テレビ朝日・林美沙希アナ「チートイツが好きすぎて」局アナとプロ雀士、異色の二刀流が誕生するまで
打つ日が決まっているだけで、楽しみで仕方ない! 報道番組キャスターとプロ雀士 局内に上がった反対の声を乗り越えて、大学時代からの夢を叶えた――
恋愛ドラマでよくあるパターンだが、麻雀に惚れ込み、プロ雀士にまでなったテレビ朝日の林美沙希アナ(33)の麻雀の第一印象は、決して良くなかった。 笑顔が眩しい…!麻雀愛を語る"プロ雀士アナ"林美沙希アナ【本誌未掲載カット】 「大学受験のときに、父と弟が自宅でよく打っていたんですよ。人が部屋に籠もって勉強しているというのに、ひたすらジャラジャラと聞こえてきて……印象が悪いというか、むしろ嫌いでしたね(笑)」 だが、大学1年の終わりにバイト仲間の部屋で″再会″するや、引き込まれた。 「昔から一人であれこれ考えるのが好きなんです。捨て牌を見て、相手の様子をうかがって……麻雀って一度として同じ場面がない。牌を開けて『この間と似ているな』となることさえ、そうそうない。それがすごく楽しいですね」 世界の本塁打王、王貞治氏が「野球にしかときめかない」理由と同じだと告げると、美貌の雀士は静かに微笑んだ。 「麻雀って結局は自分との闘いなんです。危なそうな牌だなと思っていても、自分の手を進めるために切らなきゃいけない場面もあるし、自制しないといけないこともある。行くか、退くか――自分とじっくり向き合える。麻雀は打つ日が決まっているだけで、楽しみで仕方ない」 目を閉じれば、思い出すのは悔しい対局ばかり。なかでも「私の中にずっと残ってる」と林アナが挙げるのは、麻雀を打ち始めたばかりのころの記憶だ。 「四暗刻(スーアンコー)単騎を振り込んでしまったんですよ。しかも五筒(ウーピン)で。ダブル役満扱いでかつ親だったので、『はい、9万6000点』と言われて、『そんな点棒ありません!』って逆ギレして(笑)。四暗刻単騎待ちでアガる人を見たのはこの一度きりなんですけど、実は最近、私がテンパイする機会があったんです。張って一巡、リーチをせず待ちましたが、鳴いている人もいた。『止めに行かなければ』とリーチをかけたら、その宣言牌でタンヤオに当たるという……」 そんな林アナの好きな「役」はチートイツなのだという。 「テンパイするまでちょっと時間かかるからこそ、アガれたときの喜びは格別で。チートイツが好きすぎて、トイツがそんなに多くなくてもついつい、チートイツを見てしまう」 お昼のニュース『ANNニュース』の担当で、SNSに写真をアップしただけで芸能ニュースになる人気局アナが昨年、プロ雀士になっていた――。 「そんな二刀流、ありえるのか」と訝(いぶか)った本誌だが、目の前にいるのは麻雀愛溢れる、まごうことなきプロ雀士だった。 聞けばプロを志したのはテレ朝入社より早く、明治大学3年のときだという。 「就職活動するなかで、選択肢のひとつに考えていました。プロが対局したり、実況したりする姿を見て『こんなに楽しい世界があるんだ』と。麻雀を学び、競技として深めたいと思っていました」 悩んだ末に新卒でしか叶わぬ夢である局アナの道を選んだが、その後もプロ雀士の夢は持ち続けた。’18年にMリーグが発足すると、いよいよ想いを抑えられなくなった。こんなに面白い競技なのに、いまだに悪いイメージを持っている人がいる。アナウンサーとして麻雀の素晴らしさ、楽しさを伝えることはできないか。 「テレビ朝日にいながら、麻雀プロになることって可能なんですか?」 アナウンス部長に直談判すると、予想外の言葉が返ってきた。 「『可能だよ。本当に目指すのであれば、企画にしてその過程を追いかけられたらいいね』と言ってくださったんです。それが『動画、はじめてみました』の『徹マン。林~プロ雀士への道』(’20年2月~)という企画になりました」 だが、この前代未聞のプロジェクトは失敗に終わった。新型コロナウイルスの感染拡大により、断念せざるを得なくなったのである。それでも、林アナの情熱が失われることはなかった。その熱量に動かされ、救いの手が差し伸べられた。 「去年、年が明けたころにテレ朝の麻雀部で知り合った松田彩花プロ(29)が『プロを目指すなら私が教えるよ』って言ってくださったんです。過去問の見直しを一緒にやってくださり、LINEで質問すればすぐに返してくださった」 彼女の挑戦について、局内には色々な意見があった。1回目の挑戦時には「ニュースキャスターがプロ麻雀か……」と一部で懸念する声もあがっていたようだ。 だが、Mリーグの盛り上がりもあって局内で理解が進み、会社を挙げて応援しようという空気が醸成された。 「『報道キャスターとして、どうなるんだろう』とか『周りにどう思われているんだろう』という不安がないわけではなかった。それだけに、プロ雀士になってアナウンス部の後輩に『凄いです』『私も一生懸命になれるものを探したいです』と言われたときは嬉しかったですね」 4月14日には、”プロ雀士アナ”として念願の麻雀の初実況にもトライした。 「最初の対局で親と子の点数を間違えて自信をなくしてしまった。声が小さくなり、解説の二階堂瑠美プロ(43)と楽しい掛け合いができなかったのも不甲斐なくて」 自己採点は50点。だが、「さすがプロ」「林アナの実況、聞き心地が良すぎて眠気が」とコメント欄は盛り上がった。 「そのコメント、見てました! 眠いのか~と(笑)。ただ、落ち込んでいるところに、『頑張れ』という言葉をいただいて、励みになりました。ありがとうございました。それにしても――テンパイして、薄いところを一発でツモったときはもっと盛り上げないと……」 止まらぬ反省の弁。だが、林アナの二刀流によって、麻雀のイメージはすでに変わり始めている。 『FRIDAY』2024年5月10・17日合併号より
FRIDAYデジタル