富山湾の不漁、長期化恐れ ベニズワイやシロエビ 県調査、地震の海底地滑り影響
●「過度な漁獲避けて」 富山県は7日、能登半島地震による富山湾の水産資源への影響調査の中間報告を公表した。シロエビの4~6月の漁獲量が前年同期から8割以上減ったのは、海底地滑りで海水の汚れの原因である硫化物が増えたことが影響したとみられるとした。ベニズワイガニの水揚げ量減は地滑りで埋没したか、漁場から移動したのが原因とみられる。県はベニズワイガニ、シロエビの生息数回復には時間が掛かるとし、漁業者に過度な漁獲を避けるよう求める方針を示した。 【グラフ】富山湾での漁獲量の比較 ベニズワイガニは1~5月の漁獲量が107トンで、昨年同期の144トンに比べ74%にとどまった。6月に魚津市沖の水深800メートルで実施したカメラ調査で、カニの生息域である海底に地滑りによる段差を確認。カニは土砂に埋もれたか、地形や水質の変化を避けて移動した可能性がある。カニかごの流出も漁獲減につながったとした。 シロエビは4~6月の漁獲量が60トンで、昨年同期の329トンと比べて18%と低い水準となっている。5月に漁場に近い神通川河口沖で行った調査では、エビの幼生の分布密度が昨年同期の4%まで落ち込んでいた。湾内74定点で海底堆積物を調査した結果、18定点で基準値以上の硫化物を検出。地滑りで硫化物が増加して低酸素状態となり、シロエビは漁場から遠い沖合に移動したとみている。 ベニズワイガニは捕獲サイズである甲羅の幅9センチ以上に成長するのに9年超かかり、シロエビは幼生から漁獲対象になるまで2~3年必要となる。県水産研究所の辻本良所長は、「生息数が減少した状態で漁に力を入れ過ぎると回復が遅くなる。今は我慢の時だ」と語った。 県はベニズワイガニとシロエビの資源調査、海底堆積物の分析などを継続し、年度末に最終報告する。富大などの研究チームも富山湾を調査しており、情報共有を図る。 ●ホタルイカは豊漁 ベニズワイガニ、シロエビの不漁の一方、今年はホタルイカが記録的な豊漁だった。漁獲量は昨年の418トンの約10倍となる4088トンで、過去最多となった。県は、富山湾周辺の海流や海水温などの環境がよく、来遊しやすくなっているとみている。