレーターの悠木碧さんやテーマ曲を手掛けた下村陽子さんの名前は撃てません。技術陣も足を向けて寝られないので、もちろんダメ。だったらもう制作の3枚目からは撃とうと。 そして、NHKロゴは……壊せないんだけど、死ぬほど撃ってやろうと。 ──(笑)。 平元氏: NHKロゴがバリアで守られているのは皮肉さというか、これから僕らが背負っていく「罪と罰」というものが表現できているんじゃないかと(笑)。 遊び心ももちろんあります。だけどそれ以上に、「罪と罰」というテーマや、僕らも撃たれてしかるべき「ネタバレ」の話題も含め、『ニーア オートマタ』というゲームを28分45秒という形で最後の1秒までちゃんと表現したかった。その結果がああいう演出になったんです。 ──オープニングやエンディングに遊び心を入れているゲームも最近は増えてきましたが、そういうことをやっているゲームって、やっぱりおもしろいんですよね。人を楽しませようというエンターテインメントの本質が作り手側にあるのがわかるというか。その精神を「ゲームゲノム」に感じた部分でした。 平元氏: まさに「遊び心」かも知れないですね。ちょうどいま思い出したんですが、『塊魂』でミッションに失敗したときに、ビリヤード台の上に放り込まれて親である王様からひたすら突かれるパートがありましたよね。 ボタンを押せば終わる演出なんですけど、「ミッションをクリアできなかったことをビリヤードの球にされるお仕置きで再現ってどういう発想?」と、高橋慶太さん【※】の遊び心にはいつも驚かされます。 ──いい意味で狂っていますよね(笑)。 平元氏: すごい発想だなと思います。 ■「2BRO.」による副音声はテレビ番組としてもちょっとした“革命”かもしれない ──番組の外側部分についてもお聞きできればと思います。シーズン2を始められて、反響や手応えはどう感じていますか? 平元氏: そうですね。SNSの反響を見ると、良いスタートを切れたと思います。一方で、赤裸々に言うと視聴率はガツンと数字を叩き出せてないのが事実です。平日の23時台にテレビの前に30分座ってもらってNHK総合というチャンネルをつけてもらうことの大変さを改めて感じているというか。もちろん内容自体も数字の良しあしという結果に結びついていることも間違いないので、手応えはありつつももっとたくさんの人に見てもらうためにはどうしたらいいかというテレビ論・編成論について今ものすごく考えているところです。ただ、やはり皆さん、遊んだことのあるタイトルの回を見にきてくださっているらしく、タイトルごとに視聴者層はバラバラで……そこは毎回ちょっとドキドキしながら見ていますね。ただ、圧倒的に好調なのは「NHKプラス」での見逃し視聴の数字ですね。シーズン1では苦戦したのですが、シーズン2では目標を大きく上回っています。 ──好調な部分の要因はなんだと分析されていますか? 平元氏: シーズン2ということもあって、「ゲームゲノム」という単語や番組が浸透してきたというのがまずありますね。あとシーズン2では、副音声で「2BRO.」【※】の皆さんにフル実況をしていただいていまして。NHKプラスでも副音声のチャンネルを選べるようになっています。この「副音声で実況してもらう」のは僕としても初の試みです。 これによって、1周目は大きなテレビで見ていただき、2周目は弟者さん、兄者さん、おついちさんの実況を楽しんでもらうという構図ができました。「NHKプラス」の数字につながった理由としてはこれが大きいかなと。 ──なるほど。テレビ番組を2回楽しめるというのは確かに珍しいですよね。 平元氏: 他局さんがどうなのかは全部調べ切れてないんですが、ちょっと大げさに言うと、この副音声システムはけっこうな革命だと思っています。 これまでの副音声と言えば、たとえば朝ドラにおける「誰々が入ってきた」「悲しそうにたたずむ誰々」みたいな解説のイメージがあると思います。