印象派(10月19日)
意外な由来を秘めた名称がある。自然の光や色、空気を感じ取ったままにキャンバスに表す「印象派」。元々、作風をからかう意味があったとか▼ちょうど150年前。フランス・パリで斬新な表現を志したグループが初の展覧会を開いた。それまでの西洋絵画は、神話や宗教といった重い題材が多かった。鑑賞した人々に戸惑いが広がったという。評論家は「印象しかない」と批判した。メンバーは「自分たちの新しさを表す」と歓迎し、グループ名として受け入れたとされる。今では日本をはじめ、世界中で最も親しまれる作品群と言っていい▼印象派の代表格とされる画家の絵画は、身近な場所にある。クロード・モネの「ジヴェルニーの草原」が福島市の県立美術館に常設展示されている。夏の午後遅く、淡い紫色に変わりゆく空の色合いに目を奪われる。静止画に時の移ろいが刻印されているかのようだ▼美術館は展示替えで1カ月近く休館し、今月に入って再開館したばかり。来月には学芸員が収蔵品を説明する機会がある。古里が誇る美の至宝に触れてみれば、きっと新たな発見がある。芸術の秋。印象派の巨匠風に言うなら、心に新たな「日の出」あり。<2024・10・19>