じつは、社交的な性格は「腸内殺菌」がコントロールしていた…「快便」が人にもたらす、驚きの影響
ジェットコースターで結石を出す、うんちを移植してガンや認知症を治す、万引きや虐待の時に活性化する脳の部位がある…。こうした研究は実際に存在するものです。 【写真】性の先進国スウェーデンに学ぶ「幸福な”夜”の過ごし方」 そして、最先端の研究分野ではこのほかにも身体や病気について次々と新しい事実が明らかになっています。そんな“人体の話”をまとめたのが『ウソみたいな人体の話を大学の先生に解説してもらいました』。 Xのフォロワー22万越えの大人気ニュースサイト「ナゾロジー」の協力のもと、岡山大学大学院教授の中尾篤典氏と脳神経科学者の毛内拡氏が解説します。(※本記事は同書の一部を抜粋・編集したものです。)
腸内細菌で性格激変!?
腸内細菌について深く理解してみましょう。 腸内細菌叢が私たちの健康維持のため重要な役割を果たしていることはよく知られていますが、さらに最近では、腸内細菌と中枢神経の関係が注目され、心の問題や生活・行動様式にも様々な影響を与えることが明らかになってきました。 カリフォルニア工科大学の研究者たちは、腸内細菌がマウスに社交性を与える仕組みを明らかにしました。 研究では通常の環境で育てられたマウスと、無菌環境で育てられたマウスを比較しました。無菌状態で育てられたマウスには、腸内細菌が存在しませんが、これらのマウスたちは、通常のマウスに比べ社交性が大幅に減少していることが判明しました。(1) マウスの社交性といっても、パーティー会場で会話能力を試すわけにはいきません。 ではどうやって決めるかというと、マウスは初対面ではお互いの臭いを嗅ぎ、体の上をまたいでいくことでコミュニケーションを取りますが、そういったマウスの行動を細かく観察することで、社交性の有無を判断しているのです。 また腸内細菌がいないマウスたちの脳を調べたところ、視床下部・偏桃体・海馬などストレス反応に関与する領域が活性化し、体内ではストレスホルモンの生産命令が持続的に出されている状態になっていました。つまり、いつでもストレスに対応ができるようにスイッチが入った状態、いわゆる戦闘状態になっていたのです。 この研究では、腸内細菌が脳に、「まあ落ち着きなさい」というメッセージを出し、ストレスホルモンの生産命令を抑制することでマウスの気分を改善し、社交的になる精神的余裕を与えていた可能性が高いことがわかりました。 腸内細菌を構成する菌にも、多くの種類がありますが、どの菌が社交性改善に役立っているかは不明でした。 そこで研究者たちは、腸内細菌を持たないマウスたちにいわゆる善玉として知られている様々な乳酸菌を与えて、どの種類の菌が社交性改善に役立っているのかを調べました。 結果「Enterococcus faecalis」(エンテロコッカス・フェカリス)という一般の整腸剤やサプリメントに含まれる乳酸菌がマウスの社交性を大きく改善すると示されました。