それ以外のところでは、紅白歌合戦の副音声で芸人さんやタレントさんがその感想を喋るというものですね。 こうした従来の副音声も、「一緒に見ている感」という部分では我々のやっていることと一緒なんですけど、せっかくNHKプラスで1週間の見逃し視聴ができるのであれば、もう一度楽しめるような副音声にしたいなと。そう考えて「この番組をいろいろな角度から楽しんでもらえる方法は」と考えついたのが2BRO.さんの実況でした。 ──映画のコメンタリー的な楽しみ方ですね。 平元氏: もっと言うと、2BRO.さんの副音声実況を聞いたうえで、もう一度主音声を聴くと「弟者さんが言っていたのはこういうことだったんだ」という発見があったりと、いろいろな角度から何回でも番組を楽しんでいただける点は、「ゲームゲノム」という番組の価値をさらに高めてくれているなと感じます。僕らとしても、本当に副音声実況というものを取り入れて満足しています。 あまり声を大にしては言えませんが、副音声の存在でNHKプラスでの見逃し視聴に誘導する、という戦略を取っている番組はそんなに多くはないんですよ。紅白ではすでにやっていることではあるんですけど。 ──「ゲーム実況者」をNHKが取り入れるというのは、「時代」を感じました。2BRO.さんという人選も「うまいな」と感じた部分だったのですが、数多くいらっしゃるゲーム実況者の中から2BRO.さんをチョイスされたのは、明確な理由があったのでしょうか。 平元氏: これにはいくつか理由がありまして。まず、個人的に僕が2BRO.さんの大ファンだったというのが前提としてあります。 ──(笑)。 平元氏: もうひとつは実況のスタイルです。ひとくちにゲーム実況といっても、とても多くのスタイルがあるじゃないですか。寡黙にやる方もいれば、視聴者とトークを楽しみながら遊ぶ方もいますし、ちょっと過激な見せ方をする方もいたりと千差万別です。 そんな中で、2BRO.のお三方のゲーム実況スタイルというのが、本当にやさしくて……。 「ゲームのことが本当に好きなんだろうな」ということが伝わりますし、リスナーと「共有する」ということを実践し続けてきた方たちだなと。それが登録者数だったり、再生数という実績にもつながっていると思います。 ──確かに、「ゲームゲノム」の番組コンセプト的にもピッタリだと思います。 平元氏: ここ数年で、テレビ番組というものの視聴スタイルは本当に変わってきていると思うんです。スマホやPCで見逃した番組も見られるようになったので、テレビの前にいる必要もだんだんとなくなってきていますよね。どこで見てもいいし、いつ見てもいい。 そういった視聴スタイルの多様化の中でも残されているテレビの強みというのは、やはり「その時間、その放送波でこの番組をやっているということ」なのかなと。自分はひとりで見ているんだけど、同じ時間に日本中にこれを見てる人がいるという、言葉にならない無意識のつながりだと思うんです。 家族や友人と同じテレビ画面を見る時代ではなくなった今、別の方法でもっとつながっている感触……「同じ番組をいま見ている」という感覚を無意識に共有できる方法がないかなと思いました。そこで選んだのが、2BRO.さんによる副音声実況というわけです。 ──なるほど。 平元氏: 彼らが視聴者の代表というか、「視聴者の横に座って一緒に見ている3人」として存在してくださっているようなイメージです。 だからやっぱり3人全員が必要なんです。それぞれキャラクターが違って、ゲームの知識や好きなジャンルも違って。なんとなくの役割分担がある3人だからこそ、視聴者さんも人によって誰に感情移入するかが変わってくると思います。 お三方の誰かに感情移入することで、他のふたりと一緒に同じ番組を見ているという感覚が生まれるんじゃないかな、と思っているんですね。だからこそ「グループである」こと自体もすごく重要な点でした。 ■「教養番組」という枠だからこそ、“人間”という壮大な切り口からゲームの魅力を伝えられる ──「ゲームゲノム」は「教養番組」であるという点において、他のゲームを扱ったテレビ番組とは根本的に番組の趣旨が異なりますよね。あえておうかがいしますが、「教養番組」という枠組みが、時として足かせになることもあるのではないでしょうか? 平元氏: 実は、教養番組という枠にはめたからこそ、「ゲームの魅力や奥深さを伝えられている部分があるな」というのは、シーズン2の制作が終わってもなお強く思っているところなんです。 僕らテレビ屋の仕事って、情報を持ってきて横に流すだけじゃなくて、そこに角度をつけたりストーリーテリングをすることだと思っているんです。そして「これはゲーム教養番組です」と言い切るのは、仕事をするうえでひとつ大きな柱になる大切なことだなと。 足枷という視点で捉えると、確かにそう感じられる部分もあると思います。一方で「教養番組」という決まった角度づけがあるからこそ、腹をくくれる部分もあるなと思っています。 たとえば、ゲームのワクワクドキドキする部分、キャッチーな部分を説明するだけでは、そもそもこの企画は通っていないし、視聴者の皆さんから「NHKがゲームの宣伝みたいな番組作っていいの?」と言われるのは想像に難くありません。僕もそういう番組にはしたくないですしね。それをやるならメーカーさんのプロモーションのほうが絶対にクオリティーが高いですから。 ──ゲームの面白さはみんな認識しているし、あえてテレビで、しかもNHKでそれをやる必要はないというお話ですね。 平元氏: 僕らはディレクターであり、同時にプレイヤーでもあります。テレビ屋であるというスタンスの中で、最初に「ゲームと人間の話をします」と宣言する……これが重要なんです。 番組の中でゲーム中のグラフィックがすごい、音楽がすごいという話はメインにしません。あくまで「人間」という壮大な切り口から出発すること、教養番組であるということを、作るうえで大事にしています。こと「ゲームゲノム」においては、このアプローチはうまくいっているんじゃないかという感覚があります。 ──「ゲームを扱っているのにゲーム番組ではない」というのが、まさに「ゲームゲノム」の唯一無二なところだと改めて思います。 平元氏: 尺に関しても同様のことが言えます。もしこれが45分の番組だったら、45分の番組としてたぶん同じクオリティを目指しますし、60分なら60分で同じことをやろうとするでしょう。だけど尺に際限がないと、自由がいちばん不自由なように、それこそ腹が決められなくなってしまうと思うんです。 各ディレクターには伝えたいことが本当にたくさんあって、その中から尺に合わせて取捨選択するうえでは大いに葛藤していると思います。しかし、この「28分45秒」というテレビの枠の中でやっているからこそ、それぞれが覚悟を持って臨めている部分はあるのかなと。 ──覚悟という点では、大テーマ(ゲノム)を決めるのはすごく怖いことだと思うんですね。「本当にこれでいいのかな? 合っているのかな?」という疑念が常に消えないというか……。 平元氏: いま質問されて、意外と大テーマは視聴者に届いていないのでは……と思い始めちゃいました(笑)。 ──(笑)。それはどういう理由からでしょうか? 平元氏: 番組を見ていく中で、最初に「天地創造」だの「ライバル」だの「人生という旅」だのと言われても、読後感としてそれが残っているのかは微妙なところですよね。 たとえば『FF14』だったら、「世界が豊かになる、そして自分はその世界の一員である」という自覚の話、「どうすれば人々が互いに歩み寄れる豊かな世界が生まれるんだろう」という問いの話、このふたつの話ができたらと考えてテーマを設定しました。僕は『FF14』をそういうゲームだと思ったので。 ──聞いている限り、マッチしたテーマだと思いますが……。 平元氏: でもそこが……あまり自分で言いたくないんですけど、「天地創造」というワードはちょっと固くしすぎたかもしれない(笑)。 ──(笑)。 平元氏: たしかに、テーマを決めることへの難しさと怖さは常に付きまといます。それでも、「ゲームゲノム」という番組、そしてその総合演出である僕がちゃんと名前を出して、「僕らが思っているこの作品の“ゲームゲノム”はこれです」と打ち出していかなければいけないところではあると考えていますね。 さきほど話したことと同様、やはり覚悟の問題なのかなと思います。時間をかけてテーマを決めているからこそ、その怖さや不安も背負ったうえで打ち出している……というところですかね。 ■重視したいのは「ゲーム体験を通じてどう思ったか」という“エモさの部分” ────さきほど「教養番組だからこそ」というお話がありましたが、もっとアカデミックな内容にしようという考えはなかったのでしょうか? たとえば、ビデオゲームの研究者や専門家、ジャーナリストを呼んで深い議論をしてみようとか。 平元氏: そういったアプローチも可能ですが、有識者然とした人が何度も何度も出てくると、すごく引いた目線になってしまう恐れがあると思ったんです。ゲームって遊ぶものですし、「遊んだプレイ体験から何を思ったか」というのが重要じゃないですか。僕らは制作上、分析を行っていますが、視聴者の方はわざわざゲームを分析する必要もないわけですから。 そのうえで、視聴者と同じ立ち位置を担っているのがゲストの皆さんだと僕は思っているんです。だからこそ番組では、ゲストの皆さんの職業や過去の経験をもとに、独自の視座で語っていただくことを考えたキャスティングでやってきました。 ──知識ではなく、その人の人生経験的な部分を考慮されているわけですね。 平元氏: はい。ですのでゲームに超詳しい人じゃないとダメかというと、全然そんなことはありません。ゲームから得た体験を、自らの人生経験というフィルターを通じて言葉として出力していただく……そういった様子が見られるかどうかを大事にしています。 もし、ゲストに求める知識量を有識者レベルまで引き上げてしまうと、トークの面白みがなくなってしまうのかなと。「答えが用意されたものを話して終わってしまうんじゃないか」という危惧があり、そこの線引きは大切にしてきました。 ──「視聴者目線」をすごく大事にされているということですね。テーマ決めの話でも仰っていましたが、「それ知ってる、だからこの結論でしょ?」という話ではなく、その過程を抽出して伝えたいという思いが感じられます。ゲームの面白さ以上に、それを面白いと感じる人のほうに焦点が当たっているというか。 平元氏: そうです、そうです。何万本売れたとか、このシステムが画期的だとか、そういった情報は誰でもすぐ拾えてしまう時代ですよね。それはそれとしてお伝えはするんですけど、重視したいのは「それを体験してどう思ったか?」という感情の部分……いうなれば、“エモさの部分”です。 ゲストの方が、どれだけ自分のゲーム体験をポエミーに表現されるかという、その人にしか出せない部分を大事にしていきたい。それこそが視聴者にも響くことだと信じていますので。 もちろん、視聴者さんが「どう観るか」ということについてはずっと考えています。本当に最初から最後まで、「視聴者がどう思うか」を考えていますね。変な話、メーカーさんやクリエイターの方がこの番組を見てどう思うか……というのは、ほとんど考えていないかもしれない(笑)。 ──ある種、ゲームメディアの考えかたと真逆のものかもしれません。ゲームメディアは記事でゲームを知ってもらって「この楽しさを味わってほしい」というのが根本にあります。だけど、「ゲームゲノム」ではゲームの客観的な価値を伝えることは重視していないわけですよね。 平元氏: そうですね。僕は「ゲームゲノム」じゃなくても「視聴者がどう思ったかが、すべてである」という精神を忘れたくなくて。 新人で若いころ、「取材先が喜んでくれたからよかったよね」と、ふと思ったことがあったんです。でも、これって言い訳で、テレビマンとして絶対に言っちゃいけないことで、視聴者が面白いと思ってくれたかどうかがいちばん重要なんです。