かつてガソリンでいうハイオクに相当する軽油があった! いまや姿を消した「プレミアム軽油」とは
硫黄分を除去した軽油が販売されていた
ガソリンにはハイオクとレギュラーという2種類の商品が用意されている。これはオクタン価(=燃えやすさであり、燃えにくいほうが一気に燃やしやすく熱効率が高くなる)の違いがある。レギュラーに洗浄剤などの添加剤を配合することで、燃焼室付近にデポジット(燃えかす)が堆積しにくいなど、ハイオクガソリンは別名プレミアムガソリンとも呼ばれる、高性能で高品質なガソリンだ。 【写真】トルクあって良さそうじゃない? ディーゼルのレーシングカーが希少種なワケ 一方、トラックやバスに代表されるディーゼルエンジンに使われる軽油は、現在のところ1種類のみ。しかし、かつては軽油にもプレミアムと呼ばれる商品が存在していたのをご存じだろうか。 欧州などでは、レギュラーとハイオクの2種類ではなく、レギュラーとスーパー、プレミアムといったように、さらに細かく燃料が分類されている。最近ではバイオメタノールの配合量によっても、いくつも燃料がわかれている。 ディーゼル用の軽油に関しても乗用車用とトラック用では税率が異なるため区別されている国もある。 硫黄分はエンジンによって燃焼して酸化し大気に放出されると、光化学スモッグや酸性雨の原因になる。極端な話、雨に硫酸(H2SO4)を混ぜるようなものだ。従来、軽油にはこの硫黄分がわずかながら残っており、これがエンジンや排気系を傷めるとともに、大気汚染の原因となっていたことから、脱硫化(硫黄分を取り除く)を進めてきた。その過程で、完全に硫黄分を除去したサルファーフリーな軽油がプレミアム軽油として販売されたのだ。
現在はサルファーフリーな軽油が普及
かつて日本で販売されていたプレミアム軽油はハイオクガソリン同様、通常の軽油よりわずかに高かった。それでもセタン価(ガソリンのオクタン価に相当)を向上する添加剤や防錆剤、煤が付きにくい洗浄剤などが配合されていることから、一部のディーゼル車ユーザーには好評だったようだ。 しかし、普通の軽油も完全脱硫化が実現されると、プレミアム軽油のメリットはあまりなくなり、10年ほど前に元売り各社の商品ラインアップから消滅してしまった。 燃料をたくさん消費するトラックにおいては、リッターあたり数円でも価格差があれば毎月の燃料代に大きく影響する。輸入車の高級ディーゼル車くらいしか需要がなかったため、採算が合わなくなってしまったのだろう。 プレミアム軽油は現在もう販売されなくなってしまったが、サルファーフリーな軽油が完全に普及したのだから、むしろそれを喜ぶべきなのだろう。しかし、現在の軽油価格はかつてのプレミアム軽油より高いのだから、存在したとしてもプレミアム軽油はどれほどのユーザーが選ぶことか。 かつては、たとえ高級車であっても「経済的だからディーゼルを選ぶ」というニーズも高かったが、ここまで高くなった燃料にわざわざプレミアム性を求める層はほとんどいないだろう。それならガソリン車でハイオクガソリンを利用するハズだ。 トラックにおいては、そのトルクの太さと経済性から、当分はディーゼルエンジンでハイブリッド化などが進むことになるはずだ。
トラック魂編集部