日照不足なのに太陽光発電を推奨するドイツの不合理、ロシア産ガス抜きと再エネで気候中立を目指す自縄自縛
■ 中東情勢次第で再びエネルギー高に グローバル経済の目下の懸念材料は、中東情勢の緊迫化だ。 4月に入って、イスラエルとイランの関係が緊張しており、原油価格が上昇している。また、LNGの主要航路であるホルムズ海峡を通じた供給が途絶える可能性が嫌気され、ヨーロッパの天然ガス価格指標であるオランダTTFの先渡し価格も30ユーロ台前半まで上昇している(図表3)。 【図表3 オランダTTF翌月物価格の推移】 中東情勢がさらに緊迫化した場合、ガス価格の一段の上昇は回避しがたい。そうなれば、ガス火力への依存度を高めたドイツのエネルギー価格には、強い上昇圧力がかかることになる。 ここに風力不足や日照不足といった悪天候が加われば、再エネ発電が不調となるため、エネルギー価格はさらに上昇し、ドイツ経済を強く圧迫することになる。 もちろん、これは最悪のケースだが、こうした展開に配慮しつつ、段階的にエネルギーの脱炭素化を図るのが、政治の本来の責任だろう。 そうした観点に立てば、ショルツ政権、特にSPDとB90/Grüneが推し進めている現在のエネルギー政策は、理念が先行し過ぎており、現実的な課題の克服を軽視し過ぎていると言わざるを得ない。 ※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です。 【土田陽介(つちだ・ようすけ)】 三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)調査部副主任研究員。欧州やその周辺の諸国の政治・経済・金融分析を専門とする。2005年一橋大経卒、06年同大学経済学研究科修了の後、(株)浜銀総合研究所を経て現在に至る。著書に『ドル化とは何か』(ちくま新書)がある。
土田 陽介