番組の中身やプロデュースの在り方まで含めて、視聴者ファーストを徹底しなくてはいけないと考えています。 ──その考えに至る何かしらのきっかけがあったのでしょうか? 平元氏: うーん、どうなんでしょう……。これまで視聴者の反応に触れてきた中で「視聴者にとって面白い、面白くないというのがすべてなんだ」という実感があるんですよね。 正直なところ、「おもしろくない形で番組が完成しちゃったな」と思ったときに、ポロッと出る言い訳のひと言が「でも取材先は喜んでくれた」というものなんですよ。思い返せばよく言っていたな……と。 でも今は、そんな慰めは捨て去って覚悟を持たなければと思っています。「ゲームゲノム」においては総合演出として「視聴者の反応がすべてだよ」と、先輩であろうが、外部のディレクターさんであろうが、後輩であろうが、必ずどのフェーズでも言うようにしていますね。 「視聴者がどう受け取るか? 本当に伝わるのか?」という。これはクリエイターの皆さんや広報の皆さん、ゲストの皆さんにも口酸っぱく言い続けています。 ──チーム全体で覚悟を持っているわけですね。 平元氏: はい。たとえば『風ノ旅ビト』回の収録では、僕はゲストの清塚さん【※】に「このゲームが主役だとしたら、清塚さんは脇役です」とはっきり言いました。そうしたら清塚さんはすごく目をキラキラさせながら「その通りだね、この番組はそうあるべきですよ」と言ってくださったんですよ。 こういうありがたい経験もあり、制作にあたっての僕の考え方はゲストの皆さん、クリエイターの皆さんにきっと伝わっているんじゃないかなと思っています。 ■制作チームの合言葉は「とにかく全部マスターピースにする」 ──インタビューの趣旨とは少し離れますが、平元さんご自身のこともうかがえればと思います。シーズン1でのインタビューから思っていたことなんですけども、平元さんはディレクターとしてはもちろん、プロデューサーとしての素養も有しているなと。服装もあえて奇抜な服を着ていると言ってたじゃないですか。 平元氏: はい、わざとやってますね(笑)。 ──そういう露出の仕方も含めて、プロデューサー気質も持ち合わせていると感じたんですね。 平元氏: シーズン1を経て、「総合演出」という立ち位置が自分の中でよりはっきりしたような気がします。シーズン2ではそれを貫こうと考えていて。ちなみに、NHKに「総合演出」という肩書は元来存在しません。業務上のスタッフリストにはCP(チーフプロデューサー)、PD(プログラムディレクター)、FD(フロアディレクター)などといった役割がありますが、総合演出という肩書は一般的に使われないんです。これは僕が勝手に名乗っています(笑)。 ──(笑)。 平元氏: 一応プロデューサー陣には「そう名乗っていい」という許可をもらっているのですが、これが実に面白くて。この肩書によって、ディレクターとプロデューサーを兼任するという動きができるんですよ。僕にプロデューサーの素養があるかどうか、自分ではわからないですが、最近では「プロデュースする」という行為がとてもおもしろいと感じているんです。 いままではどちらかというとプロデュースしてもらう側で、いろいろなプロデューサーと仕事をやってきました。その時はたいていのプロデューサーに対して「ムカつくなぁ……」と思っていましたし(笑)。プロデュースの正解なんて何もわからなかったんです。 でも、いざプロデュースをやってみると、これが本当に面白いんですよ。自分がディレクターとして優れてるとはまったく思っていませんが、プロデュースの面白さもいいなと感じていますね。 ──繰り返しますが、それはプロデューサーとして素養があるからではないでしょうか(笑)。 平元氏: (笑)。僕としては、ブランディングとかマーケティングの要素を多く含んだ仕事をする人間が必要だなと思っていたんです。とくに毎週放送するようなレギュラー番組では欠かせないなと。 