坂本花織はタンゴで表現を磨く「一番直さないといけないのは...」 千葉百音、島田麻央も新曲で躍動
【五輪につながるシーズンにしたい】 2017-2018年シーズンに、ブノワ・リショー氏に振り付けをしてもらい始めてから、入念なブラッシュアップや演技構成のアドバイスも受け、2022年北京五輪シーズンには五輪銅メダルと世界選手権制覇という位置までたどり着いた。 翌2022-2023シーズンからは「もっと違う世界に挑戦してみたい」と振付師を変更し、新たなジャンルに取り組んできた。その集大成が25歳で迎える2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪だと考えれば、その大舞台へ向けた最後の挑戦ができるのが今シーズンだ。 「今シーズンは五輪プレシーズンなので、次にしっかりつながるようなシーズンにしたい。もちろん結果も大事だけど、内容もしっかり。昨シーズンはミスやスピン、ステップの取りこぼしもけっこうあったので、今季はよりクリーンな演技をして過ごし、来シーズンにつながるようにしたいです」 公演初日の演技後にそう語った坂本は、2年後の大舞台に向け着実に歩みを進める。"冒険のシーズン"である今季への期待を膨らませるような演技を見せてくれた。
【伸びやかに舞った千葉百音と島田麻央】 一方、自分らしさを存分に発揮するプログラムを披露してくれたのが、シニア移行の昨季、四大陸選手権優勝、世界選手権7位と活躍した千葉百音(19歳/木下アカデミー)だ。 披露した新SPは『Last Dance』。千葉はこう説明する。 「先にフリープログラムを振り付けて、ショートはフリーと雰囲気がガラッと変るようなプログラムがいいなと考えた時、底抜けに明るい曲にしたいと思って。その時に『Last Dance』という曲があったのに気づいてこれにしました。 この曲は夜のクラブとかで思いきりはっちゃけて楽しもうという、今までとはちょっと雰囲気が違う曲だけど、曲の楽しさに負けないように私もしっかりとはっちゃけて踊るというのをテーマにして、底抜けに明るい表現っていうのを頑張りたいです」 出だしは柔らく優しさもある曲調。伸びのあるスケーティングで静かに滑り出すと、最初の3回転ルッツ+3回転トーループも安定感のあるジャンプを見せた。 つなぎも手の使い方に気をつけるだけでなく、膝を使って上下の動きの幅も広げる、計算された滑り。ダブルアクセルをしっかり決めてキャメルスピンを滑ったあとには3回転フリップを跳んだ。公演2日目は2公演ともノーミスの演技だった。 終盤はワクワク感と躍動感を感じさせ、ステップシークエンスはキレと大きさのあるのびやかな滑りで観客を魅了した。 「本番の演技はちょっと緊張してしまったけど、全体的にジャンプの調子としてはすごく仕上がっているほうだと思うので、このままシーズンに入っていけたらと思います。(新シーズンは)五輪プレシーズンなので、今以上にしっかり体力づくりをして、技術面もケガに気をつけながら。 4回転トーループももう少しで着氷できそうなところまではきているので、自分を鍛えながら練習をして、2年後の五輪に向けて熱い気持ちでスケートに向き合っていけたらいいなと思います」 今季は「素の自分をそのまま表現することが要だと思う」と言う千葉。伸びやかで素直な演技は、これまでとはひと味違った彼女の本質を見せてくれそうな期待感がある。 伸びやかさと言えば、今季は世界ジュニア3連覇を狙う島田麻央(15歳/木下グループ)も同じだ。披露した新SPは、ミュージカル『ウィキッド』の『Defying Gravity』。空を飛んでいる感覚を表現したいというプログラムだ。 2日目の昼公演では最初にトリプルアクセルを着氷し、続いて3回転フリップを跳ぶと、フライングキャメルスピンのあとには3回転ルッツ+3回転トーループをしっかり決めるノーミスの演技を見せた。 そのあとのステップシークエンスは大きい滑りのなかでも、リズムに乗って楽しそうに踊る雰囲気。相変わらずの安定感を見せながらも、心の底から躍動しているような演技は、15歳の彼女の素直な心のうちを表現するものでもあるだろう。 彼女の、新たな心の解放も今季の楽しみになってきた。
折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi