高橋ヨシキが映画『ヒットマン』をレビュー!
日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』! 実在した"偽の殺し屋"が巻き起こすクライムコメディ! * * * 『ヒットマン』 評点:★4点(5点満点) 軽やかなコメディに差し込まれる暗黒 プロの殺し屋=ヒットマンに、誰かの殺害を依頼したがる人は多い。少なくともアメリカではそうらしい。そして、その依頼が基本的に明白な殺意と計画性を伴うものであるがゆえに、警察が偽物の「ヒットマン」を使った囮捜査を行なうこともある(らしい)。 つまり、依頼人がはっきりと言葉に出して「ヒットマン」に殺害を依頼した時点で、日本でいう殺人予備罪が成立するため、それをもって依頼人を逮捕するわけである。 本作の主人公は大学で心理学と哲学を教える教師だが、ひょんなことから偽の「ヒットマン」として警察に協力することになり、そこでめきめきと頭角を現していく。 「自分がなりたいと思う人間のふりをすることが、結果的に『なりたい自分』を成立させてしまう」という考え方があるが、「タフでクールな『ヒットマン』」を演じることで、主人公は実際にその地点へと近づいていく。 が、「タフでクールな『ヒットマン』」が美しい「依頼人」と出会ったことから、事態は思わぬ方向へと転がり始める。基本的に軽やかでロマンチックなコメディだが、非常に暗い領域に足を踏み込む瞬間があって素晴らしい。試練を乗り越え代償を支払うことで人生は豊かになるのだから。 STORY:2匹の猫と静かに暮らすゲイリー・ジョンソンは大学で心理学と哲学を教える一方、地元警察のおとり捜査に殺し屋役として協力している。そんなある日、自身の夫の殺害を依頼してきたひとりの女性と出会うのだが...... 監督・脚本:リチャード・リンクレイター出演:グレン・パウエル、アドリア・アルホナ、オースティン・アメリオほか上映時間:115分 全国公開中