焼津神社に謎の神武天皇像 専門家ら調査、学術的価値は? 明治期制作か「よくできている」
静岡県焼津市の焼津神社に建つ神武天皇像について、美術史研究の専門家らでつくる「屋外彫刻調査保存研究会」がこのほど、現地調査を行った。明治時代末期ごろの制作とみられる銅像の価値を、学術的な視点から確かめた。 像は銅製で、高さ1・98メートル、幅1・1メートル。像の左手に弓が握られ、先端には金鵄(きんし)がとまっている。像は1913年に同市の神武通り商店街に建てられ、50年に同神社に遷座された。焼津市史などによると、像は住民らが名古屋で購入したとされるが、詳細は分かっていない。 調査は像の周囲に足場を組み、洗浄もしながら実施。参加した美術史研究者や彫刻家、保存修復の専門家ら10人ほどの会員が状態を確認した。会員の一人で県立美術館の元学芸員の立花義彰さん(69)=静岡市葵区=によると、神武天皇像は中部や北陸、四国の限られた地域で明治40年代ごろの一時期に建てられたことが確認されているという。焼津神社の像も「明治期の制作として妥当。緻密でよくできている」と評価する。 今回、像の顔や金鵄の向きが1936年発行の焼津町勢要覧に載っている写真と異なっていることが分かった。背中には以前は矢入れがついていたと思われる跡を確認。また、金鵄と弓の接合部が腐食していて修復作業が必要な状況であることも把握した。 像の歴史については、地元住民の有志が数年前から調べている。その一人の又木克昌さん(62)も調査の様子を見守った。まだまだ謎は多いが、「神武さん(天皇像)が人の縁をつなげてくれた」と今後の新たな発見につながることを期待した。
静岡新聞社