「多機能は優先事項じゃない」 なぜCIOはユニークな製品を出し続けられるのか
大阪に本社を置く充電機器メーカーのCIOは、ユニークな製品を作っている注目の企業です。これまで、合計65Wの出力で3つのポートをおよそ鶏卵1個分ほどの大きさに収めた急速充電器「NovaPort TRIO 65W」や、Qi2規格対応でコンセントプラグ一体型のワイヤレス充電器「NovaWave SPOT PLUG+C」などを出しています。 ユニークさはユーザーにも受け入れられており、ECサイトなどで製品レビューを見ていると、高い点数評価はもちろん、愛用者からの熱い支持のコメントが目立ちます。最近ではIT関連サイトなどに製品のレビューが掲載されるなど、知名度を広げ続けているのも見逃せません。ですが、どんなメーカーか知らない人もまだまだ多いのではないでしょうか。 そこで今回、代表取締役の中橋翔大さんにCIO立ち上げの経緯から製品作りに込める想いに至るまで、じっくりと聞いてみました。
製品の特徴は“結果的に”生まれるもの
──御社の公式サイトで沿革を拝見すると、ECサイトからスタートされていることがわかります。 中橋 はい。CIOを設立する前は、充電器やモバイルバッテリー、ケーブルなどを輸入して販売するECサイトを運営しておりました。扱う製品は、日本ではまだ目新しいものや機能的に優れたものが中心。気に入ってくださる方も多かったのですが、続けていく中で、課題に感じることも出てきました。 ──というと? 中橋 輸入販売する製品を喜んでもらえる一方で、「こういうものがあったらいいのに」というご意見も頂戴するようになってきたんです。それは、どれだけ探しても見つからないものとか、そもそも存在しないものだったりして。 お客さまのニーズに向き合っていく中で、人それぞれによって異なるニーズがあることがわかってきて、自分たちでそのニーズを考えながら、直接作っていきたいと思うようになりました。そうするには、ロット数など満たさなければいけない条件がいろいろあったので、法人化する方向に動きました。それがCIO設立の経緯です。 ──法人化から7年が経過しています。どんな道のりでしたか? 中橋 法人化してからも、いまの方針がすぐに生まれたわけではありません。新しいものをどんどん取り入れて、機能性に特化したものを作って販売しても、すぐに模倣されて、価格的にもっと買いやすい製品がすぐに出回り、売れなくなっていく……そんな時期も1年ほど続きました。ただ、購入してくださった方のレビューに目を向けていると、「次々目新しいものを出してくれるのがうれしい」といったお声もいただいていました。 そこで「製品に向き合うことも大事だけど、製品を通じて、お客さまに感じていただける価値を作っていく方に気持ちを向けたい」という考えを持つようになりました。お客さま1人1人の生活の中に、それぞれの価値観に響くワクワクする瞬間を作りたい、CIOの製品を通じてそれを感じてほしいというのが、企業理念の根幹にある想いです。 ──プロダクト優先ではなく、ユーザーの好奇心を満たしたいという考えが、プロダクトよりも先に、ものづくりのベースとしてあるのですね。 中橋 プロダクトアウトになるのではなく、お客さまがCIOの製品を通じてどういう日常を過ごすのかとか、使うシーンの中でどういう価値を得られるのかということを優先して考えています。 ──“結果的に”多機能であったり、先進的で珍しいプロダクトだったりを安価で販売されているということですね。 中橋 特徴的であったり多機能であったりするのは、お客さまの好奇心を満たすことが目的であって、優先事項というわけではないんです。 ──たしかに、いまは個人でも海外の最新製品を安価に買えるようになっていますからね。多機能とか新しいだけだと、特別な価値にはならないというか。 中橋 その通りで、多機能で安価な製品とか、デザインがかっこいい製品、目新しい製品は、探そうと思えば海外の安価なサイトでとことん探せますし、いわばECが加速している世の中なので、物の売買がすごく簡単になっていると思います。その中で、“自分たちよがり”で製品を発信するというよりも、ユーザーの感性や価値観に寄り添って、ユーザーのことを考えてはじめて「これを買って良かったな」と感じてもらえるプロダクトが生まれると思うんですね。