今だから知っておきたい 4月施行「障害者差別解消法」が目指す社会
国連の障害者権利条約批准に向けた動きがきっかけ
そもそも、この法律はどうして設けられたのでしょうか。 2006(平成18)年、国連で障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)がつくられました。条約は、障害者も社会の一員として尊厳をもって生活することを目的とし、障害に基づく差別をなくすことが原則のひとつに盛り込まれました。欧米など海外では、既に多くの国が障害者の差別を禁止し、日常生活・社会生活を送る機会の平等を保障する法律がありました。 日本も翌2007(同19)年、障害者権利条約に署名をしました。ただ国内には、「身体障害者福祉法」など障害者の福祉に関する法律はありましたが、批准に向け、差別を禁止した法律をつくることと、障害の有無に関わらない社会参加の平等を盛り込んだ法整備を進める必要がありました。そのため、「障害者基本法」の改正、「障害者総合支援法」成立など制度改革をすすめ、ようやく2013(同25)年に「障害者差別解消法」が成立、本年度施行の運びとなったのです。ちなみに「障害者差別解消法」成立の翌2014(同26)年、日本は、障害者権利条約の140番目の締約国になりました。 あくまで、障害者権利条約も障害者差別解消法も、障害者のための新たな権利を作ることや、優遇することを目的としたものではありません。障害にかかわらず、勉強や社会参加で平等な機会を保障するため、何が差別か判断できる“ものさし”になることも期待された法律です。そのため、障害者差別解消法は、施行から3年後には内容見直しを行うことも決まっています。
障害者の団体からは事件に関する声明が
こうした障害の有無に関わらない共生社会を目指した法律施行が実現したにもかかわらず、凄惨な事件が起きました。NPO法人DPI(障害者インターナショナル)国際会議や、知的障害者とその家族でつくる「全国手をつなぐ育成会連合会」など、障害者団体が相次ぎ、声明を出しています。全国手をつなぐ育成会連合会が27日「障害のあるみなさんへ」発表した声明の全文は以下のとおりです。 津久井やまゆり園の事件について (障害のあるみなさんへ) 7月26日に、神奈川県にある「津久井やまゆり園」という施設で、 障害のある人たち19人が 殺される事件が 起きました。 容疑者として逮捕されたのは、施設で働いていた男性でした。 亡くなった方々の ご冥福をお祈りするとともに、そのご家族には お悔やみ申し上げます。 また、けがをされた方々が 一日でも早く 回復されることを 願っています。 容疑者は、自分で助けを呼べない人たちを 次々におそい、傷つけ、命をうばいました。 とても残酷で、決して 許せません。 亡くなった人たちのことを思うと、とても悲しく、悔しい思いです。 容疑者は「障害者はいなくなればいい」と 話していたそうです。 みなさんの中には、そのことで 不安に感じる人も たくさんいると思います。 そんなときは、身近な人に 不安な気持ちを 話しましょう。 みなさんの家族や友達、仕事の仲間、支援者は、きっと 話を聞いてくれます。 そして、いつもと同じように 毎日を過ごしましょう。 不安だからといって、生活のしかたを 変える必要は ありません。 障害のある人もない人も、私たちは 一人ひとりが 大切な存在です。 障害があるからといって 誰かに傷つけられたりすることは、あってはなりません。 もし誰かが「障害者はいなくなればいい」なんて言っても、 私たち家族は 全力でみなさんのことを 守ります。 ですから、安心して、堂々と 生きてください。 平成28年7月27日 全国手をつなぐ育成会連合会 会長 久保 厚子