道長を導くのはまひろの愛か、それとも己の欲望か|NHK『光る君へ』第42・43回
目指す世を改めて問い直す
回復した道長は、臥せる前と変わらず、仕事に取り組む。これまでよりも苛烈かもしれない。 自分の孫を帝に就かせることを諦めてはいない。 そんな道長の背中を押すかのように、運が味方をする。内裏ではたびたび火事が起こる。これを道長は三条天皇の政に対する天の怒りだと言い、譲位を迫る。もちろん、三条天皇は頷かないが、実は次第に目と耳が悪くなっていた。道長らが言ったことを聞き返す、文も逆にして見ていたり。道長にとっては好都合と言えるだろう。 もちろん、そんな道長の行動をよしとしない者もいる。彰子(見上愛)も眉をひそめる。実資(秋山竜次)にも譲位を迫っていることを諫められる。 道長が目指すのは「民が幸せに暮らせる世を作ること」と言うが、実資は「幸せなどという曖昧なものを追い求めるのが私たちの仕事ではありませぬ」とぴしゃり。 確かに、実資の言うとおりで……。幸せは人によってさまざまで、権力者が「これが民の幸せ」と決めつけるのも乱暴だ。と、なると、道長の目指していたものは? 道長が目指す世、というのは結局のところはまひろと道長の心の中だけにある桃源郷なのかもしれない。
初恋、破れて
一方、賢子(南沙良)は双寿丸(伊藤健太郎)との交流を深めていた。当たり前のように屋敷にやってきて食事を摂っていく。越後から帰ってきた為時とも顔を合わせた。 このまま賢子と双寿丸は夫婦になるのか…と思ったが、双寿丸は大宰府に行くことが決まった、と告げる。 賢子としては、もう恋人のようなものだと思っていたのかもしれない。自分もついていく、と言うが、女は足手まといになると断られてしまう。 「都でよい婿を取って幸せに暮らせ」「妹のようなお前と過ごすのも楽しかった」 好きな人にこう言われてしまっては……。 もしかしたら、双寿丸は賢子を拒むためにあえてこういう言い方をしたのかもしれない。 ただ、賢子も泣いてすがるタイプでもないし、怒るタイプでもない。笑顔で送り出したい、という気持ちが勝つ。 カッとなるところもあるけれど、好きな人の幸せを祈り、自分の思いも曲げない。両親によく似た娘である。 まひろと再びの約束を交わした道長は強い。政治のトップへと昇り、その地位を盤石なものにしていく。が、それと同時に老いてもいく。どのように老いていく姿を描かれるのか、終盤にかけてのポイントとなるのではないだろうか。 <文/ふくだりょう> 【ふくだりょうこ】 大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ
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