草津・虚偽の性被害告白騒動 「はじめは冗談かと思った」 “加害者”から“被害者”になった町長の戦いの軌跡
群馬県草津町の町長室で、黒岩信忠町長(77)と性的関係を結んだと虚偽の告発をした元町議の女性ら3人に対して、黒岩町長が名誉毀損で訴えた裁判で、前橋地裁は今年4月、女性らに275万円を支払うよう命じる判決を下した。 【動画】肉体関係を持ったとされた町長室
2019年に性暴力の「加害者」として告発されてから4年半。その間、一転して虚偽告白の「被害者」となった黒岩町長に、一審を終えて事件を振り返ってもらった。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●「我ながらよく戦ってきた」
ーー前橋地裁は、虚偽の告発をした元町議の新井祥子氏(55)に275万円を、新井氏の告発を電子書籍に載せたライターの飯塚玲児氏(57)には新井氏と連帯して110万円の支払いを命じました。別の元町議、中澤康治氏(89)に対する請求は棄却されました。 冤罪を晴らすためにものすごいエネルギーを使いました。町長としての公務をする中で裁判にも対応しなければいけませんでした。お金もかかります。普通の人なら泣き寝入りで終わってしまったかもしれません。死んでしまうこともあると思います。 よく戦ってきたなって、我ながら自分で思っています。世の中には冤罪のまま陰に隠れて生きている人もいるでしょうし、逆に性被害を受けて言葉を出せない人もいると思います。私は草津町のため、家族のため、そして最後に自分のために戦ってきました。 告発後に『草津温泉には行かない』というキャンペーンが起こるなど、ものすごいバッシングを受けました。世の中やインターネットの世界は怖いんだなと思いました。その中で、狭い草津の町民は私を信じてくれました。それがせめてもの救いでした。 私は控訴するつもりはなかったのですが、新井氏側が控訴したので、相手が何を不服としているかを把握して、その内容によっては付帯控訴も辞さないつもりです。
●取材を受けないまま暴露本発売「はじめは冗談かと」
ーー新井氏が黒岩町長と肉体関係を持ったという内容が書かれた電子書籍が2019年11月に発売されたことが騒動の発端となりました。 2019年11月15日に町民から『何か変なものが出た』と聞いて、本の内容を初めて知りました。ちょうどその日は議会があった日だったので、議員たちが集まってみんなと食事していたのですが、ある議員が電子書籍の内容を読んでくれたんです。 それで、新井氏が町長室で私と肉体関係を持ったと書いてある文章を見て、『ん、何の話?』って思うじゃないですか。はじめは冗談かと思いました。ただ、私は本能的にこれは大変なことになると思って、その場ですぐに警察に電話して被害届を出したいと言いました。 そして、私が人とちょっと違ったのは、逆にマスコミに連絡したことです。事前に言っとくけど全くの嘘だと。嘘だからこそ通報したんだとマスコミに言いました。 その2カ月前の2019年9月19日にライターの飯塚玲児氏が取材に来ました。しかし、この時は時間湯(草津温泉で伝統的に続く入浴法)に関する取材で、新井氏に関する取材ではなかった。その時点で新井氏の告白を受けていながら、飯塚氏は私に何の取材もしなかったんです。 インタビューの時に『実は新井さんからこういう話を聞いてますけど、本当ですか?』って聞いてきたら反論できた。