地域づくり協同組合、全国100超に 農業や介護 移住者派遣して人手不足解消
移住者を職員として雇用し、組合員である各事業者に派遣する「特定地域づくり事業協同組合」の設立が、全国で100となったことが総務省の調査でわかった。派遣先の業種は農業が最多で89。JAが参画する組合もある。制度開始から4日で5年目を迎え、地方の人手不足解消と移住促進に向けた新たな取り組みとして設立が広がる。 総務省によると、6月時点で103市町村に100組合が設立された。農業の他、介護、JA、高齢者宅の草刈りなど、さまざまな派遣先があり幅広く活動している。 山形県小国町の「おぐにマルチワーク事業協同組合」は、地元農業者らが異なる業種の事業者と設立した。職員7人は20、30代の若手移住者で、農業の他、宿泊業や飲食店、スキー場などで働く。同組合は「皆やりがいを持って働いている」と手応えを示す。 長崎県のJA壱岐市は2021年、地域の農家らと農業に特化した「壱岐市農業支援事業協同組合」を設立した。Uターン者2人の職員が組合を卒業し、就農した。同組合は「農家の誕生はとてもうれしく、地域で支えていきたい」と語る。 人手不足解消や移住促進へ成果を上げる一方、課題もある。一つは年間通じた仕事の確保だ。同省によると、多様な組合員の確保や繁忙期を考慮した派遣計画策定などの工夫で対策している組合が目立つ。 職員として雇用する移住者ら人材の定着も課題だ。職員を募集しても集まらない組合も多く、「期待していた農業志願の若い移住者は来ないまま。効果はあまりない」(中国四国地方の農家)との声もある。 (尾原浩子)
<ことば> 特定地域づくり事業協同組合
2020年6月に施行された議員立法「特定地域づくり促進法」で創設された制度。農家、飲食店、製造業、宿泊業などの事業者が組合員となり立ち上げる。組合が移住者らを職員として雇い、組合員のもとに派遣。複数業種で、季節ごとなど通年で働く。行政が組合の運営費などを補助する。