「香川真司に似た」日本代表の22歳新星に求める“2年でエース”の道 名門・市船出身の逞しさを【コラム】
W杯で鋭さ出す存在に
鈴木自身も次のチャンスでは明確な結果を残すことが重要だと強く認識している様子。今回、約30分にわたって2シャドーを形成した中村が9戦8発という驚異的な数字を残し、森保監督や名波浩コーチから「外せない存在」と位置づけられていったように、鈴木も強烈なインパクトを残し続ければ、久保や南野、鎌田の牙城を崩す時が来るかもしれない。それを信じて一歩一歩、前進していくしかないのだ。 さしあたって、11日のシリア戦(広島)にフォーカスすることが肝心。もちろん次戦はミャンマー戦に出なかった南野や久保が長い時間プレーするだろうから、鈴木に与えられる時間はわずかだろう。今回より少なくなる可能性が高い。そういう中で、短時間でも流れを引き寄せられる選手もA代表に必要。2022年カタールW杯ではそれを堂安や三笘薫(ブライトン)、浅野拓磨(ボーフム)が担ったわけだが、鈴木にもグッとギアを上げられる鋭さがほしいところ。最終予選のメンバー入りを果たすためにも、千載一遇の好機を逃す手はない。 パリ世代エースは創造性とアイデア、高度なテクニックを備えたアタッカーということで「香川真司(セレッソ大阪)に似た選手」と評されることが多い。今季限りで引退したかつての代表キャプテン・長谷部誠もそう語っているという。偉大な先人の22歳の頃を振り返ると、すでにザックジャパンのエースナンバー10を与えられ、ドルトムントでゴールを取りまくっていた。そう考えると、鈴木はもっともっと成長曲線を引き上げなければいけない。 今夏には欧州5大リーグへのステップアップも噂されるが、守備強度やハードワーク、運動量含めて、彼には克服しなければならない課題がいくつかある。それをクリアし、本来の卓越した攻撃センスを遺憾なく発揮できるようになれば、森保監督も鈴木を放っておくはずがない。その日ができるだけ早く来るのが望ましい。 とにかく、2026年W杯までの2年間でA代表のエースになるくらいの鼻息の荒さを見せてもらいたい。高校サッカーの名門・市立船橋高校出身というアドバンテージを生かし、強さと逞しさ、泥臭さを駆使して、ここから一気に這い上がっていく鈴木の姿を楽しみに待ちたいものである。 [著者プロフィール] 元川悦子(もとかわ・えつこ)/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。
元川悦子 / Etsuko Motokawa