【皇室コラム】両陛下の励まし届いた被災の“人間国宝” 「技術を持った人がいれば輪島塗は残る」
ふと前さんは手に入れたばかりの細いノミを研ぎ始めました。 「両陛下の映像は本当にありがたく、頑張らなければいけないと思いました。技術を持った人がいれば輪島塗は残ります。今は避難して仮の所ですが、これから展覧会もありますので、続けてやろうと思います」 静かな語り口がにわかに熱を帯びています。自分に言い聞かせているように聞こえました。
即位から5年。コロナ禍で制約が多いなか、両陛下はオンラインという新しいやり方で交流されてきました。誕生日の映像に映し込まれた輪島塗と珠洲焼は、なかなか被災地に入れない状況での気配りだったでしょう。それをしっかりと受け止める前さんを取材して、お二人がそっと発した励ましの力を確かに見た思いです。 (日本テレビ客員解説員 井上茂男)