絵本型ケースに、アニメ&実写版を楽しめるセットも!ディズニー100周年記念パッケージを映画ライターが開封レコメンド
2023年に創立100周年を迎えたウォルト・ディズニー・カンパニー。これまでに『蒸気船ウィリー』(28)や『白雪姫』(37)、『シンデレラ』(50)、『美女と野獣』(91)、『トイ・ストーリー』(95)、『アナと雪の女王』(13)など、アニメーション史はもちろん、映画史に残る名作を数多く生みだしてきた。そんなディズニーのアニバーサリーイヤーを祝して、「ディズニープリンセス」、「クラシック短編アニメーション」、「ミュージカル」、「ディズニー&ピクサー」といった様々なカテゴリーで、コレクションしたくなるプレミアムなパッケージが発売中だ。ファン必携のこれらのアイテムの魅力を紹介するため、4人の映画ライターが開封レビュー。作品への思い入れとあわせて、推しポイントを語っていく。 【写真を見る】めくるたびかわいい!「ディズニープリンセス コレクション」に収められた、手描き風イラスト付き歌詞カード ■ディズニープリンセスが体現してきた“夢を叶える力”に勇気がもらえる「ディズニープリンセス コレクション」 ラベンダー色の装画がロマンティックな絵本型の大判ハードカバー。クリアケースからそっと取りだし、厚みのあるボードブックタイプのページをめくれば、見開きごとに2作品ずつ、全部で12のディズニープリンセスの物語を映し出すディスクが収められている。プリンセスたちの美しいイラストに加え、パステルカラーのディスクごとに、人気キャラクターたちが描かれているのも特別感たっぷり。ディズニープリンセスたちの数々の名曲を一挙収録したコンピレーション・アルバムと、かわいいイラスト付きのフルカラー歌詞カードも入っていて、プリンセスの世界に心ゆくまで浸ることができる。今年、ディズニー創立100周年を祝して作られた「ディズニープリンセス コレクション」は、永久保存版の贅沢なセレブレーション・アイテムだ。 また、『アナと雪の女王』と『アナと雪の女王2』(19)は、それぞれブルーレイとDVD、デジタルコピーがセットになったMovieNEXがDisney100 エディションで新登場。キャラクターが浮かび上がる透明アウターケースと特製アートカード付きの仕様も、ディズニーファンのコレクター心をくすぐってくれる。 クラシック・プリンセスといわれる『白雪姫』や『シンデレラ』から始まる、歴代のディズニープリンセスたちを眺めていると、100年というディズニーが歩んできた長い時の流れと共に、プリンセスのキャラクター像も少しずつ変化してきたことがわかって、感慨深いものがある。 魅力的なディズニープリンセスたちのなかでも、私にとって大好きなヒロイン1位の座に輝き続けるのは、『美女と野獣』のベルだ。映画が公開された当時、気が強くて、終始、自分の意志で行動していくベルのプリンセス像は新鮮かつ衝撃的だった。本の虫で、周囲からは少々浮いた風変わりな女性という設定も、それまでのディズニープリンセスのイメージとしては異色だったと思う。そんな彼女のお相手となるプリンスもまた、魔法によって変えられた野獣の姿はさておき、性格的にも頑固で粗暴。いわゆるプリンセスが一目で恋に落ちる王子様とは正反対のキャラクターだ。不完全な者同士ゆえ、出会った頃はお互いの言動にイラ立ち、反発し合っていた2人が、相手を思いやり、理解し合うことで、少しずつ歩み寄っていく姿は感動的で、ファンタジー作品でありながら、どこか現実の世界にも通じる等身大のラブストーリーを観ているようなリアリティがあって、ドキドキさせられた。 王子様に見初められるしとやかな美女から、自分で道を切り拓いていく強さを持った、しなやかな女性へ。イメージの変遷はあっても、個性豊かなディズニープリンセスたちに共通しているのは、みんな、どんな時でも夢を持ち続けていたこと。夢見るプリンセスたちが、夢を原動力に新しい未来を築いていく物語は、いままでも、そしてこれからも変わらず、私たちに大きな勇気を与えてくれるに違いない。