もちろんそれがプロデューサーの仕事のすべてではありませんが、そういった仕事を僕はいま専属でやらせてもらっていて、一生懸命やっているつもりです。この「一生懸命できる」役割を与えてもらっているというのはすごく大きなことじゃないかなと。 ──平元さんとしては、それは「ゲームゲノム」とは別に、何か特別な意味があることなのでしょうか。テレビ業界でこういう動きをされる方はあまりいないですし、あえてこれだけ露出されているのは、平元さん自身のキャリアで実現したい何かがあるとか? 平元氏: ありませんよ(笑)。まったくない。確かに承認欲求とか、自己尊厳みたいな感情がないと言えば嘘になります。番組を作り、それが多くの人にウケて……というのは理想のシナリオですし、それを目指すべきだとは思います。 ただ、「『番組を作りたい』という気持ちにさせてくれるのって何だろう?」と考えたとき、それはやっぱりゲームだったり、ゲームクリエイターさんだったり、ゲームメーカーさんなんですよね。 僕はいま、そのゲームやゲームクリエイターさんの魅力を伝えたいと思って、一生懸命メディアにこうやってお話をさせてもらったりしているわけです。「ゲームゲノム」を多くの人に知ってほしい、それ以上でもそれ以下でもないですね。 ──なるほど。今はあくまで「ゲームゲノム」の宣伝がすべてなんですね。 平元氏: そうでないと、テレビ番組は多くの人のもとへ届かないと思うんです。NHKという看板だけでは通用しなくなった今、どうやって自分の番組をひとりでも多くの人へ届けるかというのは、我々テレビ局の人間がひとりひとり、一生懸命に考えなくてはいけない問題なんです。 ──公式のnoteもまさにそうした活動のひとつ、ということなんですね。 平元氏: そうですね。極端な話をすると、note記事がなくても、番組が面白ければ別にいいじゃないですか。それでも書くんです(笑)。ディレクター側は「何であれを書かされているんだろう……」と思っているかもしれないですが(笑)。 本音のところは聞いたことがないからわからないですけど、僕のやり口としては自分自身が初回を担当して、トップバッターで「noteにこう書きました」と全員に共有したんですね。文字数制限10000字で、僕は9985文字書きましたって。 ──それはプレッシャーをかけ過ぎです(笑)。 平元氏: だけど、どのディレクターも28分45秒の尺に収まりきらなかったものを持っているわけなんですよ。だから書き出すと彼らも止まらなくて、完成した原稿を見るとすごく面白いんですよね。 テレビディレクターは文章を書くことが少なく、テキストだけでストーリーテリングして完結させるという経験はあまりないし、彼らにとって新鮮な体験でもあると思っています。だから大変ではあるだろうけど、毎回すごく楽しい……んじゃないかな? 本音を聞くのは怖いところですが(笑)。 ──(笑)。おそらく、平元さんはディレクターの皆さんから信頼を勝ち得ているのだと思いますよ。そうじゃなければ、あの文量、あの濃さのテキストは書けないと思います。 平元氏: 僕がワーワー言っているのにみんなが気持ちよく乗っていただけているなら、それはすごく嬉しいことですし、そうありたいなと思っています。チームを支えるうえで僕が意識しているのは、まずディレクターの伝えたいメッセージをものすごく尊重すること。あと、絶対に怒らないことです。 これはものすごく計算してやってます。ギリギリのスケジュールになると、人間って怒っちゃうじゃないですか。だけどそこで冷静に議論すれば、より生産的にチームが動ける場合も多いはずです。もともとあまり怒る性格ではないんですけど、ここはプロデュース面ですごく気を付けていますね。 𠮟咤激励によって良い番組が作られることがあることも知っていますが、その前段階で「もっと面白くなるんじゃない?」とか「もっと頑張ればもっといいものが待っているよね」とフラットに言い合えるチームのほうが、僕は番組がおもしろくなると考えています。 ──そういう平元さんが総合演出だからこそ、「ゲームゲノム」は多くの方の支持を集めているのだと思います。最後に、残りの放送を控えていますが、視聴者の方に期待してほしい部分や見どころをお伝えください。 平元氏: 制作チーム内の合言葉でよく言っているのが、「とにかく全部マスターピースにする」というものです。唯一無二、傑作の28分45秒にするぞとみんなで約束して、不安になったときや弱気になったときは、みんなでその合言葉を確認するんです。 同じ作品をふたたび「ゲームゲノム」で扱うことは、何か相当な角度を変えない限りは二度とできないでしょう。すなわち、他のディレクターがやりたかったかもしれない作品をやってしまうことへの責任をきっちりと果たし、クリエイターの皆さんやゲームファンの方、そして視聴者の皆さんに少しでも良い形で届けるためには、「絶対にマスターピースにするんだ」というつもりで作らなければなりません。 だから「どの回もオール神回です」と僕は自信を持って言えます。残りの放送回も、本当に発見と驚きと共感が詰まった、感動できるものに仕上がっていると思います。 『零』、『MOTHER2』がこれから予定されていますが、これらはどれも「ゲーム」という枠組みを越えて、非常に面白く深いテーマを抱えた作品です。『零』では怖さというものに正面から向き合い、最終回の『MOTHER2』では糸井重里さんとバカリズムさんをゲストにお呼びし、伝説的なRPGについて語り合います。 ──ちなみに、『MOTHER2』を選んだ理由はどういったものなんでしょうか? 平元氏: それはもうディレクターが、「『MOTHER2』なんです」と。 ──『MOTHER』ではなく『MOTHER』シリーズでもなく、『MOTHER2』と仰ったわけですか。 平元氏: 「『MOTHER2』なんです」と言われました。『MOTHER』シリーズは冒険とか、愛とか、家族とかいろいろなテーマを内包しているんですけど、そういったテーマを語るうえでは「『MOTHER2』がいちばん視聴者に伝わるんだ」と。 僕も具体的な説明を聞いて納得したので、「じゃあ『MOTHER2』1本でいこう」という話をしました。『MOTHER』というシリーズは、やはり糸井さんの人生観がすごくゲームの中に反映されているゲームだと思います。そうした人生観をご本人から聞ける貴重な機会であると同時に、さらに芸人であり脚本も執筆されているバカリズムさんも加わっていただいて。 ゲストのおふたりは、その生き方自体がすごく『MOTHER』的なんです。そんなおふたりに『MOTHER2』からもらったもの、学んだものを語っていただくという。僕自身も、この回はすごくジンワリきた回だったので……ぜひご覧になっていただければと思います(了)。 熱い情熱とともに「ゲームゲノム」に携わる平元氏は、テレビマンであると同時に生粋のゲーマーでもある。ほとんど狂気的なまでの番組への献身、とにかく視聴者を第一に考えるその姿勢は、彼がそれほどまでにゲームというカルチャーを愛していることの裏返しと言えるだろう。 「ゲームゲノム」が多くの“ゲーム番組”と異なる魅力を手にしている大きな理由が、平元氏の理念に基づいているのは間違いない。客観的な価値基準を情報として扱うだけではなく、常にゲームを遊ぶプレイヤーの心の動きにフォーカスしているからこそ、「ゲームゲノム」という番組ならではの深みが醸し出されているのではないだろうか。 「ゲームゲノム」シーズン2の放送は残り2本。ホラーゲーム『零』と伝説的RPGの『MOTHER2』というが取り扱われる。これらのタイトルがゲストにどんな感情を与えたのか、そして彼らの言葉はわれわれ視聴者にどんな感情を与えてくれるのか。引き続き、放送を楽しみに待ちたい。
電ファミニコゲーマー:豊田恵吾
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