「間違いなく国の形を変えた」...国鉄の民営化に隠された知られざる衝撃の真実
安倍元首相が国士と賞賛した葛西敬之が死の床についた。政界と密接に関わり、国鉄の民営化や晩年ではリニア事業の推進に心血を注ぎ、日本のインフラに貢献してきた。また、安倍を初めとする政治家たちと親交を深め、10年以上も中心となって日本を「事実上」動かしてきた。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 本連載では、類まれなる愛国者であった葛西敬之の生涯を振り返り、日本を裏で操ってきたフィクサーの知られざる素顔を『国商』(森功著)から一部抜粋して紹介する。 『国商』連載第12回 『日本政界の「闇将軍」田中角栄がもみ消した!? 国鉄民営化のウラに「隠された」誰も知らなかった衝撃の「秘密」』より続く
見直されてこなかった民営化の実態
国鉄改革とはいったい何だったのか。運輸鉄道行政に携わってきた関係者のあいだでは、そんな素朴で根源的な疑問が今でもときおり話題にのぼる。 1980年代、日本の中曽根康弘が英首相のマーガレット・サッチャーや米大統領のロナルド・レーガンの唱える官から民へという市場開放路線の潮流に同調したのは、巷間指摘されている通りであろう。 わけても米大統領と「ロン」「ヤス」なる愛称で呼び合う盟友関係で知られた親米の首相はレーガノミクス、市場開放要求に応じて三公社五現業の民営化を打ち出した。その中曽根行革のメイン政策が国鉄の分割民営化であり、それは同時に国労潰しでもあった。 いまや市場開放政策は行き過ぎた新自由主義とたびたび非難される。その本家である米英は市場原理主義による競争の結果として生まれた巨大企業に歯止めをかけてきた。古くはグラハム・ベルの興したベル電話会社を発祥とするAT&Tが米国の通信市場を独占し、何度も分社化を迫られてきた。最近では、GAFAと呼ばれるIT業界のマンモス企業4社も独占禁止法や税制面で米当局の締め付けに遭っている。 つまるところ、政治の思惑が働く国策である。民営化にしろ、分社化にしろ、それが行き過ぎれば、軌道修正しなければならない。日本の国鉄改革もまさに国策だ。しかし、その見直しはおろか、検証すらほとんどなされてこなかった。