東京五輪へ向けて全日本女子バレーが抱える6つの問題点
物足りない攻撃面
大山さんは攻撃面ではまだまだ物足りなさが残るとも指摘する。 「バックアタックは、だいぶ増えました。でも、新鍋選手が入ると、守備が非常に堅くなるのですが、その一方で、バックアタックという選択肢が消えてしまっていました。新鍋選手もバックアタックを打てない選手ではありません。打とうとする姿勢だけでいいのです。常に4枚の選択肢を持っておきたい。3次ラウンドのセルビア戦では、日本のバックアタックに対してのブロックはマンツーマンで1枚だけでした。サイドの速さに対応する狙いがあったのかもしれませんが、それほど日本のバックアタックに怖さを感じていなかったのかもしれません」 中田監督も「拮抗した場面では通用しない」とバックアタックについて注文をつけている。 「精度や使い方も含めて強化の必要がある」としていた。 またサーブについては中田監督が評価した部分のひとつだったが、大山さんはまだ改善の余地があると見ている。 「生命線はやはりサーブです。良かった、甘かった、の波が若干見受けられました。取っているセットは正確にターゲットの前後を揺さぶっているのですが、失ったセットを振り返るとサーブに課題が残りました。サーブのスキルアップも必須だと感じました」 アナリストが分析したターゲットの狙い方が正しかったのか、という戦術面も含めて検証の必要はあるだろう。 他にも大山さんは、Aパス(セッターへ正確に返すパス)にこだわりすぎることの影響や、欧州のメダル獲得チームと戦術マネジメントを比較した場合の課題をクローズアップした。 「アメリカ戦で連続失点するシーンがあったのですが、Aパスを狙いすぎて、それがミスとなりダイレクトで打たれました。精度の高い正確で速いプレーが日本の持ち味ですが、そこにこだわりすぎると逆に苦しくなります。“Aパスでなくてもなんとかしてくれる”と余裕を持ったプレーが逆に相手を崩す攻撃につながるように思いました。またセルビアは3次ラウンド、決勝トーナメントを想定して手の内を見せないというようなことをやっていましたし、イタリアなどは、日本のリベロ・小幡を狙って、バックアタックが入りづらくする“バックアタック潰し”のような戦術も立ててきました。もう“高さと打つだけ”というチームはなくなっていて、どのチームもディフェンスがよくなり、細かい戦術を立てトータルでレベルの高い戦いをしています。本来、ここは日本が得意であるはずの分野です」 今大会はリオ五輪の金メダル、中国が3位に終わり、決勝はセルビア対イタリアだった。明らかに世界の勢力地図が変動期を迎えている。イタリアには、パオラ・エゴヌがいて、セルビアにも、2枚の大砲。それぞれの国に、たった一人で状況を打開できる“超エース”がいるが、日本には不在だ。だが、大山さんは悲観すべき問題ではないという意見。 「各国にあって日本にないものをどこでカバーするかなんです。スパイカーは小さいですが、決める力はあります。じゃあ、できるだけ枚数を多くすればいい。そして、サーブが機能して、ブロック、ディグの関係がしっかりすれば戦えると思いました。ただタイや中国、韓国も次から次へと若手が出てきています。下の世代の育成からオールジャパンで同じビジョンと問題意識を持って取り組んでいかなければ、数年後に引き離されてしまいます。常に危機感を持つ必要はあります。新しくなったVリーグ、海外リーグ。それぞれの所属先で個の能力を高めていくことが、今、やるべきことかもしれません」 すでに欧州各国のリーグや、新システムになった国内のVリーグが始まっている。東京五輪のプレイヤーとなる来年には9月にワールドカップが控えている。