中国が仕掛ける認知戦、戦場はショート動画…台湾人ラッパーが潜入取材で手口を暴く!狙われたインフルエンサー
■ 潜入取材で明らかになった認知戦の一端 陳柏源は今年25歳、祖籍が福建省泉州で台湾・台中出身の台湾籍ラッパーだ。13歳の時、河南省の少林寺に武術留学し、高校になってから米国に留学、その後2018年に、中国共産党統戦部直属の華僑大学法学院に転校した。 この経歴から、彼は最初から親中派で共産党統一戦線部の工作員だ、という目で見られており、実際そのようにふるまってきた。 だがドキュメンタリーで彼が語ったところによると、台湾で義務兵服役後、仕事で中国に渡ったときには、すでに在中国台湾人インフルエンサーに潜入取材するつもりで連絡を入れたのだという。また過去に一緒に仕事をしたことのある福建省の統戦部工作員2人に対しても取材し、台湾ネットインフルエンサーを取り込む手口を探ったという。 ドキュメンタリーでは、福建省武夷山統戦部の工作員が電話越しに、陳柏源が組織した台湾インフルエンサーチームに対して訪中接待を提供する話をしている。人気インフルエンサーに対しては高額の交通費補助などを提供するという。その代わりに、台湾に帰った後、中国での体験を発信してほしい、としている。 また、福建省「海峡導報」の大物記者、林靖東にも電話をしている。陳柏源はドキュメンタリーの中で、彼女から、民進党政権を攻撃するラップを作曲作詞し、民進党を批判して台湾の政治環境を変えてほしいと依頼を受け、そのために必要な大量のニュースデータを提供してもらったことを暴露した。微信の彼女とのチャット記録を証拠として示している。 林靖東は、陳柏源との電話で、陳柏源自身と彼が中国に連れてきたインフルエンサーに対して、これまで通り台湾事務弁公室と仲介し長期的に面倒をみると約束していた。また具体的に大人気台湾インフルエンサー、鍾明軒の名前を出すなどして、現在も多くの大物台湾人インフルエンサーが統戦部の工作に協力していると明かしている。 林靖東は海峡導報で25年記者を務め、台湾に2度駐在している。彼女はドキュメンタリーで工作員として名指しされたことについてフェイスブックで反論。鍾明軒を擁護しつつ、陳柏源に裏切られたことへの恨み節を並べた。 だが、中国公式メディアの記者が、ファイアーウォールを越えてフェイスブックに直接反論を投稿するということ自体がかなり珍しいことから、この反論自体が政治的任務であろうという指摘もある。 ちなみに、鍾明軒は、中国への旅行は自費でいったと弁解し、統戦部への協力を否定している。だが、ネットでは彼に対するバッシングが相次いでいる。