西九州新幹線開業から2年たっても「未整備区間」の議論進まず…不透明な中、想定される「三つの展望」
与党内では、毎年800億円程度の国の整備新幹線事業費補助の増額を求める声が出ている。ただ、自民党総裁選に加え、解散・総選挙が近く行われる可能性もあり、先行きは未知数だ。
「リレー方式」固定化
佐賀県内には現在、九州新幹線の新鳥栖駅があり、関西まで新幹線で行ける。また、佐賀―博多間は在来線特急で片道約35分。西九州新幹線を佐賀駅ルートで整備すると、長崎―博多間は30分短縮される一方、佐賀―博多間は15分短縮にとどまる。
西南学院大の近藤春生教授(財政学)は「佐賀は一定の交通インフラがあり利便性は低くない。人口減少を踏まえれば、新幹線整備の費用対効果は高くないだろう。国交省だけでなく、外部機関が費用対効果を客観的に算定・分析し、高い効果を見込めなければ、リレー方式の固定化でも仕方ないのではないか」とする。
「東九州」議論へのシフト
大分県の佐藤樹一郎知事は10日の県議会で、東九州新幹線構想について「(具体的な手続きに入る)整備計画路線への格上げを国に訴えたい」と意欲を示した。同新幹線は福岡市から大分、宮崎両県を通り鹿児島市に至る構想。全国新幹線鉄道整備法に基づき、1973年に基本計画路線に定められたままとなっている。
大分県は昨年、従来の日豊線沿いのルートのほかに、新鳥栖駅から大分駅までの久大線ルートを調査。宮崎県も、新八代駅(熊本県)と宮崎市をつなぐ新たなルートの構想を打ち出すなど、議論が活発化している。
九州大の塚原健一教授(土木工学)は「西九州新幹線の議論が足踏みしていても、南海トラフ地震対策の意義がある東九州新幹線の議論は急ぐ必要がある。大分から愛媛、関西へつなげる豊予海峡ルートも、半導体産業で沸く熊本と大分のラインを発展させるために進めるべきだ」と指摘。
その上で、「九州の新幹線網をどう構築するかという重大な問題は、国も交えて九州の知事会や経済界が議論していく必要があるのではないか」と提案する。