菊池風磨の演技の魅力を考察 2023年は『ゼイチョー』『大病院占拠』『ウソ婚』など大活躍
菊池風磨が主演を務め、“税金の取立て屋”である徴税吏員の奮闘を描いている『ゼイチョー ~「払えない」にはワケがある~』(日本テレビ系)がついに最終回を迎える。 【写真】唇の形だけで菊池風磨だとバレた『大病院占拠』青鬼 徴税吏員は基本的に市役所の納税課の職員である。“税金の取立て屋”と聞けば、ちょっと怖いイメージがわき、市役所職員と聞けば、ルールに厳しい真面目な人というイメージがわくかもしれないが、菊池が演じる饗庭蒼一郎はノリが軽くて人たらし、コミュニケーション能力高めの“陽キャ”である。だが、前職は元財務省の官僚。業務遂行能力はピカイチだ。 そんな饗庭を、周りの出演者を困らせているのではないかと心配になるほど振り切りすぎな演技と人格が切り替わったのかとこちらも心配になるほど、クールな演技で見事に演じてみせた菊池。彼は今年、アイドルグループの一員としてシングル3枚、アルバム1枚をリリース。コンサートで全国をまわりながら、主演を含め5本のドラマに出演している。誰が見ても大活躍といえる1年だ。 クライムサスペンスドラマである『大病院占拠』(日本テレビ系)では、大病院を占拠した武装集団「百鬼夜行」のリーダー・青鬼/大和耕一を演じた。「百鬼夜行」のメンバーは口元だけが見えるマスクをかぶっており、その正体が物語が進むにつれて明かされていったのだが、青鬼は登場時から、ファンの間で「演じているのは菊池なのではないか」と大きな話題となっていた。 最初は冷静沈着でありながら病院の占拠をゲームのように楽しむ愉快犯のように見えた大和だが、後半にかけて真の狙いが見えていくにつれ、彼の苦悩と人間らしさに胸が苦しくなる場面が何度もあった。また、同じ事務所の先輩で菊池が尊敬する人の1人である主演の櫻井翔とも切迫するやりとりを繰り広げ、物怖じしない堂々とした演技を見せていた。 恋愛ドラマである『隣の男はよく食べる』(テレビ東京系)で演じた本宮と『ウソ婚』(カンテレ・フジテレビ系)で演じた夏目は、全く性格の異なる男性である。本宮は年下と本気の恋愛をしていることが気恥ずかしく、上司に本宮との関係性を言い淀んだ大河内麻紀(倉科カナ)に「『彼氏です』って紹介してくれないんだ?」と拗ねてみせる。長年恋から遠ざかっていた独身オトナ女性・大河内を年下男子特有の意図しないあざとさとゆるりと漂ってくるセクシーさで翻弄していた。 一方の夏目は、想いを寄せ続けた初恋の相手で幼なじみの千堂八重(長濱ねる)に素直になれず、口も悪く態度もキツくなりがちだった。彼女に振り向いてもらいたい一心で不器用ながらも奮闘する姿がなんだかかわいらしかった。 主演かどうかの立場にかかわらず、どの作品においても菊池の演技には周りのキャラクターを引き立てる力がある。口元だけでニヤリと笑えば、ニヒルに見え、サスペンスにおいては相手を煽るきっかけとなるし、大口を開けて笑えば陽気なキャラクターとなり、周囲を華やかにする。相手がそれにあわせて一緒に笑えばその人の明るさが強調されるし、『ゼイチョー 』の百目鬼(山田杏奈)のようにそれに冷たい視線を向けたり、ツッコんだりすれば、相手の真面目な一面が強調されるのだ。 ドラマには確かに主演や助演というような役割があるが、たとえば主演が1人でガンガン突き進んでいったからといっておもしろいものになるわけではない。登場人物それぞれが、それぞれの場面で、“その人らしさ”を発揮していくからこそ、描かれているものにより深みが増し、ドラマ自体に引き込まれていくことになる。 菊池の演技の幅広さは様々なジャンルのドラマで通用するだけではなく、他の役柄の“その人らしさ”までもを引き出し、作品全体を盛り上げることに繋がっているような気がする。これが、多くの作品に引っ張りだこの菊池の演技の魅力のひとつではないだろうか。 ドラマだけではなくバラエティにもよく出演し、さらに二宮和也が中心となっているYouTubeチャンネル「よにのちゃんねる」の一員としても活躍する菊池。今後の活躍にも要注目だ。
久保田ひかる