米住宅買い手、150万円節約期待なら落胆も-大統領言及の仲介手数料
(ブルームバーグ): 住宅販売の仲介手数料を巡る集団訴訟で全米不動産業者協会(NAR)が和解したことを受け、消費者は大きな節約を期待していたが、むしろ失望することになるかもしれない。
この和解についてバイデン大統領は歓迎し、場合によっては「住宅の買い手と売り手は最大1万ドル(約150万円)を節約できるかもしれない」と述べた。サマーズ元財務長官も「不動産業者のカルテル」解消で、米家計全体で長期的に1000億ドルが節約される可能性があると指摘した。だが実際のメリットはなお不透明だ。最も支援を必要としている初回購入者にとってはなおさらだ。
住宅市場は不安定な時期にある。住宅ローン金利上昇を背景に昨年の販売は約30年ぶりの低水準に落ち込んでおり、過去最も手の届きにくい水準とも言える中で初めて住宅購入を目指す層にとっては特に厳しい状況だ。理論的には今回の和解は手数料押し下げを通じて住宅価格下落につながる可能性がある。だが専門家は、特に短期についてそうは限らないと指摘する。
より高くより長くの金利、世界の不動産市場を圧迫-富形成の近道消失
データ提供・コンサルタント会社リアル・トレンズのシニアアドバイザー、スティーブ・マリー氏は「私の知る限り、取引コストが下がったといって値下げする売り手はいない」とし、「そうはならないだろう」と語った。
NARはバイデン大統領発言を踏まえた発表文で、手数料交渉は和解合意以前から可能であり、今後も変わらないと表明。また「不動産業者の手数料は市場が決めるものであり、値ごろ感の危機の原因ではない」と説明した。
こうした変更がどのように波及し、市場に影響を与えるかは誰も分からないということもあり、激しい論争が展開されている。
米仲介業者の報酬に関する数十年来の仕組みは長い間、議論の的になってきた。売り手は通常5%または6%の手数料を業者に支払う。業者はそれを買い手の業者と分割する。この仕組みがコストを膨らませ、悪いインセンティブを生み出すと批判する見方もある。