元乃木坂46・樋口日奈、時々のぞく「猪突猛進な自分」 不倫劇で開拓したい新たな俳優像
「倫理観が揺さぶられたドラマ」
乃木坂46を卒業して約1年半が経った。俳優の樋口日奈は多くのドラマに出演し、多彩な役柄をものにしてきた。初主演ドラマBS テレ東『初恋不倫~この恋を初恋と呼んでいいですか~』(7月3日スタート、深夜0時)では大人の不倫劇に真正面から挑む。現場では「もっと感情を吐き出さなければ」と思ったと振り返り、俳優業への思い、「イノシシみたい」と言われる自身の性格なども語った。(取材・文=大宮高史) 【写真】とびっきりの笑顔を見せる樋口日奈 インタビューの別カット 『初恋不倫~この恋を初恋と呼んでいいですか~』は横馬場リョウ氏のウェブマンガのドラマ化。樋口が演じる主人公の財前穂波は真面目な保育士だが、夫は初恋の人の面影を求めて不倫に走り、自身も隣人に恋心を抱いてしまう設定だ。 「倫理観を揺さぶられながら原作を読んでいきました。人の性格や振る舞いに『絶対はないんだな』と思わされます。『不倫』に『初恋』という正反対の要素が絡んできて、『いけない』と思っていても、不倫をしてしまう人達を否定できなくなってしまいそうです。私の中にも、見て見ぬふりをしていた『裏の顔があるかも』とスリルも感じます」 奔放な恋愛観を持つ男女が登場する中、穂波は夫の俊一(芳村宗治郎)の不貞に感づく。そして、近くにいる謎めいた隣人・時松千尋(佐伯大地)にひかれ、葛藤していく。何組ものカップルが、画一的な価値観だけでは測れない恋愛のかたちを見せ、人生が動いていく。 「穂波は、もともと人の道を外れることが嫌いで、不倫なんて絶対できないような『色恋にも誠実でいよう』という真面目な人柄なんだと思います。ところが、夫もいる身で抑えていたはずの恋愛感情が大きくなります。そして、彼女自身も気づかなかった“感情むき出しの穂波”に引っ張られて豹変していきます」 樋口は自身の性格も穂波に似て「常識人寄り」と思っている分、作品の展開に衝撃を受けていた。 「社会のマナーや倫理を守りたいし、恋愛であれば相手に対してもそれを求めるだろうなと思います。でも、いざとなったら、穂波のように隠していた自分の欲望に身を委ねてしまうかもしれませんね。人の性格の複雑さが怖くなってきます」 では、樋口にも演じてみて気づいた“俳優としての意外な面”はあるだろうか。 「的場政行監督には『受けるお芝居がすごく上手いね』と言っていただきました。相手のリアクションに応えていく受け身のモードで役に入っていくと、肩肘張らずに感情をひき出していくことができますが、『もしかすると、まだ自分の気持ちをストレートに出しきれていないのかな』と思いました」 それは、穂波のごとく「自分の心にたがをはめていたかもしれない」とも表現した。 「先輩の俳優さんに話を聞くと、日頃からプライベートでも喜怒哀楽を露わにしているそうです。比べると、私はプライベートでも穏やかすぎるようなので、もっと素直に笑ったり、喜べるようになるといいかもしれません」 三姉妹の末っ子として育ち、2011年に13歳、中学2年生で乃木坂46の1期生オーディションに合格した。それから13年のキャリアで、自身の意外な面に気づいたことが2つある。「痛覚に鈍感なところと自分に対して負けず嫌いなこと」だという。 「体をどこかにぶつけても『痛い』とすら感じないで、わき目も振らずに目的地に向かってしまうんです。行動からして猪突猛進なところは、負けず嫌いにも通じているのかな。マラソン大会でどんなにしんどくても歩かなかったり、学校のプールサイドの床がどんなに日光で熱くなっても平気な顔をしている子でした」 乃木坂46結成時は、一番年下の1998年生まれの妹ポジションにいた。大人数のグループで他人と比べるのではなく、自分に目標を課して、モチベーションにしてきた。 「自分に課した目標が叶わないと、すごく罪悪感を覚えるんです。悔しいし『情けない』とも思う性格です。乃木坂46にいた時も、辛い時期にはかえって『ここで辞めて終わりたくない』と思っていました。そんな時こそ果敢にお仕事に打ち込んでいきました。『楽しいと思えるまでは頑張ろう』と決め、(加入から)11年が過ぎて、ようやく心から楽しくなれたから、『卒業してもいいかな』と思って次の道に進みました」