出番なく「俺を使えよ」と反骨も…定位置ライバルへ助言 元日本代表が驚き「すごく魅力的」
仲間であり、競い合える関係を周囲と作り上げたベテラン
浦和ユース出身の後輩でもあるMF関根貴大は、左右の逆サイドに入ることが多かったが時には左サイドで競合した。「ポジションが被っている選手に、これだけアドバイスできるのはなんでだろうとすごいと思っていた」と当時を振り返ったが、「チームのため、その選手のことを思ったらこうしたほうがいいというのがあったのかなと。それは今になったら分かるし、そういったことをしてもらっていなかったら、今も自分はそういう気持ちになれてないのかなと思う。ウガ君の人の良さというか、浦和に対する思いはすごい」と話した。 今夏10年ぶりに浦和へ復帰した元日本代表MF原口元気もまた、出場機会がなくとも練習から100%を出す姿とともに、「まだまだ俺を使えよっていう空気も出しながら、何か選手が困っていたらフランクにアドバイスをする姿、そのバランス感覚がすごく選手として僕は魅力的だと感じた。どっちかに偏っても良くないと思うけど、彼は非常にそこのバランスを取るのがうまい選手だなと最後まで感じていた」と話した。 数年前、宇賀神にその理由を聞いた時の答えは「彼らに実力を発揮してもらえばチームのためになるし、それを乗り越えれば自分がもっと成長できる」というものだった。まさに、それを繰り返してキャリアを積み上げてきた。 そのバランス感覚は、熱狂的で知られる浦和サポーターとの向き合い方でも同じだった。仲間でありながら、厳しい批判を受けたあとの試合でゴールを決めて耳に手を当てるポーズをしたこともある。将来の夢を「浦和のGM(ゼネラルマネジャー/強化責任者)になること」と宣言しているが、会見で「矢面に立つ職業だが、覚悟のほどは」という趣旨の質問を受けると、「何年、浦和でやっていると思っているんですか」と笑った。 宇賀神は「勝手にライバルを見つけるのもちょっと得意かもしれない。この人に負けなくないなとか、それは成長する糧になる」と話す。次の夢に向かう過程でも、こうやって仲間であり、競い合える関係を周囲と作り上げながら歩みを進めていくのだろう。
轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada