「泥棒猫」「あんた価値ないよ」知らぬ間に妻が不倫相手をSNSで猛攻撃…「さらし行為」に39歳夫が感じた恐怖
裏のやりとりはもっと苛烈だった
どうすればいいのか彼は悩んだ。そして、待てよと思ったらしい。 「表だったところでこんなさらし合いをしているなら、裏では何を言い合っているのだろうと、ある日、こっそり妻の携帯を見たんです。するとふたりだけのメッセージのやりとりがあった。夕子が『なんだかんだ言っても、夫は私の元に戻ってくるの。あんたのところには立ち寄っただけ、身も心もね』と智花に送っている。智花は無視しようとするんですが、夕子が『こら泥棒、何とか言え』と煽る。すると智花も『うるさいわねえ。こんな妻の元に返る英ちゃんがかわいそう』と。『あの人はね、私がいないと生きていけないの』と夕子はさらに煽っていく。『ま、あんたは公衆便所みたいなものね』とまで言って切り捨てる。そら恐ろしくなりました。いつもの忍耐強いおとなしい夕子ではなかったから」 彼は教えてくれた友人に相談、とにかく公の場でのふたりのバトルをやめさせたほうがいいということになった。まずは智花さんに、こんなの見つけちゃったんだけどと言って「妻が名誉毀損で訴えたりすると困るから」とアカウントを削除させた。だが、夕子さんにはなかなか言い出せなかった。 「智花には心から謝りました。だけど智花は『別のアカウント作って見てみたら、あなたの奥さんはまだアカウント削除してない。私だけ削除させて、やっぱりそうやって奥さんをかばうのね』と。そうじゃない、妻の意外すぎる本性を見て怖いんだと言ったけど、智花にその気持ちは伝わらなかった」 一方で、夕子さんは智花さんがアカウントを削除したのは、智花さん自身の意志だと思い込んだようだ。
尋常ではない夕子さん
ある日、智花さんから電話がかかってきた。仕事中だったが、何か嫌な予感がして出てみると「助けて」という智花さんの悲鳴が耳に飛び込んできた。そのまま電話は切れてしまったのだが、やきもきしているとしばらくたって再び智花さんから連絡が来た。 「病院にいると言うんです。夕子に襲われたと。あわてて夕子に電話をすると『あらあなた、どうしたの?』って。今日はちょっと残業になるかもと適当なことを言って切りました。仕事が終わるとすぐに智花のところに行きました。智花はたいしたことないと言いましたが、突き飛ばされて足首を捻挫、さらに頭も打って切ったと。智花には知り合いの医者がいて、そこへ駆け込んだとか。警察に通報するというのを、自分が転んだだけだからと言いはったそうです。ただ、翌日、脳の検査はしたほうがいいと言われたと。顔色も悪かったので気になって、その日は智花のところに泊まって翌日、病院につれていきました。脳に異常は認められなかったのでホッとしましたが、夕子のしたことは尋常ではないと痛感したんです」 いつかはちゃんと話さなければならないことだ。英登さんは、ようやく決心した。その晩、帰ると夕子さんも起きて待っていた。いったい、どういうことなのと彼が言うと、それはこっちのセリフだと思うわと夕子さんは言った。 「きみがこんなに攻撃的なタイプだとは思わなかったと言うと、『あなたがこんなバカだとは思わなかった』って。夕子が初めて投げつけてきた強い言葉でした。そもそもSNSで接触してきたのは智花のほうだった。智花は僕の妻を探したみたいですね。夕子の投稿に智花がごく普通のコメントをつけたりして、夕子も智花の投稿を見るようになったらしい。そして写真に写り込む男が僕ではないかと気づいたという。智花は、かなり匂わせ投稿をしていましたからね。夕子が怒るのも無理はないけど、あんなひどいコメントをつけて互いをさらし合うのはどうかと思うと言ったら、『私は私を攻撃してくる人間を許さない』って」 そのとき英登さんは、ふと思い出した。夕子さんとつきあうきっかけとなった、あの晩のことを。不倫相手に別れを切り出されて泣いた夕子さんだったが、もしかしたらあのあと何かしたのではないだろうか。 「すると夕子は、相手の男の会社に通報したし、妻にも直接話した、と。別れてからそんなことをするなんてと言ったら、『一方的に私だけ損するのは嫌』と。相手の男は閑職に異動となり、妻はショックで入院するはめになったそうです。ざまあみろってことよ、と夕子はぽろっと言いました。夕子は今までずっと猫をかぶってたわけかと言ったら、『あなたは私を傷つけなかったもの、こういうことが起こるまでは』と。あなたはたぶん、あの女にたぶらかされただけとも言っていましたが、僕は夕子の二面性に衝撃を受けて、それ以上、対応することができなかった……」