既存モデルの新車の「バックカメラ」が5月から義務化されます 本当にバック事故対策になるのでしょうか?
義務化されるバックカメラ
自動車の安全性を向上させるための取り組みは世界共通である。そのひとつが「バックカメラ」の義務化だ。 【画像】画面ちっさ! これが42年前の「カーナビ」です(計20枚) バックカメラとは、車両後方を視覚的に表示するために車両に搭載されるカメラである。主に車両の後部に取り付けられ、バックや駐車の際にドライバーに後方視界を提供し、衝突や接触を防ぐのに役立つ。死角や障害物の検知にも使用され、駐車支援システムと併用されることもある。 国際連合欧州経済委員会の自動車基準調和世界フォーラムは、新たに「後退時車両直後確認装置に係る協定規則(第158号)」を採択した。これを受け、国土交通省は2021年6月、国際基準を導入するため、保安基準等を改正した。 改正された基準では、 「後退時車両直後確認装置(バックカメラ、検知システムまたはミラー)を、自動車に備えなければならないこと」 とされた。つまり、バックカメラの使用義務化が適用されたのだ。その結果、新型車は2022年5月から、既存モデルの新車は2024年5月から、改正された保安基準に適合しなければならなくなった。つまり、それぞれの時期以降の新車にはバックカメラを標準装備しなければならないのだ。 安全性向上のためとはいえ、なぜこれほど世界的にバックカメラの装着が推進されているのだろうか。
標準装備が進むワケ
バックカメラの標準装備化が進んでいる理由は、ずばり人命に関わるからだ。2014年の米道路交通安全局(NHTSA)の報告によると、後退時の事故による死亡者数は年平均210人、負傷者数は1万5000人。死亡事故の31%を5歳未満の子どもが占め、70歳以上の大人は26%を占めている。 日本ではどうか。交通事故総合分析センターが2019年1月に発表した「交通事故分析レポート」によると、2007(平成19)年から2017年までの10年間の後退事故による死亡重症者数は1万1598人で、弱者(二輪車乗員、自転車等乗員、歩行者)77%のうち57%が歩行者だった。被害者の年齢については、幼児よりも高齢者の方が多く、日本の後退事故の実態が浮き彫りになっている。 後退事故の主な原因は、不注意や死角による安全確認不足である。バックカメラを使用することで、見えない死角も含めて後方の状況を確認することができ、後退時の事故防止に効果的である。 交通事故総合分析センターのリポートでは、 「平成23年以降は継続して装着率が上昇し続けており、近年の後退事故件数の低減にはこの効果が寄与していると考えられます」 としている。バックカメラ設置義務化に“死角”はなさそうだが、問題はないのだろうか。