自衛隊にしかない! 究極のDIY装備「92式浮橋」とは「え、ブリッジじゃない使い方するの!?」
施設科ならではの装備「浮橋」
陸上自衛隊には、役割に応じた「職種」というものが16種類、設けられています。これは旧日本軍などでは「兵科」と呼ばれるもので、他国でいう歩兵に相当する普通科や、大砲やミサイルなどを扱う特科、戦車や装甲車を扱うのに長けた機甲科、「自衛隊の警察」と形容される警務科、音楽演奏に優れた音楽科などに分類されます。 【自動でパカッ!】これが92式浮橋の架設の様子です(写真) そのなかで、土木作業を得意とする、他国でいう「工兵」にあたる存在、それが施設科です。 施設科は、陸上自衛隊内では戦闘支援職種と位置付けられており、同類の職種には航空科や高射特科も含まれています。 この戦闘支援職種とは普通科、野戦特科、機甲科の戦闘職種をサポートするのが役割です。だからこそ施設科には、これら戦闘職種の進撃をサポートするための装備として地雷原処理車や装甲ドーザなどとともに「浮橋」が配備されています。 浮橋は、いうなれば施設科にしか配備されていない装備品で、その名が示す通り「水面に浮いて橋になる」ものです。例えるなら筏(イカダ)のようなもので、橋自体に浮力を持たせているため、河川の水深に影響を受けることなく橋を架けることができるのが特徴といえるでしょう。 陸上自衛隊が現在運用しているのは「92式浮橋」です。このたび、京都府宇治市の大久保駐屯地に所在する第4施設団と、宮城県の柴田町に所在する第2施設団、双方の架橋訓練を取材することができたので、その様子とともに92式浮橋について紹介しましょう。
橋だけでなくイカダとしても使えます
92式浮橋は「橋間橋節」と呼ばれる橋の本体部分と、橋の先端部である「橋端橋節」、そして浮橋をコントロールする「動力ボート」、ぬかるんだ地面でもスタックすることなく車両が走行できるようにする「道路マット敷設装置」などで構成されています。 前述したように浮橋は水面に浮かぶため、橋節をつなげて河川の両岸に固定してしまえば、応急的な橋梁として使用できるほか、2つから3つの橋節を連結し動力ボートで動くようにすることで、イカダとしても使用できます。 なお、陸自ではこのイカダを総称して「門橋」と呼んでおり、92式浮橋で構成する門橋は大型の90式戦車も搭載できることから「重門橋」と呼んでいます。 92式浮橋は1セットあたり車両23台で編成されるのですが、橋節部分でいえば14両分になり、1セット全ての橋節を連結した場合は約104mの橋を掛けることができます。 その一方で、全国に配備されている92式浮橋を持ってくれば、延々と橋長を伸ばすことも可能です。また、他の架橋装備と組み合わせれば、無限に橋の長さを伸ばすこともできます。 ちなみに、81式自走架柱橋など他の架橋と組み合わせた場合は「混合橋」と呼ばれます。