【KinKi Kidsの行く末】ジャニー喜多川の魂が『硝子の少年』とともに砕け散る日
スキャンダルが極めて少ない2人
旧ジャニーズ事務所(SMILE-UP.)のアイドルたちが、新会社STARTO ENTERTAINMENTへと移籍した。 【写真】すごい…!若き日のKinKi Kidsが二人で向かった先 活動を休止している嵐は別会社を作ったが、STARTOとマネージメント契約を締結している。 新会社のホームページには、所属アーティストの一覧があるが、そこで異変が起こった。KinKi Kidsのところのみ写真がない。ラフな線で描かれた似顔絵が載り、<きんききっず>とある。明らかに異様なものだ。 いったい何が起こっているのか? 今年1月、堂本剛と百田夏菜子(ももいろクローバーZ)が電撃結婚を発表して、世を驚かせた。2人の交際について芸能マスコミは完全にノーマークだった。 もとより、剛も光一もKinKi Kids結成から30年余り、熱愛報道などが極めて稀でありスキャンダルは皆無である。唯一、写真週刊誌『FRIDAY』にスクープされたのは、2人が一緒にジョギングして朝マックを楽しむ姿だった。 ジャニーズ随一のトンガッた個性を持つ剛である(彼にはENDLICHERI☆ENDLICHERIとしてのソロアーティストの顔もある)。モテないわけがない。それでもノースキャンダルだったのは、よほど身を律した私生活を送っていたからだろう。 ダウンタウンの松本人志が文春砲を食らって、性加害の嫌疑を受け、芸能活動を休止した。その松本をリスペクトした堂本剛は、まったくスキャンダルがないまま結婚へと至る。あまりにも対照的だ。剛は松本のお笑いのセンスは尊敬しても、バックステージでの乱れぶりは(賢明にも?)見習わなかったようである。 ◆2人なりの訣別宣言 KinKi Kidsの堂本剛と、ももいろクローバーZの百田夏菜子――トップアイドルどうしの結婚は、歴史的快挙である。 SMAPの木村拓哉と、おニャン子クラブの工藤静香以来だろうか? ’00年11月、当事28歳で人気絶頂のキムタクの電撃的な“できちゃった婚”は、衝撃的だった。しかし、それはジャニーズの後輩アイドルたちの結婚への道を切り開いたとも言える。 <アイドルは結婚できない>とかつては言われた。ファンに失望を与え、人気がなくなるというのである。 あの福山雅治でさえ、46歳にして吹石一恵と結婚した時、所属事務所の株価が急落したというのだ!? なんとも恐ろしい。 ところが堂本剛と百田夏菜子の結婚は、圧倒的な祝福の声に包まれた。これは珍しい。昨年以来のジャニーズ騒動の中で、唯一の明るい話題だとも言われたものだ。 結婚発表の翌月、堂本剛はSMILE-UP.(旧ジャニーズ事務所)からの独立を宣言する。年度末(3月31日)をもってしてと。 4月から旧ジャニーズ事務所のアイドルたちは、新会社STARTOへと移籍した。剛は、いわばそれを拒否したのだ。 彼自身、この間、一連のジャニーズ問題について発言していない。ジャニー喜多川の一番のオキニ(お気に入り)といわれた剛のことだ。どんな想いを、その心の内に抱いていたことだろう? ある意味で、剛の結婚と、事務所からの独立こそが、彼が身をもって表したジャニーズとジャニー喜多川への訣別宣言だったのかもしれない。 ◆故・ジャニー喜多川への「苦言」 堂本剛は独立したが、KinKi Kidsは解散しない。光一は新会社への移籍を受け入れた。トーク番組『だれかtoなかい』でその胸の内を明かしている。 2人とも事務所を離れると、権利関係でKinKi Kidsという名前は使えなくなる。剛に「それでもいいじゃん」と言われ、「強いな」と思ったそうだ。 さらに「この歳になって、後輩の演出とかをするようになって、導かないとダメだなと思うようになった」とも語っている。 ステージで唄い踊る少年たちを輝かせること――それがジャニー喜多川の「夢」だった。受け継いだのは、滝沢秀明である。<滝沢歌舞伎>の舞台を作り、やがて芸能活動を引退して、ジャニーズの副社長を務めた。しかしジャニー喜多川の没後、事務所を離れている。 残されたのは、堂本光一だ。 ’00年からミュージカル「SHOCK」シリーズの主演を務め、長らく座長として活動を続けた。後輩たちの人望も厚い。演劇人として輝かしい評価を得ている。 そう、堂本光一こそが故・ジャニー喜多川の「夢」を受け継ぐ最後の一人となったのだ。 昨年10月、光一は舞台公演前の記者会見に応じている。 ジャニー喜多川について訊かれ、かつては彼の名誉のために恥ずかしい作品を作ってはいけないと思っていたが、その思いは捨てたという。「その刻まれたものをバツをつけて十字架にして、自分として表現していかなければいけないというふうに強く思っています」。 明確にジャニーを否定したのだ。 「何よりも被害に遭われた方が救われなきゃいけない」「まずは被害に遭われた方々、一日も早く救済されることを願っております」とも語った。 後にインスタグラムで、SNS上の被害者に対する誹謗中傷を「絶対に許されない」と批判、「自分を応援してくれてる人にそんな人はいないと願いたいけど、もしそれが俺を守ろうとか、そういうつもりで先方に攻撃的なコメントをしたりしている人がいるなら、そういうのほんといらない」と明言した。 「ファンに誹謗中傷をやめるよう呼びかけてくれ」と英国BBC放送の記者に要求され、「言論の自由もある」と拒否した東山紀之とあまりにも対照的だ。 いや、旧ジャニーズのアイドルで被害者への救済を訴え、誹謗中傷をやめるようファンに公言しているのは、堂本光一ただ一人なのだ。 ◆少年たちの最期の瞬間とは 堂本剛は、もう事務所にいない。嵐も別会社を作った。しかし、活動していない嵐のファンクラブの莫大な会費が旧ジャニーズ事務所(SMILE-UP.)を潤わせ続けることに、批判の声が強い。他のグループも同様だ。 ところが、4月30日をもってKinKi Kidsだけがファンクラブを解散した。そこには強い意志を感じる。新会社のホームページのプロフィール欄で唯一、異様な似顔絵の<きんききっず>の表記と共に……。 今は亡きジャニー喜多川の「夢」を受け継ぐ最後の者。 堂本光一よ、君はいったい何を考えているのか? ジャニーズ事務所は、もうない。新しい事務所に、剛はいない。ファンクラブも解散したし、プロフィール写真すらない。 そうだ、君が唯一、守ろうとしているのは……KinKi Kidsという名前ではないのか? そうして、その名前をつけたのは、ジャニー喜多川なのだ。 かつて君が名誉として、やがてバツ印をつけて、十字架として背負っていくと宣言した、<ギネス級の輝かしいプロデューサー>であり<人類史上最悪の性犯罪者>である。 ジャニー喜多川の「悪」を否定して、その「夢」を肯定すること。困難きわまりないその道を、今、君は……君だけが、歩もうとしているように見える。 堂本光一が事務所を退社して、KinKi Kidsの名前が消え失せる時、私はジャニーズの魂が完全に消滅するのだと思う。 その時、きっと懐かしい調べを聴くだろう。 「Stay with me」のフレーズと共に。 そう、27年前に瞳を輝かせ、高らかに歌声を上げた……あの“硝子の少年”たちが、砕け散るその瞬間なのだ。 取材・文:中森明夫
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