レースを覆う濃密な「死の影」 マイケル・マン監督が描く実話「フェラーリ」 シネマプレビュー 新作映画評
公開中の作品から、映画担当の記者がピックアップした「シネマプレビュー」をお届けします。上映予定は予告なく変更される場合があります。最新の上映予定は各映画館にお問い合わせください。 ■「フェラーリ」 主人公はフェラーリ創業者、エンツォ・フェラーリ。エンジンは強力だが安全対策は貧弱だった時代のレースに、文字通り命懸けで挑む男たちを描く。 1957年。エンツォ(アダム・ドライバー)は財政難や妻、ラウラ(ペネロペ・クルス)との不和、愛人との間にできた息子の認知問題で追い込まれていた。彼は起死回生の策として公道レース「ミッレミリア」に社運を懸ける。 「ヒート」のマイケル・マン監督らしく、衝突しながら目標に向かう男たちを生き生きと描く。 ドライバー演じる冷徹で確信に満ちたエンツォは見応えあり。甲高いエンジン音に激しくブレる映像など、荒々しいレース描写と、再現されたレーシングカーの曲線美が魅力的だ。 だが、次第に当時のレースが濃密な「死の影」に覆われていることに気づく。作品の主題はむしろそこにあったのだ。山場で起こる大惨事の映像は壮絶で言葉を失う。 一方、ラウラの造形は浅く、魅力を感じられない。 12歳以下の鑑賞には保護者らの助言・指導が必要。米映画。 5日から全国公開。2時間12分。(耕) ■「それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン」 漫画家で絵本作家、やなせたかしの、おなじみのアンパンマン。その映画シリーズの35作目だ。 「クレヨンしんちゃん」のように大人も泣ける劇場版というわけではなく、子供の「映画館デビュー」のための作品という位置づけで、一緒に歌い、踊れる場面から始まる。 敵役のばいきんまんが主役なのが話題。妖精から助けを求められたばいきんまんが、絵本の中で暴れる凶暴なゾウと戦うが、とうていかなわない。そのとき、ばいきんまんは…。 負けても負けても立ち上がるばいきんまん。身をていして他人を救う無私のアンパンマン。すべての子供たちに伝えたいことが、ここにはある。 公開中。1時間4分。(健)