専門家が指摘「紅麹の健康被害」で表出する“重要な視点” 2014年に欧州で健康被害の報告、規制する国も
紅麹とは、米などの穀類に紅麹菌を繁殖させて作られるもので、1000年以上前から発酵食品や、食品の着色料として利用されてきた。 日本では沖縄の珍味、豆腐を紅麹と泡盛などで発酵させた食品「豆腐よう」などでも知られるほか、紅麹色素として、さまざまな食品に広く用いられている。 また、紅麹に含まれる「ロバスタチン」という成分には、コレステロールを低下させる作用があるとされ、紅麹由来の健康食品なども多く販売されている。今回、問題が指摘されている小林製薬の「紅麹コレステヘルプ」も、「悪玉コレステロールを下げる」とうたっている。
一方、紅麹菌の中には「シトリニン」というカビ毒を作るものもあり、腎臓の病気を引き起こすおそれがあることがわかっている。そのため、EC(欧州委員会規制)が、サプリメント中のシトリニンの基準値を定めている。 ■紅麹は日本古来の麹とどう違うのか では、紅麹は日本古来の麹とどう違うのか。 前出の前橋さんによると、麹の製造に使われるカビを総称して「麹菌」というが、実際、麹菌は分類上いくつかの菌種に分かれているという。
日本でもっとも多く使用されている種類は、「アスペルギルス属」に分類される「アスペルギルス オリゼー」というもの。日本酒やしょうゆ、みそ、みりん、甘酒などに使われている菌で、これまで健康被害が報告された例はない。 対して、紅麹菌が属するのは「モナスカス属」に分類される菌種で、紅麹は中国や台湾の腐乳(ふにゅう)や、米を紅麹で発酵させてつくる紅老酒(こうろうしゅ)や紅露酒(こうろしゅ)などに使用されている。
紅麹を使った日本の代表的な食品は前出の豆腐ようぐらいで、日本ではそこまでメジャーに広がっている発酵食品はない。紅麹もまた、発酵食品としてはこれまで健康被害の報告例はなかった。 小林製薬は、紅麹を用いた健康食品は、そもそもシトリニンを合成する遺伝子がない紅麹菌を使用しているとする。また、今回の健康被害の報告を受け、成分を分析したところ、腎臓の病気を引き起こすおそれがあるカビ毒「シトリニン」は検出されなかったともしている。