九九(1月5日)
にいちがに、ににんがし…。子どもの頃、掛け算の「九九」を呪文のように唱えた人もおられよう。古代中国で生まれた暗記法だが、今や脳活にも使われる▼日本には飛鳥時代ごろに伝わったとされる。計算手段にとどまらず、言葉遊びにも取り入れられた。万葉集には「十六」を「しし」、「八十一」を「くく」と読む和歌が収められている。現代にも九九は息づく。「いつも」や「一日中」を意味する「四六時中」は、「4×6=24時間」に基づく▼九九発祥の中国には「九九消寒図」の習わしがある。冬至の後、9日間を9回繰り返すと春が来る。梅の絵の花びらに、冬至から毎日一筆ずつ色を塗ると、81日後に満開の絵が完成する―。厳しい冬を乗り越えるために伝わる知恵であり、楽しみでもある▼ところで、九九の81の数を全て足し合わせるといくつになるか。1の段は1から9までの和で45。2の段は1の段の2倍、3の段は3倍と続き、45×(1+2+3+4+5+6+7+8+9)で求められる。答えは45×45で2025。悩ましい数字のパズルはさておき、2025年は九九の家族全員集合の記念年。どうか、いくつもの家々の幸が掛け合わされる新年に。<2025・1・5>