世界水準の1000分の1以下!石破茂氏が憂うシェルター後進国ニッポン「防災省を設置せよ」
政治資金パーティーの裏金問題により不信感が募る自民党政権。 毎日新聞社などによる世論調査で岸田政権の支持率はついに20%を割り始めた。これは’12年に与党に復帰してから最も低い数字だ。ダッチロール状態にある自民党において、「次期首相にふさわしい政治家」ナンバーワンの評価を受けているのが石破茂議員・元防衛大臣(67)だ。 【画像】こ、これなら安心かも……! スイスは100%、アメリカでも85%も普及しているシェルター 石破氏といえば、彼が20年前から訴えていた政策で進展があった。小池百合子都知事が去る1月26日の記者会見で、都営地下鉄・麻布十番駅構内に設置されている防衛倉庫に弾頭ミサイルの飛来に備えた「シェルター」を整備する方針を表明したのだ。 日本のシェルターの普及率はわずか0.02%。 世界に目を転じれば、スイスやイスラエルはなんと100%、ノルウェーも98%でアメリカは85%、ロシアは78%、イギリスは67%と日本の普及率は突出して低い。富裕層が家庭用に購入する程度だ (日本核シェルター協会の調査データ)。 石破氏によると「日本では、国家中枢機関でも明示的に核シェルターを意図した施設はない」という。 「次期首相を熱望される男」に日本のシェルター構想について聞いた。 「まだ具体的なことは決まっていないようですね。私は核シェルターを全国に設置すべきだと考え、5年くらい前からは関係省庁に対して『世界各地のシェルターを調査すべき』と言い続けてきました。なんとか内閣官房の一部で調査は行われましたが、議論は進まず、まったく具体的な姿が見えてきませんでした」 石破氏によると、地震や大規模火災、水害などの避難所の体制についても現在の日本は先進国の中で極めて悪条件にあるという。 「避難所の体制は関東大震災の時からあまり変わりません。『体育館に雑魚寝』するなんて先進国で日本だけです。能登半島地震が発生して、改めて海外の避難所について調べましたが、たとえば、欧州における有数の地震国であるイタリアでは、’92年に非常事態の予測・防止・管理などを担うイタリア市民保護局という首相隷下の国家機関が設置されました。地震発生時には同庁が指令を出し、48時間以内に避難所へコンテナ型トイレ、簡易テント、キッチンカー、簡易ベッドが届けられます。 『家は倒壊し家族は亡くなり、仕事はどうなるかわからない。そんな人々にこそ国家は最大限の支援をし、一日でも早く希望を取り戻してもらうべき』という考えのもと、温かくおいしい食事、プライバシーが保たれるテント、快適で安眠できる簡易ベッドをいち早く提供するのです。日本国民にも『健康で文化的な生活をする権利』が憲法で保障されていて、その義務を負うのは政府のはずです」 なぜ、日本の国民保護は海外に遅れをとっているのか。 「シェルターも地震に備える避難所の議論も一緒で、戦時中に公布された防空法の反省から学ぶべきです。防空法は『空襲があれば市民は火を消せ、地下などに逃げてはいけない』という法律でした。戦後、あまりの日本の民間人の犠牲の多さに疑問を持ったアメリカが調査をしたところ、この防空法が一因だったことがわかりました。こんな法律が平気でまかり通っていた日本社会の体質を我々は無意識で引き継いではいないだろうか。国家にとって国民はなにより大切だということを忘れてはいないだろうか、ということです」 「国民保護」を効果的に実現する方策として、石破氏は「防災省」の新設の必要性を語った。 「シェルターの議論に関しても同様ですが、私は新しく防災省を設置し、避難所・シェルターに国家予算を割り振るべきだと考えます。やはり一つの省庁として独立していなければ、安定的に予算が取れませんし、施策や知識の継承・蓄積も難しいからです」 防災省が存在感を増しそうな一大イベントが今秋、行われる。アメリカ大統領選挙だ。石破氏は「このままだとトランプが当選する」と見ている。 「トランプ元大統領が再選した場合、かつてのジャクソン元大統領(1829~37年、アメリカ合衆国第7代大統領)のような、強権的な大統領をめざすのかもしれません」 トランプ元大統領もジャクソン元大統領も、反エリート主義を掲げた強権的なポピュリスト(大衆主義者)である。トランプ元大統領はしばしば自らをジャクソン元大統領に重ね合わせ、ホワイトハウスの執務室にジャクソン元大統領の肖像画を掲げているという。 「それでも前トランプ政権では、現実的な考え方をする側近が多くいて、なんとかトランプ大統領と現実的な政策のすり合わせをしていました。今回、もし再選されたら、どうなるかわかりません。ガザに対してもウクライナに対してもどのような選択をするか、まったく予測できません。対日政策については、トランプ大統領の『同盟国に負担を求める』という方向性は変わらないでしょう。我々はそれを奇貨として、日米安全保障条約・日米安全保障体制が果たして今のままで持続可能なのか、再考してもいいのではないでしょうか」 混迷を極める岸田政権にとっての「シェルター」はあるのか。それは早期の解散総選挙となるのか。筆者の問いに石破氏はこう続けた。 「解散総選挙があるのか、すべきなのかはわかりません。岸田政権にとっての『シェルター』も思いつきませんが……『リセット』はあるかもしれません。 『黒い霧事件』の時、自民党は 国民に信を問うて勝ちました。ただ現在、このまま解散総選挙に打って出て自民党が勝てるような状況にはありません。我々は最大限の自浄能力を発揮すべきなのではないか。 党綱領の制定、党首選挙のルール、意思決定のあり方、政党支部数、政党助成金使途の明確化、各級選挙の候補者の選定方法などを定めた政党法について、早急に議論を開始すべきものと考えます。『自民党はこのように変わります』と国民にはっきり示す必要があります」 ’66年、政界で『黒い霧事件』と呼ばれる不祥事が相次ぎ、複数の自民党員が逮捕され、野党から究明と早期の解散総選挙実施が求められた。当時の首相だった佐藤英作氏は野党に対して党首会談を申し入れ、12月27日に衆議院解散に打って出た(「黒い霧解散」)。翌年1月に行われた第31回衆議院議員総選挙では、自民党の議席数は6程度減少したものの予想外の善戦をし、安定多数を維持し、第2次佐藤内閣が発足した。 当時の佐藤内閣は「国民の民意」に聞く耳を持ったことが功を奏したが、「聞く力」をアピールしてきた岸田首相は崖っぷちに立たされた今、「民意」を受け止めることができるのか。 撮影・文:深月ユリア 慶応義塾大学法学部政治学科卒業。「深月事務所」代表。数々の媒体で執筆し、女優、モデル、ベリーダンサー、FMラジオパーソナリティーとしても活動。動物愛護活動も精力的に行い、テレビ神奈川の番組「地球と共生する、アニマルウェルフェア」を自社でプロデュース
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