麻薬潜入捜査の実態 捜査官の回顧録に基づくクライム・サスペンス『潜入者』
現在も南米メキシコをはじめ世界各地で、麻薬売買をめぐる抗争が絶えない。組織や麻薬取締局など関係者のみならず、一般人までをも残忍な事件に巻き込んでいる。 依然、終わりの見えない麻薬戦争。1980年代は、米国に流入するドラッグのほとんどが南米・コロンビアの麻薬王パブロ・エスコバル率いる犯罪組織によるものだった。そこで米国の税関当局は、組織壊滅のため、大規模な潜入捜査を試みて、大きな成果をあげた。 13日に公開される『潜入者』は、国際資金洗浄人である“架空の大富豪”に扮し、2年以上にも渡る潜入捜査作戦に参加したロバート・メイザー本人による回顧録をもとに製作された映画だ。悪名高い麻薬カルテルの心臓部に忍び寄り、彼らの活動を支えた国際金融機関からも信頼を得ることに成功。劇中で描かれた作戦だけで数十人、合計80人以上をも有罪に導いた。 この体験について、「これは本にすることを真剣に考えた方がいい特別な話だと、何年もの間みんなに言われてきた」と語るメイザーは、映画化の可能性も見据えて、『The Infiltrator: Undercover in the World of Drug Barons and Dirty Banks』を書き上げ、2009年にはベストセラーとなる。
極限の緊張感と潜入捜査のリアルは実話だからこそ
メイザーは捜査官として、危うい交渉や取引を行い、神経を擦り減らす日々を送る。家族との安らぎに忍び寄る恐怖、自身の信念を守りつつ、任務のため、時には非情に振る舞うメイザー。極限の緊張感と潜入捜査のリアルさは実話だからこそ、心を揺さぶるものがある。
メイザー役には大人気ドラマ『ブレイキング・バッド』で4度のエミー賞に輝き、『トランボ ハリウッドで最も嫌われた男』(2015)でアカデミー主演男優賞にノミネートされた名優ブライアン・クランストン。同作では、さまざま葛藤を抱え、任務を遂行しながらも家庭も大切にする捜査官、そしてその捜査官が演じる駆け引き上手な大富豪とを巧みに切り替える。メイザーと共に組織に潜入する女性捜査官キャシー・アーツ役をダイアン・クルーガーが毅然たる職業人を演じる一方、大富豪に扮したメイザーの婚約者として優美な姿で魅了する。 ※『潜入者』監督:ブラッド・ファーマン、主演:ブライアン・クランストン 5月13日(土)、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田ほか、全国ロードショー