(石塚圭子) ■ディズニーの歴史が感じられる「ミッキー&ミニー(&フレンズ) クラシック・コレクション」 ディズニーアニメーションの中心的キャラクターといえば、誰がなんと言おうとミッキーマウス。そんなミッキーと彼の恋人であるミニーマウスに焦点を当て、1928年以降に作られたアニメのなかでもキャラクターが見えるユニークな作品を集めたのが、「ミッキー&ミニー クラシック・コレクション」だ。特製アートカードが入っていたり、シルバーに輝く箱の豪華さも目につくが、ディズニーファンにとってうれしいのは『ミッキーのアイス・スケート』(35)や『ミッキーのハワイ旅行』(37)など初ブルーレイ化作品が5本も入っていること。さらに、『フィガロとフランキー』(47)のような、初ブルーレイ化だけでなく吹替版初収録の作品も。 またミッキーだけでなく、プルートやドナルドダック、グーフィーなど仲間たちに焦点を当てた「ミッキー&フレンズ クラシック・コレクション」でも『プルートのありがた迷惑』(49)など初ブルーレイ化作品が5本収録されている。 これらの作品を観ると、例えば「ミッキー&ミニー ~」ではミッキーというキャラクターの描かれ方の変遷がよくわかる。アメリカで初のトーキーアニメーションとなった『蒸気船ウィリー』では、船に乗り遅れたミニーをパンツにクレーンを引っ掛けて釣り上げて乗せるなど、荒っぽい助け方をしていたミッキー。だが、『ミッキーのアイス・スケート』では、スケートでコケかけたミニーにクッションをサッと差し出したりと、助け方も紳士的に。そう、続けて観ると、ミッキーが年を経てヒーロー化していくのがわかるのだ。 「ミッキー&フレンズ ~」に収録された、トレーラーハウスで暮らすミッキー、ドナルド、グーフィーの生活を描く『ミッキーの移動住宅』(38)では、車から外れて暴走したトレーラーハウスが崖から落ちそうになるのを、ミッキーが外に飛び出して足で抑えたりと大活躍。祈ることしかしないドナルドダックとは大違いだ。 また『ミッキーのアイス・スケート』には、ミッキーが滑る姿を正面から捉えたフルアニメーションの魅力全開の爽快感あふれる場面があるのだが、そういうアニメーションの魅力を追求したのがディズニーの短編アニメーションのおもしろさ。『ミッキーのハワイ旅行』でもサーフィンに挑むグーフィーのシーンで人格を持つ海が登場するが、この一連の場面は『モアナと伝説の海』(16)の原点のようにも思える。そういうのちのディズニー作品の原点探しができるのもクラシックのおもしろさなのだ。(横森文) ■アニメーション版と実写版の観比べが楽しい!「ミュージカル・MovieNEX コレクション」 ディズニー・アニメーションの歴史を振り返った時、そこには必ずと言っていいほど名曲の数々がキャラクターや映像とセットになって記憶に甦ってくる。さらに、ミュージカルともなれば、何曲ものナンバーと共に心ときめく度数がアップするわけで、ディズニーのミュージカル・アニメーションは、映画の一つのジャンルと断言してもいいほど。 そのミュージカル作品のなかで個人的に最高の一作を聞かれたら、やはり『美女と野獣』を挙げないわけにはいかない。アニメーション版をリアルタイムで観た時は、主人公2人だけの舞踏会のシーンの、めくるめく映像と音楽の相乗効果に全身が震えたことがいまも鮮明に覚えている。そして実写版でのあまりの再現度に、時を超えて感動と喜びが再び押し寄せてきたことを忘れられない。 ただし今回のパッケージになった4作を眺めると、最も重要な作品として輝いているのは『シンデレラ』かもしれない。かつて私は開園間もない東京ディズニーランドで、ショーやパレードのダンサーをしていた。共演者としてアメリカから来たダンサーが有名なキャラクターを演じていたのだが、最も近寄りがたかったのがシンデレラだった。ほかの親しみやすいキャラクターと違って、特別なオーラを放つシンデレラは、ディズニーの原点である「夢」と「魔法」を体現していたのだろう。『シンデレラ』のなかの名曲、「夢はひそかに」がパレードやショーで様々にアレンジされて使われたことも思い出深いし、パークの中心にあるステージでのキャッスルショーで踊った時は、背後のシンデレラ城が異世界へ導いてくれた気がした。