甲子園を逃したドラフト逸材 出る、出ないでプロの評価は変わるのか?
彼らのプレーを甲子園で見られないのは、高校野球ファンにとっては残念だが、選手の評価、ドラフト順位、“値段”は、甲子園に出る、出ないで、それほど大きく違ってくるのだろうか。 前述の名スカウト、片岡氏に聞く。 「昔のスカウトは狙った選手が甲子園に出てくれるなと祈ったもの。予選でも打者なら1打席や、ピッチャーなら一回りくらいだけを見て、さっと姿を消したりね。他のチームに知られたくなかったし、甲子園に出るとピッチャーは肩を消耗して故障する危険性もあった。でも、今みたいにネットでここまで情報網が広がると、もう関係はないね。肩、肘のケアにも気を使うようになっているしね。 ただ甲子園に出てくると、対戦相手のレベルが高くなるので、違った一面や、大舞台でのメンタルを見ることができる。いわゆる持っている選手か、どうか。甲子園で成長する選手も少なくない。しかし、普段とは違う火事場の馬鹿力を出すのも、甲子園という場所。なのでスカウトも勘違いしないように気をつけなければならない。結局、甲子園での活躍が選手として最も光っていたなあ、で終わる選手も少なくない。 またスカウトの立場からすれば、甲子園で活躍されると、やり辛くなることはある。選手側が勘違いして条件交渉などが難しくなってしまうケースもある。チームによると、人気面を考え、甲子園でスターになることを望む球団もあるだろうけど、結論としては、甲子園に出ても出なくともドラフト候補としての評価は変わらないということだ」 片岡氏は、ヤクルトのスカウト時代に、1978年に西田真二、木戸克彦らの活躍で全国制覇したPL学園の谷松浩之・外野手を4位で指名したが、交渉過程で、相手側が「甲子園で優勝しているんだから甲子園に出ていない選手の条件より低いのはおかしい」と、他選手の新聞情報などと比べて、吊り上げを主張してきて、困った経験があるという。結局、谷松外野手は、1軍出場のないまま引退した。 肝心の勝負は、ここから、そしてプロ入り後。甲子園出場を逃した選手は、もう“引退”となるが、すでに第2のステージへのスタートは始まっている。