インド政・経済界、対米関税引き下げや貿易・投資協定を準備
Manoj Kumar [ニューデリー 19日 ロイター] - インドが来年1月のトランプ米政権発足後、農産物など主に米国産品の輸入関税率の引き下げを持ちかける準備に入り、貿易・投資面では従来よりも範囲を広げた協定の締結を念頭に作業を進めている。政府と経済界関係者へのロイターの取材で明らかになった。 トランプ氏は輸入関税率の高い国には米国も高い関税で応じる威嚇的な方針を掲げている。インド政府の高官によると、同国商工省は対応策として、豚肉など特定産品の輸入関税率を引き下げる用意がある。輸入豚肉の場合、ほとんどが米国産で、関税率は現在約45%を課している。 別の関係者によると、ペースメーカーなど高性能医療機器やハーレーダビッドソンといった高級オートバイも関税引き下げの対象になり得る。こうした製品の関税率は現在25―60%という。 インドと米国の二国間貿易総額は2023年会計年度(23年4月―24年3月)で1180億ドルを超え、インドの貿易収支は黒字額が320億ドルに及んだ。こうした状況を受け、インド政府はトランプ氏の大統領就任後に、従来よりも対象を拡大した対米貿易・投資協定を締結することを目指している。 前出2人目の関係者の話では、米国産液化天然ガス(LNG)と防衛装備品の購入拡大も議論の俎上に載せているという。 インドの米国からのエネルギー輸入は、原油や精製燃料、石炭などを含めて24年度に計120億ドル、航空機と部品では20億ドルと推定される。別の3人目の関係者は、トランプ次期政権の高関税政策に対応するため、原油や航空機などの輸入規模が拡大され、増加額が年間50億―100億ドルとなる可能性を挙げた。 貿易交渉を巡る提案時期については商工省関係者が以前、計画を練り上げた上でトランプ政権の発足後に行うと述べている。 また、インド政府筋は、トランプ氏が中国からの輸入品に最大60%の関税率を課す計画を掲げていることから、中国に代わる製造拠点としてインドを売り込む好機と受け止めている。このため政府は各省庁での検討にとどまらず、地元シンクタンク、業界団体との協議も重ねているという。 情報筋によると、インドは米アップルのiPhone生産などの面で投資を誘致しており、政府は航空機整備や半導体、電子機器、再生可能エネルギーなどの分野で優遇措置を拡大して提供する計画という。 保険分野への外国からの直接投資(FDI)を巡り、現在は出資比率を最大74%に制限しているが、100%を認める計画も浮上している。ただ、導入には議会の承認が必要となる。