LVMHが標高2600mで造る5万円の1本も。「中国ワイン急成長」の実態
生産量の5割を占める山東・河北省
日本の25倍以上もの広い国土を持つ中国には、一口には括れないほど多様な気候風土が混在する。現在、中国には8つの主要ワイン産地があるが、一般に西高東低の地形のため、沿岸部から辿って見るとわかりやすい。 沿岸部、標高100~300mにある山東省は、中国ワインの4割以上を生産する最大のワイン産地だ。中国国内では比較的降水量も多くボルドーに似た海洋性気候を持ち、中国最古で最大手のシャトー・チャンユーが1892年に創業されて以降、ワイナリー数は150弱にも昇る。中国を代表する高級ワイン「ロンダイ」をはじめ、ドイツ人オーナーが青島に設立したシャトー・ナインピークスも、国際的な評価が高い。 首都・北京の隣にある河北省も生産量が多く、有名な長城ワインの本拠地もここにある。生産量は山東省に次ぎ2位で、山東省と合わせて中国で生産されるワインの5割以上を占める。 より内陸の標高1000m付近にある山西省は、品質にこだわったワイナリーが頭角を現しているエリアだ。中国初のブティック・ワイナリー、1997年創業のグレース・ヴィンヤードをはじめ、ペトリュスのオーナーであるムエックス・グループ最高責任者ジャン・クロード・ベルエ氏をコンサルタントに迎えたRongzi Wineryも建設され、注目を集めている。 ■唯一の格付け制度のある寧夏回族自治区 さらに内陸の寧夏回族自治区は、今中国で最も評価の高い注目のワイン産地として押さえておきたい。ブドウ栽培面積は約4万haと最大で、ワイナリー数も228(2023年)と最も多い。「モエ・エ・シャンドン」で知られるLVMHグループがスパークリングワイン生産の拠点として「シャンドン・チャイナ」を設立したのもここ寧夏だ。 特筆すべきが、国内で唯一独自の格付け制度を導入していること。ボルドーと同じ1級~5級の5段階による格付けで、格付けは2年に1度見直しされる。2021年の最新格付けは57ワイナリーが格付けされているが、1級は不在のままだ。 ワイン造りに力を入れる背景には、雇用不足解消や環境問題への対策もある。他の産業が少ない内陸部では、ワイン産業を国策として後押しすることで雇用創出へとつなげる狙いがある。さらにゴビ砂漠が近いため、黄砂の問題も深刻だ。大気汚染や健康被害も甚大な黄砂を押さえるために、緑化事業としてワイン用ブドウの栽培を促進しているのだ。