「娼婦を体験したい」女性作家が選んだ自由とエロスの解放とは?
身分を隠して、2年間、娼婦として活動した作家の自伝小説を完全映画化した話題作『ラ・メゾン 小説家と娼婦』がいよいよ公開されます。アニサ・ボンヌフォン監督と主演を務めた女優アナ・ジラルドさんに話を伺いました。 PEOPLE NOW
27歳の小説家エマ・ベッケルが娼婦として過ごした2年間を描いた自伝小説『ラ・メゾン』。世界16カ国でベストセラーとなったこの衝撃作が『ラ・メゾン 小説家と娼婦』として完全映画化されました。日本公開に先駆け、アニッサ・ボンヌフォン監督と主演女優のアナ・ジラルドさんが来日。ひとりの女性の欲望を赤裸々に描いた本作について話を伺いました。
主人公エマの“自ら選んだ売春”を描きたかった
── 『ラ・メゾン』は原作も映画も各地でセンセーションを巻き起こしましたが、その理由は、女性のセクシュアリティ(性的指向、性欲など性のあり方)の描き方でしょうか? 原作者の体験に基づいた話だからでしょうか? アニッサ・ボンヌフォン監督(以下アニッサ) 通常、こういう形でセクシャリティについての話は描かれません。『ラ・メゾン』はエマの物語。性的興奮を掻き立てる妄想(ファンタスム)や本を執筆するという欲望をとことんまで突き詰めて売春まですることを決めた彼女の本当の物語です。自ら選んだ売春よりも、仕方なくすることになった売春がよく語られてきましたし、娼婦になるという女性のファンタスムもほとんど語られることはありませんでした。だから、こうした題材を取り上げた映画は好奇心を引くのだと思います。
── 女性と男性ではセックスの捉え方が違うように表現されていました。エマたちは男性のファンタスムを表現して男性を喜ばす。そこに優位性を見出しています。一方で、男性の客の方は娼婦を下に見て、時に暴力的で金を払えば何をしてもいいと考えている人さえいて、彼女たちを踏み躙る。男性と女性は平行線で、結局わかりあえないのでしょうか? アニッサ この原作で私が女性として気に入っているのは、女性の欲望について語っている点です。映画では、男性が女性の性欲について語るということはよくあるわけですが、この映画では女性の視点から見た男性の欲望を描きました。いろいろな男らしさを描くために種類の違う男性たちを登場させたいとも思いました。男性が女性に対して様々な見方をしていることを表現したかったのです。 娼館にやってくる客の中には弱い男性もたくさんいます。カップルの関係が脆くなっていたりして彼らはセックスを必要としている。でも同時に、妻を裏切って浮気をしたくないとも思っている。女性にどう接したらいいかわからなくて、学びたいと思ってやってくる男性もいる。私はそんな男性たちが娼館にやって来ることにとても心うたれました。 一方で、もちろん、金を払っているのだから何をしてもいいと考えて女性たちを酷く扱う客もいます。それはこの業界の真実ですから語らないわけにはいきません。 やはり男と女は根本的に考え方がとても違うのだと思うのです。でも、人生の魔法だと思うのですが、この違いの中にも調和を見出すことができると思います。