『海のはじまり』の細やかな演出…言葉にするのが苦手な目黒蓮、思わず倒れ込む有村架純
<何を描くか>、<どんな表情を見せるか>
彼女は夏の告白に動揺し、当時の記憶が蘇る。納骨堂のシーンがインサートされていたのは、夏が思わず口にした「(我が子を)殺してしまった」という言葉に強く反応し、我が子供の“死”に正対した記憶がフラッシュバックしてしまったからだろう。彼女の悲しい過去を、我々は夏よりも先に知ることになる。 やがて弥生は、「もし月岡くんがお父さんやるってなったら、私がお母さんをやれたりするのかな。決めるのは海ちゃんだけど、選択肢の中に入れてもらえたらなって…」と夏に電話する。かつて自分が選択できなかったことの選択。彼女は決して雄弁なキャラクターではないし、モノローグもインサートされないが、回想シーンで<何を描くか>、<どんな表情を見せるか>によって、彼女の心情を細やかに伝えている。優れた演出と演技があってこそ成立する芸当だ。 雄弁でないのは、夏も一緒。彼はひとつひとつ言葉を選ぶように喋り、本当の想いは心の奥にしまってしまう。印象的なのは、夏の父・和哉(林泰文)と母・ゆき子(西田尚美)の、こんな会話。 「夏、大丈夫?葬式のこと、なんか言ってきた?」 「言わないよ。言わない子だもん」 「そうだよね」 「言葉にするのが苦手な子だから」 言葉にするのが苦手な主人公が、これからどんな風に我が子と向き合い、どんな言葉を投げかけるのか。ゆったりとしたテンポで、このドラマは第3話以降も描かれていくことだろう。
竹島 ルイ