「おめでたづくし」59点 旧長谷川家で調度品40種展示 三重・松阪
三重県松阪市魚町の旧長谷川治郎兵衛家(松本吉弘館長)は現在、同館で企画展「長谷川家のおめでたづくし」を開催している。商家長谷川家に伝わる吉祥の意味を持つ図柄や文様を描いた品々から持ち主の願いや思いを紹介している。7月7日まで。
「鶴亀」「松竹梅」「網目模様」などで吉祥願う
吉祥の願いを込めた代表的なものとして「鶴亀」や「松竹梅」などが知られるが、これらには健康長寿や夫婦円満、子孫繁栄などさまざまな意味がある。今回は普段何気なく目にしている「おめでたいもの」に再注目してもらおうと全40種59点を展示している。 1918(大正7)年の「若松鶴文様打掛(わかまつつるもんよううちかけ)」は紫の繻子(しゅす)地に、長寿をことほぐ若松と鶴を刺しゅうしている。若松は小松ともいい、「小松引(こまつびき)」は平安時代、正月初子(はつね)の日に長寿を祈って小さい松を根ごと引き抜いて遊んだ行事。 江戸時代後期の「松竹梅鶴亀丸文蒔絵硯蓋(まきえすずりふた」は、ふたの裏全体に松、竹、梅、鶴、亀をそれぞれ円形に図案化した丸文を配したもの。「歳寒三友(さいかんさんゆう)」の松竹梅や長寿の鶴亀といったおめでた尽くしの吉祥文が表される。
飾り結び(大正期)は、茶わんや茶入れなどの袋「仕服(しふく)」のひもに花鳥風月などの飾りを施すもの。縁起の良い松や梅をはじめ、蝉(せみ)や雁(かり)など季節を表すものがみられる。1月は松、3月は桜、5月は橘(たちばな)、7月はキキョウ、9月は菊、11月はスイセンといった具合。 大正期の「朱塗網目文平椀(しゅぬりあみめももんひらわん)」は、繰り返される網目文様は、連続する、永遠に続くという意味がある。また網は福をからめとるものとして考えられている。 大正から昭和前期の「お福人形」の、頬が丸く膨らんだ愛嬌(あいきょう)のある様子は、縁起物として広く親しまれている。 静岡県から就職に伴う研修で津市に滞在中という鈴間蓮花さん(22)は「思ったより見応えがありました。お庭も素敵で建物もきれい。(展示は)螺鈿(らでん)の重箱が気に入りました。高校まで茶道部だったのですが飾り結びというものを初めて知りました」と話した。 同館を管理するNPO法人松阪歴史文化舎の中戸弘美研究員は「(私たちの暮らしは)おめでたいものに囲まれていたんだなと気付くだけで楽しくなると思います」と来館を呼び掛けている。
来月19日に水引講座
5月4日と6月29日午前11時からは、学芸員による展示解説が行われる。5月19日午後1時半からはワークショップ「水引で箸置をつくろう」を開く。先着定員10人。いずれも入館料のみ必要。 開館は午前9時~午後5時。水曜(祝日の場合は翌日)休館。入館料は一般400円、小中高校生は200円。