セウォル号沈没事故から10年 「子の姿、今も鮮明 思い出すほどに痛みは大きく」 韓国各地で追悼式典
【ソウル山口卓】韓国南西部の珍島沖で、修学旅行中の高校生ら304人が犠牲となった旅客船セウォル号沈没事故から10年となる16日、全国各地で追悼式が行われた。一部の遺族らは船で事故現場の海域を訪れて献花した。 【写真】セウォル号の船体を前に開かれた追悼式典 生徒たちの高校がある京畿道安山市であった追悼式には、遺族や市民など計約3500人が参列。犠牲者らの映像とともに名前が読み上げられた後、参列者全員で黙とうをささげた。康徒衡(カン・ドヒョン)海洋水産相は追悼の辞で「政府はセウォル号の悲劇を記憶し、痛みを大きな教訓として災害や事故のない海をつくる」と誓った。 一方、京畿道の金東兗(キム・ドンヨン)知事は、政府の謝罪や再発防止策が不十分だと指摘し「304人を永遠に記憶する。最後まで諦めない」と訴えた。 聯合ニュースによると、現場海域を訪れた遺族らは大声で犠牲者の名前を叫び、体を支え合いながら涙を流した。犠牲者の母親の一人は白い菊の花を海に投げ入れ「子どもの姿がまだ鮮明に残っている。思い出すほどに痛みは大きくなっていく」と語った。 遺族会は15日にソウルの外信記者クラブで会見。金鐘基(キム・ジョンギ)運営委員長は2022年10月の梨泰院(イテウォン)雑踏事故に触れ「安全な社会のために努力してきたが、梨泰院の惨事が起きた。むなしさと防げなかった国に怒りを覚える」と述べた。 セウォル号沈没事故を巡っては、救助の遅れや船会社の安全を無視した船体改造など複数の原因が指摘されており、遺族は政府資料の公開や政府関係者の処分を求めている。