春菊派?水菜派?“鍋に入れる野菜”対決! それぞれの栄養の違いと特徴【栄養士解説】
鍋に入れる野菜…春菊派?水菜派?
寒くなるにつれて、温かい鍋料理が恋しくなりますね。鍋物やすき焼きの彩り野菜として、春菊(しゅんぎく)や水菜(みずな)を手に取る人も多いのではないでしょうか。この記事では、春菊と水菜の栄養面の違いをクローズアップします。それぞれの特性を知って、鍋料理をよりおいしく味わってください。 【画像】春菊vs水菜…これが、鍋料理対決の《勝者》です!(11枚)
すき焼き・しゃぶしゃぶは春菊、出汁系の寄せ鍋には水菜が好相性!
春菊も水菜も、鍋料理の脇役のイメージが強いかも知れませんね。どちらもβ-カロテンが豊富な緑黄色野菜で、特に春菊の含有量は水菜の3倍以上! 実は小松菜やほうれん草をも上回る主役級の野菜です。β-カロテンには強い抗酸化作用があり、動脈硬化などの生活習慣病を招く活性酸素を取り除く働きが知られています。 また、血液と骨の健康に必要なビタミンKも比較的豊富で、春菊は水菜の約2倍含まれています。β-カロテンとビタミンKは油と一緒に摂ることで吸収が高まる特性があるので、すき焼きやしゃぶしゃぶなど、脂っこいお肉が主役の鍋料理には、春菊が好相性と言えそうです(水菜も春菊と比べるとβ-カロテンとビタミンKが少し控えめなだけで相性が悪いわけではありません)。 一方、水菜は春菊と比較した場合、ビタミンCやカルシウム、鉄が豊富です。ビタミンC・鉄・カルシウムを同時に摂ると双方の吸収率がアップする相乗効果も期待できます。 特に多く含まれるビタミンCは水溶性なので、寄せ鍋など出汁ごといただきやすい鍋料理には水菜を組み合わせると栄養を余すことなくいただけそうです(おいしさは春菊との組み合わせも甲乙つけがたいですよ)。
春菊の特有の香り成分には消化促進とリラックス効果が
春菊の特徴的な香りは、α-ピネンをはじめ複数の精油芳香成分によるもの。これらの香り成分には、胃腸の働きを活発にして消化を促進したり、自律神経に働きかけて咳を鎮めたり、森林浴をしたときのようなリラックス作用などが期待できます。天ぷら、ゴマ和え、お浸しは春菊の香りを生かす食べ方の一例です。
水菜のピリッとする辛みには抗菌や魚・肉の匂い消しの役目も
水菜を口にした際に辛みや苦味を感じたことはありませんか。これは大根にも含まれるアリルイソチアネートによるもの。抗菌作用や体内の解毒酵素の働きを高めてがんを予防する機能性が注目されている成分です。魚や肉の生臭さを軽減する働きもあります。熱に弱いため成分を活かしたい場合は、生食できるサラダ水菜をカルパッチョなど生魚のトッピングに添えても良いでしょう。酢やレモンの酸味が水菜の辛みや苦味を和らげてくれますよ。
まとめ
栄養面の違いが少しあるものの、春菊も水菜も鍋料理との相性はバツグンです。 食感や風味の好みで選んでも良し、両方の野菜の食べ比べを楽しむのも良し。鍋料理の主野菜は白菜や白ネギなど淡色野菜に偏りがちなので、貴重な緑黄色野菜の供給源である春菊と水菜を積極的にプラスしていただけたらうれしいです。 ※参考文献:杉田浩一ほか監修『新版 日本食品大事典』医歯薬出版株式会社,2017、池上文雄ほか監修『からだのための食材大全』NHK出版,2019、名取貴光監修『新・野菜の便利帳 健康編』高橋書店,2016、白島早奈英・板木利隆監修『もっとからだにおいしい野菜の便利帳』高橋書店,2009
野村ゆき