現在もディズニー作品のオープニングに登場するシンデレラ城は、夢の世界へ誘(いざな)う役割を果たしており、やはり『シンデレラ』は特別な作品なのだと信じている。 今回のパッケージを開くと、両面にそれぞれアニメ版と実写版の写真が配置され、名シーンの比較を一瞬で楽しめ、いかに忘れがたい名作なのかを改めて伝えてくれる。両方のバージョンを観直したくなるのはもちろんだが、その美しいレイアウトや上品なカラーによって、パッケージを手に取るだけでテンションが上がるという意味で、いつまでも手元に置いておきたい逸品なのは間違いない。(斉藤博昭) ■先鋭的なクリエイティブ!『リメンバー・ミー』などピクサー5本のMovieNEXが「Disney100 エディション」に 創立100周年を迎えたウォルト・ディズニー・カンパニー。その根幹事業である映画、それもウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ(以下ディズニー)を主軸としたアニメーション映画の事業は、間違いなく世界中のアニメーションクリエイターを育てたと言っていい。その最たる例は、ピクサー・アニメーション・スタジオ(以下ピクサー)だ。アニバーサリーイヤーのMovieNEX限定エディションに、ピクサーの作品群も名を連ねているのは、もはや「ピクサーなくしてはディズニーも語ることができない」から。ディズニーとピクサーは最高の兄弟姉妹関係にあるのだから。長年ピクサーとディズニーを取材してきた筆者からすると、この関係ほどポジティブな相乗効果を発揮したものは見たことがない。 ご存じの通りピクサーは、そもそもアニメーション専門のスタジオではなかった。ルーカスフィルムの特殊効果部門であるインダストリアル・ライト&マジック(ILM)の一部門として、数々の実写映画のCG、VFXを担当していたことからキャリアが始まる。1986年にILMから独立し、CGのソフトウェアを開発・販売する「ピクサー」として再出発。1991年のディズニー作品『美女と野獣』で、映像のルネッサンスとまで言われた劇場用アニメーションにおけるCG効果の開発などで名を挙げると共に、ディズニーとよきパートナー関係を結ぶことになったのだ。そう考えると、ウォルト・ディズニー・カンパニーの100年中、3割強程度もの時間を、ディズニーとピクサーは二人三脚したことになる。 ピクサーの名が一般に広く知られるようになったのは、1995年に発表し大ヒットを記録した『トイ・ストーリー』。その後の大ヒット、映画賞総なめの傑作の連発に関して言葉は必要ないだろう。圧倒的なブランド力を持ち始めたピクサーは2006年、様々な理由からウォルト・ディズニー・スタジオの子会社として、より深くディズニーとの協業を始める。 この協業によって素晴らしい副産物が生まれた。ダイバーシティ・インクルージョンだ。家父長的価値観の強い古いおとぎ話の世界を題材にしてきたディズニーも、作品を時代と共にじわじわと変革してきたが、ピクサーはそもそもの出自が違う。彼らはテックカンパニーから始まった、最先端の技術と価値観を持ち合わせたスタジオ。造り手がいまを生きる人々だからこそ、常に「誰も取りこぼさない」ダイバーシティを意識したキャラクターとストーリーで魅了している。いい例は『リメンバー・ミー』(17)だろう。メキシコを舞台にしたラテンのカルチャー、「死者の日」の死生観など、大人でも理解が難しいそれらを子どもにもわかりやすいストーリーに昇華した作品だ。 この作品が作られた2010年代のディズニー作品は『塔の上のラプンツェル』(10)、『ズートピア』(16)、『アナと雪の女王』などなど。MovieNEX限定エディションとしてリリースされたピクサーの代表作を改めて観ることで、ディズニーの変革、ピクサーとの協業の歴史をも理解することができるだろう。(よしひろまさみち) ディズニー100周年記念パッケージには、もちろん今回紹介した作品以外のタイトルもラインナップされている。新たな装いとなった名作たちの記念パッケージをコレクションに加え、ディズニーと歩んできた思い出に存分に浸ってみてはいかがだろうか? 構成・文/サンクレイオ翼