歴代でも長い? “アイドル寿命”の定説を覆した「AKB48」の戦略
アイドルの全盛期は「3~5年」?
今後のAKB48の動向には興味がそそられるが、そもそも歴代のトップアイドルたちを見てもアイドルの“寿命”は短く、AKB48はその歴史上において異質な存在と言える。 「80年代を代表する人気アイドルだった松田聖子さんでいえば、80年の『風は秋色』から88年の『旅立ちはフリージア』まで24作で音楽チャート1位を記録していますが、85年6月に最初の結婚をしているので、アイドルという立場での絶頂期は、じつは5年ほどと言われています。同じく人気アイドルだった中森明菜さんや小泉今日子さん、中山美穂さんなどもアイドルとしての絶頂期は3~4年ほどというのが大方の見方です」 ソロアイドルに関しては、実力的な要素以外に一人の女性として恋愛や結婚といったプライベートの事情が絡んでくるので、旬が短いのは仕方のないところもある。 その点、グループアイドルはメンバーの入れ替えなどもあり、“アイドル寿命”は比較的長いとされるが、それでも「おニャン子クラブ」は実質的な活動期間は2年ほど、「モーニング娘。」も『抱いてHOLD ON ME!』を発表し、「紅白」初出場を遂げた98年からヒット曲の『ザ☆ピ~ス』をリリースした01年あたりまでの4~5年がピークとされている。 このあたりの“人気のピーク”に関する見解はさまざまで一概には断定できないが、例えば、AKB48が初めてシングルチャート1位を記録した『RIVER』は2009年10月の発売だ。他のアイドルやアイドルグループに比べて、AKB48が息が長いという点については大方の賛同を得るのではないか。
「会いに行ける」「総選挙」「姉妹グループ」
となると、気になるのはなぜAKB48は長期間にわたって人気を維持できているのかということだが、前出のアイドル誌編集者はこう語る。 「やはりファンとの親近感を大切にしているのがポイントだと思います。『AKB48』以前のアイドルは、基本的には芸能プロやレコード会社発信で、ある程度完成された段階で売り出される“商品”でした。一方、『AKB48』のメンバーはオーディションやレッスンは経ているものの、“商品”としてはかなり未完成の段階で、大々的なプロモーションなど大掛かりなプッシュを受けることもなく、劇場公演のステージに立つ。そこから人気が高かったり、ファンのウケが良いコが選抜メンバーとしてテレビなどのマスのメディアで露出していくわけですが、ベースが距離感の近い劇場なので、ファンからすると成長過程をより分かりやすく楽しむことができるし、自分が発掘したような感覚も抱きやすく、応援にも熱が入る。加えて、握手会などで直接会話や交流もできるので親近感もより増します。常設劇場を持ち、日々の劇場公演に力を入れている“会いに行けるアイドル” というコンセプトの勝利ではないでしょうか」 大ブレーク以降、劇場で主要メンバーに会うことはなかなか難しくなったものの、会いにいけるアイドルというコンセプトは斬新だった。さらに、そうしたメンバーの成長過程を如実に表現するシステムとして効果を発揮しているのが、「総選挙」だという。 「厳密に、総選挙の結果がそのままアイドルとしての成長に比例しているわけではないですが、一つの目安にはなるし、ファンからすれば投票という形で応援しているコのサクセスストーリーを共有できるわけです。このあたりは芸能界やスポーツ界で古くからある“タニマチ”に近い感覚なのかもしれませんね」(同アイドル誌編集者) また、メンバー個々人のライバル関係はもちろん、AKB48グループ全体としては「SKE48」や「NMB48」、「HKT48」といった姉妹グループごと、さらに各グループのチームごとの競争もあり、メンバーたちが切磋琢磨し合っている点も見逃せない。