閉業する日田市の老舗・石松建具店、職人荒川さんが集大成の作品 木枠を球状に組み立てた「地球時間」
大分県日田市日ノ隈町の老舗、石松建具店(石松節生社長)が今月末で閉業する。仕事の依頼は絶えないものの、2年前に石松社長(75)が体調を崩したため。同店の職人荒川栄太さん(48)=1級技能士=は転職する予定で、集大成として建具の技術を駆使して制作した「地球時間」が市役所1階ロビーに展示されている。 店は終戦直後に石松社長の父勇さん(故人)が始めた。現在は石松社長と妹文子(あやこ)さん(70)が共同で経営。これまで県知事公舎の扉や長浜神社本殿(いずれも大分市)など、県内外の数々の建具を手がけてきた。 石松社長は「ベニヤでなく本物の木にこだわり、数えられないほどの建具を作ってきた」、文子さんは「既製品と違い、多様な建具が完成した姿を見るのが楽しみだった」と語る。 荒川さんは2002年に入社。当時は職人が4人いたが、次々に引退して20年からは荒川さん1人になった。職人を続けようと模索したが、年齢を踏まえ、来年1月から介護の道に進むことを決意したという。
「地球時間」は木枠を球状に組み立てた直径約1・2メートルの作品で、200以上の国旗を時計の文字盤のようにして国と国がつながっていることを表現。同市高瀬の力峰彫刻の協力で回転する細工も施した。 「地球には戦争など止まらなければいけない時間と、地球温暖化対応など動き出さなければいけない時間がある。そんな思いを込めた」と荒川さん。 元々は20年の全国建具展示会に出品する予定だったが、コロナ禍で展示会が中止に。店の閉業が決まり、途中でストップしていた制作を再開して完成させた。 来年1月末まで市役所に置かれ、2月1日からは同市上城内町の市複合文化施設アオーゼに展示される。 荒川さんは「職人を辞めるのは泣くほど悔しかった。新しい道で気持ちを切り替えて頑張る」と話している。