結局のところ、バターは体に悪いのか、悪くないのか? 半世紀以上の論争を経て振り出しに戻った「善悪二元論」のいきさつ
溢れる「背徳系」と「健康系」の油脂食品
マーガリンの分が悪くなった目下、世界で繰り広げられているのは「バター論争」だ。 2014年、ケンブリッジ大学が主導した大規模な研究プロジェクトで、長く悪者になっていた飽和脂肪酸の摂取と心疾患とのリスクには相関関係が認められないとの結果を発表した。 これによってアメリカのメディアは騒然となり、『TIME』誌はさっそく2014年6月23日号の表紙で「Eat Butter.」と高らかに宣言した。だが、トランス脂肪酸の弊害を指摘したウォルター・ウィレットをはじめ、すぐさま多くの専門家がこの研究結果に異議を唱える事態となった。 バターは悪者か、そうではないのか。結局のところ、論争は決着していない。半世紀以上を経て、話は振り出しに戻ってしまったのである。 文/澁川祐子 写真/shutterstock
---------- 澁川祐子(しぶかわ ゆうこ) 1974年、神奈川県生まれ。東京都立大学人文学部を卒業後、フリーのライターとして活動する傍ら、「民藝」(日本民藝協会)の編集に携わる。現在は食や工芸のテーマを中心に執筆。著書に『オムライスの秘密メロンパンの謎人気メニュー誕生ものがたり』(新潮文庫)。編集に『スリップウェア』(誠文堂新光社)。企画・構成に山本彩香著『にちにいましちょっといい明日をつくる琉球料理と沖縄の言葉』(文藝春秋)など ----------
澁川祐子